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「印章(印鑑)10年保証」事前に理解しておくべき注意点

「印章(印鑑)10年保証」事前に理解しておくべき注意点

 ネットで印章(当店では「印鑑」の事を正式名の「印章」と読んでいます)を注文する際に「10年保証で安心」などという言葉をよく目にすると思います。店によっては20年以上の保証としているところもありました。
 消費者としてこういった保証は「ないよりあった方が安心」だとは思いますが、これらの保証は利用の際に注意しておくべき点がいくつか存在します。それら印章保証制度の注意点を事前に把握していただくことで、もしもの時の心構えを持っていただくことを目的に情報公開いたします。

※全ての保証サービスをチェック・検証したわけではないので、例外がある可能性はあります。その点ご了承ください

注意点1:保証は「破損等による彫り直し」のみ。「紛失」「盗難」は対象外
破損は保証対象ですが、紛失は対象外です 例外はあるかもしれませんが、ほとんどの保証サービス店が注意点として「破損したもの、捺印出来ないものは彫り直します」と書かれており、盗難や紛失など、印章本体をなくしてしまったものは対象外となります(後述しますが盗難が対象となる保証サービスはあります)。
 確かに紛失まで対象となると、「素材を一から店が用意しないといけない」「客が紛失と偽ってはんこを二つ持つことができる」という点があるので、この条件となっているのはやむなしですね。
 ただ、印章店で店員をしているとわかるのですが、「はんこが欠けてしまった」というご相談とほぼ同数ぐらいのイメージで「はんこをなくしてしまった」というご相談を多数うけます。破損等は対象なのでその点は安心ですが、「100%安心」ではないという事です。
注意点2:同じはんこは作れない
彫り直しすると別の印になります 「印章は唯一無二」という考えの方からすれば当然ですが、深く考えてない方はひょっとすると「10年保証は買ったものと同じはんこを彫ってくれる」と考えているかも知れません。しかし、同じはんこの彫刻はできません。分からない程度の複製は理論上可能ですが、非常に手間がかかります。そしてそれ以上に対応するのが難しい法的な理由があるのです。
 ですので、実印や銀行印で保証サービスを利用する場合は、別のハンコとなるので再登録の手間が必要になるとお考え下さい。
注意点3:日数がかかる
 そしてこれが結構大きな問題になると思います。お手元の破損した印章を店舗に送り、彫り直して送り返してもらうまで待たないといけません。「迅速に対応します」と記載されている店舗もありますが、私個人の本心として「彫っても入金されない保証サービスの彫刻と、売上につながる新規彫刻のどちらを優先するか…」と思うと、最優先対応を期待するのは酷だと思ってしまいます。
 そして重要なのが、保証サービスが必要になるときは「今はんこを捺す必要があるとき」が多いのです。当店にもお客様から「はんこが欠けてしまったから、新しく作りたい」というご依頼を受けますが、感覚的に半数以上が「これから使うので急いでほしい」とご希望されます。残念ながら、はんこを落とすなどしてその際に破損に気づくより、次に必要となった時に初めてはんこをチェックして、印面の破損等に気づくことが多いようです。
 縁が欠けている程度の状態なら、仕方なく欠けたまま捺印してその後保証サービスを利用する手がありますが、「何とかしのげた。また今度保証を申請しよう」として、そのまま忘れてしまうケースも考えられます。
その他注意点
 細かい注意点になりますが、完全手彫りの印章の場合は「手仕上げ(彫刻機使用)」による彫り直しになることが多いようです。また、店によってはチタンなどの特殊な素材の場合有料になるばあいもあるとか。
 また当然ではありますが、下記の例外を除き、注文した店舗でしか保証サービスは利用できませんので、万一注文されたショップサイトが閉鎖となった場合は利用不可になると考えられます。
例外的なサービス
 上記のように、意外と注意すべき点のある10年保証ですが、少し条件が異なる保証サービスもあります。それが公益社団法人 全日本印章業協会の「全国統一 印章保証制度(5年)」です。
 保証期間は5年となりますが、盗難も対象とされ、また協会加盟店であれば対応できますので、協会加盟の他店に持ち込んでサービスを利用する事も可能なようです。(当店は都合により非加盟店ですので対応できません。ご了承ください)
 加盟店は多数あるため、「ウチはそんなのやってない」と保証サービスをつけられなかったり、保証書をもっていっても断られるケースがあるかもしれませんので、事前に検討する加盟店への問い合わせをお勧めします。また「紛失」は対象外のようですので、盗難による保証利用の際は盗難届が受理されている証明が必要になるのではないかと考えられます。
よくあるご質問に回答いたします
どうして同じはんこは作れないの? 機械を使えば可能でしょ?
 確かに理論上は可能ですが、

  • 精密ロボット彫刻機で彫刻したはんこである
  • 過去に彫刻したデータが店舗に保存されている
  • 手仕上げがほとんどない(仕上げすると印影が変わるため)

という条件がクリアされてないと、複製に手間がかかります。
そしてそれ以上に「他人の印章の複製を禁じる」という法律が大きなハードルになるのです。「他人のじゃなくて私のだよ!」とお思いでしょうが、身分証のコピーを添えて「私が本人で複製を依頼します」という、法的にクリアできる書類を用意しないと、店側が罰せられることになります。そんなリスクを背負う店はまず存在しない、というのが現状なのです。

欠けた印面を補修することはできないの?
縁が補修できたとしても、加工時に印面・印影が変わります これも不可能です。欠けた部分を埋めるというのが非現実的ですし、万一埋めることが出来たとしても、右図のように捺印するには印面を少し削る必要があり、それにより印影が変わってしまうからです。

 

おたくの店(綺麗印影)ではどんな保証サービスをしているの?
 当店ではサイト立ち上げ当初は保証サービスを実施しておりましたが、数年後に廃止いたしました。理由としては職人の高品質な印章を自負しており、「破損しても安心」ではなく「破損させたくない・紛失したくない」と思われるような印章の提供に力を入れるべき、と判断したからです。
当店では

  • 全商品に紙製化粧箱をつけることで、保管場所が目立ち紛失の可能性を減らす
    印章の保管を分かりやすくする貼箱
  • 印章ケースを開ける時の「星印の目印」を貼り、開け方の解説書をつけることで、ケースを開けたときにうっかり印章を落として破損してしまうリスクを減らす。
    印章ケースに貼った、目印のシール

などの対応で、破損や紛失が起きないよう努力しております。

「印鑑登録」の本当の意味

 ほとんどの方にとってはどうでもいいことなんでしょうが…
「印鑑」とは「はんこ本体」を意味する、というのは誤りです

「印鑑」は、ハンコ本体ではなく、印影を登録する図録の事です

 右のとおり、はんこ本体は「印章」が正しい言葉であり、「印鑑」は、印影を登録する(公式な)図録の事に成ります。(「印鑑」の「鑑」は、「図鑑」の「鑑」であることを考えると、しっくりくると思います)

 まあ私個人は、一般の方が誤って「印鑑」という言葉を使われるのは一向に構わないのですが、プロである業界人が「印鑑あります!!」って誤って言葉を使うのはどうかと思っています…

 ところで、なぜ「印鑑」という言葉を一般の方が誤って使うようになったのか?
それは…

 間違いなく役所にある「印鑑登録」と言う言葉が原因ですね。
これを、「印鑑登録する事」と思い込むから、「印鑑=はんこ本体」と思う人が多いんです。

でも実は、「印鑑登録」というのは、

印鑑登録は、印鑑「を」登録する、ではなく、印鑑「に」(印影を)登録する、という意味です

 そう「印鑑(役所にある印影の一覧)(自分のはんこの印影を)登録するって言う意味なんです。

 繰り返し申し上げますが、「印鑑」という言葉遣いはどうされても結構です。ただ、こういった背景を知っていただくと、印章のプロとしてはうれしく思います。

印鑑登録出来るはんこの条件について

印鑑登録ができるはんこって、役所に代ってビミョーに違います
※2012年11月22日 一部情報に誤りがあったので、訂正させていただきました。失礼いたしました。

昨日は、はんこの「文字のルール」について話しましたが、実印として印鑑登録できるためのルールは文字だけに限りません。本日はその内容について記載いたします。

まず大前提なんですが、印鑑登録できる出来ないの「基準」は統一されてません。各地方自治体でそれぞれ決められてますので、以下の内容は貴方が住んでいる自治体の基準とは少なからず違います
ですので、参考にするんは良いのですが、保証はできないので、正確な情報は役所に問い合わせてください


■大きさ

「大きさ」というのは、はんこ本体ではなく印影(印面)大きさの事です。
当店のある大阪府茨木市では「8mm四方の正方形からはみ出る大きさで、25mm四方の正方形からはみ出さない大きさ」ってなってます。
自治体によって多少大きさの基準の違いはあるでしょうが、大抵は直径1ミリ直径1センチの認印サイズから、2センチぐらいの角印まで登録可能と考えられます。


■文字

結論から言えば、ご自身(はんこ所有者となる方)のご氏名がフルネームで入ってたら、絶対大丈夫です。
大抵の自治体は、印鑑登録の条件として、

  • 苗字もしくは名前が入っている事
  • 名前と無関係の文字が入ってない事(職業や肩書など)

と記載されています。ただ、風の噂で一部の自治体ではフルネームで無いと印鑑登録できないってところがあるらしいと聞いた事がありますので、注意が必要です。
それと、例外として「(名前)之印」「(名前)ノ章」などの表現は慣例として認められることが多いみたいです。

あと、苗字で印鑑登録可能である場合、同居(同世帯)の方で印鑑登録済の印影のはんこは登録NGです。これは家族での実印の使いまわしがトラブルの元になるからです。

なお、文字の種類は原則として問いません。別にはんこらしい文字でなくても、判別できれば登録できます。また、お名前に旧字体などの、常用漢字とは異なる字が入っている方は、常用漢字に代える事は可能なようです。

ちなみに、大阪府茨木市では「名前と苗字の一部を組み合わせたもの」が印鑑登録できるとあります。私の場合は苗字が「野田」、名前が「将弘」なんで、「野将」ってはんこが印鑑登録できるという事になります。ただ、これはNGの自治体が多そうなんで、引越しのことを考えるとお勧めできませんね…。


■その他

模様の入った印影のはんこってのは印鑑登録できない場合が多いようです(出来る自治体もあります)
あとは、以下のはんこは一般的にNGとされます。

  • ゴムなど変形しやすい素材で出来たもの
  • 印影が鮮明でないもの
  • その他、登録を受ける印鑑として適切でないもの

最後の項目は「なんかあった時にどうとでも対処できるように…」って感じで付け足したって感じでしょうね…。

まあ実はこの最後の項目が、微妙にややこしかったりします。それについては明日お話ししたいと思います。

印鑑登録出来るはんこ。出来ないはんこ[補足]

印鑑登録の基準に合致? さてこのはんこ、ほんまに印鑑登録できるんかいな? 印鑑登録の基準ってのは、先日の投稿でほとんど紹介しましたが、それで完璧という訳ではありません。今回はその内容を「補足」として記載します。

その投稿でも申しましたが、印鑑登録出来ないはんことして、大抵最後に「その他、登録を受ける印鑑として適切でないもの」という記載があったりします。
これはすなわち、「いざとなったらNGにする場合もある」という事です。

その最たる例が「既成認印」ですです。
市町村役所の基準で「既製品はダメ」って書いてあったら言うまでもなくNGなのですが、そうでない場合でもNGになる場合があります。
更に申し上げると、家族が既成認印で印鑑登録できたので、今回別の既成認印を印鑑登録しようとしたところ、「ダメ!」といわれる場合があります
※同世帯の別の方と同じ印影のものは、今回とは別に印鑑登録NGとなります。上記は印影が違ったとしてもNGとなるケースです。

要は、その「OKかNGか」の判断が、役所の担当の方で色々変わる場合があるという事です。「印鑑登録として適当でないもの」かどうかは、その担当の人が決める、という事なんでしょうか…。

上記のように、細かい部分で基準は統一されてませんので「誰かがOKだったって言ってたから、今回もOKだろう」と言うわけには行きません。その点ご注意くださいませ。

銀行印は本名で彫らんでもええみたい

あだ名のはんこでも銀行印登録できる? 先日まで、印鑑登録(実印)の登録基準や制度の是非について話してましたが、今回は銀行印について話します。

 実は銀行印の判断基準って、実印と比べると総じてメチャクチャゆるいと言えます。もちろん、各銀行などによって基準が違うんでしょうけどね。

 一番大きいのは「名前と関係ない字が入っててもOK」というケースが見られるところです。僕の知り合いの方はあだ名で銀行印登録してますし、うちの店主も、仕事用の銀行口座は、実店舗名である「摂津印章」と言うはんこを銀行印にしています(法人じゃないんですよ!)

 あと、名前と無関係な絵や模様なども「煩雑で判断が困難でなければOK 」と言うことが多いようです。実際、たまにニュースに出る絵入りのはんこなどで「銀行印として登録できた」と紹介されてるのを見たことがあります

 銀行印がこれだけ基準がゆるいと「なんでや?」ってなるかもしれませんね。実は、それには大きなわけがあるんです。それは明日お話しますわ!

「おしゃれはんこ」が「オシャレ」とは限らんと断言する理由

オシャレなはんこに見える? いやでも実は… これ、ホンマに注意した方が良いですよ。
 はんこの側面、っていうかはんこ本体は、持ってる本人からすれば良く目に付くんで、おしゃれな外見にしたくなるってのは分かります。
 ほやけど、はんこ本体ってのは他人が目にする事がほとんど無いんですわ。

 いや、べつに他人に見られないところをオシャレするんは別にエエんですよ。でも、そこまでオシャレしといて、他人に一番目に付くところがみすぼらしかったら恥ずかしいでしょ? と言いたいわけです。

 オシャレなはんこを求められるからには、そんな失敗はしたく無いですやんね。

 え? 「はんこで一番目に付くところってどこ?」って? もちろん印影ですよ。捺印した書類はいろんな人が目にしますからね!

 ほな、はんこ本体も印影も綺麗なやつにしたら…と思いますよね。それがちょっと問題あるんですわ。それについては次回お話します。

はんこの材質「象牙」は『純白』と思ってる人は和英辞典を引け

はい、和英辞典。ちゃんとひいてな…と言っても、わざわざ和英辞典を用意してペラペラする人なんていないでしょうから、goo和英辞典の「象牙」のページをリンクしておきます。

 はい、見ました??

 「ivory」ですよ! 「アイボリー」!! あの、色の名前のヤツ!!

 そ、象牙は「アイボリー」なんで、色は純白や無くて少し黄色を帯びてるんが正しいですわ!!! もっと言うとほんのりピンクが入ってるのが最上級の素材って言われてます。

 ですから、純白の象牙は逆に邪道なんです!

 ちなみに、天然の象牙は面白く、暗いところにおいておくと色が濃くなり、光を当て続けると少しだけ色が白くなります

 以前、展示してた象牙のはんこが、下半分が褐色になっていて、この部分を1週間蛍光灯に当て続けたら、確かに色が薄くなってました。あの時写真を撮らんかったんが悔やまれますわ…(汗)

はんこの素材、象牙の「横目」がメチャクチャ高い理由

何でコイツだけ向きが違うん? 昨日「象牙の芯持ちは高い割に品質が悪い」って書きましたが、その第二弾が象牙の「横目」です

 この「横目」ってヤツ、何かと言うと、上の画像のように、牙の長い方向を縦とすると「横」の方向で切り抜いてはんこにするヤツです。

 ほとんどの象牙は「縦」の形で作るんで、「横」で切り取ったはんこは貴重。それゆえに高いとされてます。

 …ん? ちょっと待てよ?
 全部横の方向に切り取ったら別に貴重ではなくなるはず、何でそうせえへんの?

 と思った貴方は鋭い!! 実は横の目ではんこを作ると、縦の目よりはるかに脆くなってしまうんです。
 紙でも縦と横で「ビリッ」と破ると、きれいに破れる方向と上手く破れない方向がありますよね。それと一緒なんですわ。

 そんなわけで、前回書いた象牙の芯持ちと同様、職人は大抵「彫れって言われたら彫るけど、高いし品質悪いんで自分からは勧めない」っていう方針なんですわ。店の方針が職人系かそうでないかを見極める一つの指標になるかもしれませんね。

宝石はんこやチタンはんこって 粗悪なモノがあるの?

 つい先日、プラスチック製のおしゃれはんこについて、「外見がオシャレって考えは幻想むしろ実際は往々にしてオシャレやない」っていう話をしました。んで、同じくオシャレ(カッコイイ)系の素材である宝石印やチタンについてはどやねん? と思われた方もおるかも知れません。

 宝石・チタンは、非常に固いため、激安の彫刻機では彫ることが出来ません。高機能な彫刻機を用いて専用の針等を用いて彫るか、ガラス細工などに使われるサンドブラストって言う機械を使って彫ることがほとんどです。

 そんなわけで、プラスチックはんこのよりは彫るのにちゃんとした準備が必要な分、まともなはんこ屋が彫っている可能性は高いと思ってます。

 ただ、過去に宝石印で線がガタガタの作品を見たことがあるんで、粗悪なモノがないとは断言できないと思います。
 それと、サンドブラストの機械は他業種の人の方が持っているので、はんこのノウハウが無い人が彫ってしまうと、欠けやすくなったり朱肉が綺麗に紙に写らなかったりする可能性も無きにしも非ず…ですんで、注意が必要です。

 また、言うまでもないことですが、設備が必要な分、価格も高くなります。そして、「なるべく安く」って考えると、粗悪なモノを手に入れてしまう可能性が高まるので、その点は注意して欲しいと思いますわ。

はんこの素材「柘(つげ)」は「エエ素材」? 「悪い素材」?

安いけどエエ素材。ただしパチモンには注意やね はんこにの素材として、「柘(つげ)」って素材があるんですが、この素材、「価格が安い」のと「彫刻に適してる」と言う特徴があります。
 「安い」ってイメージをもってる人は「悪い素材」って感じるんですが、逆に「彫刻に適してる」ってイメージの人は「いい素材」って思ってたりしてます。

 ほな、実際はどうなんか? 今回は「柘」って言う素材について、ちょっと真面目に書いてみようと思います

 ・柘の「偽者」に要注意!
 まず最初に言っておかないといけないのですが、「柘」にはパチモン(偽者)が存在します外国産の「アカネ」って言う素材なんですが、柘よりも密度が低くて脆く、それでいて「シマツゲ」っていう呼び名があるんですわ。これと区別するために、一般の柘は「本柘(ほんつげ)」って言われます。
 職人の店なんかでは、脆くて彫りにくいシマツゲは扱わないんですが、フランチャイズ等では取り扱ってる場合もありますんで、注意が必要です。

 ・「柘」は木の中で最も硬い?
 文字通り「木」篇に「石」って書く「柘」ですが、純粋な硬さだけなら「黒檀」「紫檀」等の方が若干上といわれています。また、最近は杉などを圧縮加工した素材も出回っており、それらの素材にも硬さは若干劣ります。

 ただ、それらの素材は柘よりも脆く、刀で仕上げするとボロボロといった感じで削れてゆきます
 そんな訳で、やはり職人系の店では「本柘」を木製素材の主力商品として扱っているんですね。

 ・朱肉の「油」にご注意!
 柘の一番の弱点は「朱肉」です。朱肉の油が柘に浸透する事で脆くなってゆきます。そのため、朱肉のつけすぎは厳禁です。
 良く、はんこを朱肉や印肉にぎゅ~っと強く押し付ける人がいますが、これは絶対やっちゃダメですよ!! 溝に朱肉の油が入って脆くなりやすいんで! 後日書きますが、はんこは強く押し付けるんや無くて、軽く叩いて、叩く回数で濃さを調節してくださいね。これは柘に限らないですよ。

はんこの素材「象牙・牛の角」は「芯(中心)」に近いほうが丈夫って、ホンマ?

象牙って、中心に近いほどモノはええんやけど… 知らない人は「何それ?」って感じかもしれませんが…

 象牙や牛の角って、中心に近いほど密度が高くて硬いって言う性質があります。
 これは事実です。現に、上にある画像のように、象牙は中心の「芯」に近いほど、グレードが上がって丈夫、そして高価になります。

 ただ、それを聞いて、象牙や牛の角の中心にある「芯」が最も硬い部分であるって誤解してる人がいはるんですわ。

 実は、象牙も牛の角も、中心の「芯」は逆に柔らかい性質を持っとります。簡単に言うと「台風」と同じで、中心に近ければ近いほど強いけど、中心そのものはメチャクチャ弱いんです。

 それともう一つ。牛の角は芯(中心)より離れすぎると使い物にならないんで、芯入りのモノがはんこの素材になってます。でも、象牙は芯が無くても全然問題ないんで、芯から外れた廻りの部分がたくさん使われます。

 つまり、象牙の芯の部分は取れる場所が少なくて貴重(つまり高価)なんですが、その芯の部分は柔らかくて彫刻には向いてないという、コストパフォーマンスの悪い素材なんです。

 ってなわけで、当店をはじめとした職人系の店は大抵、象牙の芯持ちは「彫れって言われたら彫るけど、高いだけでモノは悪いから自分から勧めない」って言う方針をとっています。

 象牙の芯持ちをこれ見よがしに販売してる店は、確率的に「高級な物を売って儲けたい」店である可能性が高いと思いますね。

はんこの材質「牛の角」と「象牙」の大きな違い

似たように見えるけど全然違うねんで 最近ははんこの材質について色々書いてますが、そういえば僕、この業界に入った頃、「牛の角」(黒集牛を含む)と「象牙」が全然違うもんやってのを知らんかったのを思い出しました。

 「え? 象か牛かの違いだけなんちゃうの?」と思った方! 全然違いますよ!! 組成が全然違うんですわ

 牛の角は、組成はたんぱく質人間で言うと「爪」と同じ。これに対して「象牙」は「牙」つまり「歯」なんで、硬さは牛の角とは全然ちゃいます。

 それに、たんぱく質で出来た牛の角は稀に虫食いがあり、裸で保管しておくとはんこに穴が開く可能性があるんですが、象牙はそんな心配ありません。燃えない素材なんで、火事になった家の焼け跡から出てきたって言う話もあるんですわ(絶対大丈夫って言う保証はしませんけどね)

 動物の顔からニョキっと生えてるんで、似たようなモンやんな…と思ってた方、勉強になりましたか??

はんこは堅けりゃええってモンちゃんで

はんこは「硬けりゃエエ」って思ってませんか? 知ってる人にとったら、改めて言うような事や無いんですが、「堅い」って事は「丈夫」って事とは限りません

 はんこに限らんのですが、「堅さ」と「脆さ」ってのは全く別な要素なんですわ。

 例えばガラスは直ぐ割れるって言うイメージがありますが、堅さは意外とあるって言われます。
 あと、世界一堅い素材って言ったらダイヤモンドですが、欠けにくさをあらわす「靭性(じんせい)」って性質は、ダイヤモンドよりも翡翠(ひすい)の方が高いって言われてるんです。

 はんこの素材って「柘」「牛の角」「象牙」ってのが多く、「古臭いなぁ」ってお思いかもしれませんが…
 実はあれ、刀で彫れる素材の中では「堅さ」と「脆さ(欠けにくさ)」のバランスが最も優れてるんですわ。
 「古い」んやなくて「歴史ある」素材って事って事をご理解下さい!

「おしゃれはんこ」が大抵「オシャレ」やない理由

はんこ本体も印影もオシャレなはんこ? それ、結構難しいんですわ タイトルが似てますが、前回の「おしゃれはんこ」が「オシャレ」とは限らんと断言する理由 とは違うコンテンツです。

 前回、「はんこ本体がオシャレでも、他人が目にするんは印影やからそっちがオシャレでないと意味無いで」って話をしました。

 ほな、「はんこ本体がオシャレで、印影もオシャレ(綺麗)なものを選べばいいんちやうの?」ってなりますよね。
 でも、実はそれってメチャクチャ少ないんです。少なくとも材質がプラスチック系のはんこやと絶望的なレベルでしょう。

 実は「おしゃれはんこの印影は、往々にして手抜きで作られてる」んですわ。

 どういう事? って思いました? 実はおしゃれはんこって原価が結構高いんです。で、高い原価を補うために、ほとんどの店は彫刻にコストを極力かけないようにして売ってるんです。
おしゃれはんこの印面 先日書いた、激安で文字コードを入力するだけで彫れるはんこ彫刻機。おしゃれはんこのほとんどがこの彫刻機で彫られています。印影は手抜きなんでオシャレって言うには程遠いデザインですし、印影デザインはほとんど同じ。
 僕に言わせたら、下着は高級ブランドやけど一番目に付くところは量販店の安物っていうファッションで「オシャレよね?」って思いながら歩いてる様なモンなんです。そう考えると、ちょっと…というか、かなり複雑な気分になってしまいますやんね?

 ちなみに、「ちゃんとした職人におしゃれはんこを彫ってもらおう」って選択肢もありますが、技術料が全然違います。多分値段は倍ぐらいになるでしょう。

 それでも貴方は買いますか? 残念ながら、いくら「本体より印影が綺麗なほうが大事」と言っても、値段が倍になるって言うと躊躇する人がほとんどやないかと思うんです。これが「難しい」って言う理由なんですわ。

なんで実印は「フルネームが良い」って言うの?

はんこ屋が実印にフルネームを勧めるのは儲けたいから… って勝手に決め付けんといて!! 以前、どこかのQ&Aサイトで「実印ってフルネームで無いとダメなんですか?」っていう質問があり、その回答で「大抵は苗字だけでも登録できますよ」と言うのが載っていました。

 これは以前書いた実印の登録条件にもあるとおりで、間違いではないんですが、そのQ&Aページの下の方を見ていくと、「フルネームのほうが高いから、高いもの買わせようって言うはんこ屋の策略ですね」っていう表記がありました。

違うわ!
何でもかんでも高いもの買わせたいんやったら、銀行印もフルネーム勧めるわ!
ちゃんと理由があるんじゃ!!

…あ、すんません熱くなって……(反省)

 えっと、実印をフルネームで勧める理由はちゃんとあるんです。昨日も書いたように、実印は役所で登録するけど、実印を使う相手は役所ではありません。車の契約するときはディーラーさん。家を買うときは不動産屋が実印を使う相手です。

 いくら印鑑登録できたはんこを持ってきたところで、契約相手が「そんなはんこじゃ契約できんわ」って言われたらおしまいなんですわ
 「そんな事ないやろ」って思うかもしれませんが、過去に一度だけ、当店に「フルネームのはんこで無いと契約できないから実印を作り変えてくれって、契約相手に言われた」って言うお客さんが居たんです。

 そんなわけで当店では、男性の方は世帯主として色んな契約をするし、名前が変わることも無いだろうということで、実印はフルネームにする事を強く勧めてます。もう一度言いますが、高いモンを買わせるためやありませんで! 女性には「苗字だけ・名前だけでもいいと思いますよ」って言うてますからね!

実印の登録基準が、銀行印より厳しい理由

はんこを使う「相手」のクイズ わかります? 昨日は、銀行印に出来る基準が総じて実印のそれよりも緩いって話をしましたが、今回は「ほな、何で緩いんや? 何で実印の方が登録が厳しいんやろ?」って話をします。
  
 この理由は、実印と銀行印の根本的な違いからきてます。
 「違いって言うても、役所で登録するんが『実印』。銀行に登録するんが『銀行印』やろ?」って思いますよね? それは確かにそうなんですが、根本的な違いが他にもあるんですわ。

 それは何か? と言うと、実印は登録する場所と使う相手が異なるって事。印鑑登録は役所で行うけど、役所に対して使うモンではないって事ですわ。

 役所は、あくまで日本国内での契約を円満にサポートするために印鑑の登録をしてるんです。実際に実印を使う相手は契約相手で、役所とは全く別の人(上の画像でいうと「実印」を使う相手は「その他」ですな)。
 それやのに「名前と関係ない文字でもいい」みたいな基準にすると、色んなトコから「何でそんなややこしい事するん??」と文句を言われるわけです。だから、極力無難に、極力無難な基準を採用してます。

 その一方で、銀行印はその銀行本体と相手の個人や法人との間だけの取り決めごとに使うもの。横から口を挟まれることが無いんで、実印に比べると基準が緩いんですわ。

「印鑑登録制度」の弊害

「印鑑登録制度」にはメチャお世話になりましたが、弊害もあると思うんです印鑑登録に既成認印の使用は許せない? 別にいーじゃん」って話を先日したんですが、僕はそう思ってる理由には、現在の既成認印の製作システムが意外と優れているって言うこと以外に、もう一つあります。

それは、「印鑑登録制度」に弊害があると思ってることと関連してるんです。
どうも同業のはんこ屋さんは

  • 既成認印を実印にするなんてとんでもない!
  • 印鑑登録制度は守らないとダメだ!

ってな感じで、第三者からすれば自分の利権を守りたいだけにしか見えない主張をしとります。

あ、いや、はんこ制度は前にもいったとおり利便性はあるし、僕自身「この世に不要なモノ」やとは一切思ってません。そして何より、印鑑登録制度によってはんこ業界の需要が大きくなり、職人である父は飯が食えるようになったんで、それは感謝しとります

ほやけど、その「印鑑登録制度」で、日本人にはんこの使用を強制したせいで、「嫌でも買わないといけないモノ」になって、価格破壊・はんこの価値の低下が起きてるんやと思ってます。

正直、はんこを「安い方が良い」「既成認印で済ませたい」って思う消費者が出てくるんは、印鑑登録制度によるはんこの強制のために生まれた自業自得ですわ。で、これに対して何とか創意工夫を…って言うなら分かるんですが、制度をキツクして守ってもらうって発想は筋違いやと思うんです。

 むしろ僕は、実印を年収1000万以上の人しか使えないっていう風に変えてしもうたらどうかな… と思ってます。 そないしたらはんこが「成功者のステータス」になって価値が上がるんで。
 需要は格段に減りますが、その需要低下で、機械で彫刻する必要が無くなって、手彫り中心になったら偽造問題もなくなり、ちゃんとした手彫り職人に適正な報酬が渡るようになる、と思うんやけどねぇ…

現在の印鑑登録制度って、意外と効率的なんやで

効率的って思う理由は、この機械にあります 多くのはんこ屋がもってますねん えっとですね、前回「印鑑登録に既成認印の使用を禁止せんでもエエやん」って内容を書きました。そう思う理由の一つに、上にあるはんこ彫刻機があります。
 こいつの名前は「BanBan(バンバン)」。文字コードを入力するだけで、センターから印影データが送信されて、自動的に認印を彫ってくれる機械ですわ。
 で、この機械、印影は職人に言わせればメチャメチャ下手な字で、それが嫌なはんこ屋は置いてません。でも、月数千円のリース費用と、ちょっとした通信費だけで使える上に、10分ではんこが彫れるっていう特徴があります。彫れない文字は少ない(これまで2文字程度しかありませんでした)し、珍しい苗字の認印を簡単に彫れるんで、かなりのはんこ屋で置かれてるんですわ

 で、一番言いたいことなんですが、これ。
彫刻機「BanBan」で彫った日本の認印
 「稙田」っていう二つの認印。二つともこの機械で彫ったんですが、白丸のところを見てください。微妙ですが違うでしょ?
 実はこの機械、毎回、ほんの少しだけデザインを変えて彫るようになってるんです(連続で彫った場合は前のデータが残ってるんで同じ印影になりますけどね)

 なんで、こんな安い機械で彫った、こんな安いはんこでも「唯一無二」のはんこになり易いんですよ。
 はっきり言って字は汚いし、安いはんこだから仕上げもしてないので縁も欠けやすい(理由はこちら)。実印に相応しいはんことは絶対言えないんですが、それでも唯一無二で印鑑登録できたら最低限の用は足せます(あまりにも安っぽいんで契約相手に白い目で見られると思いますが…)

 重要な契約を、たった数百円のはんこを買うだけで安全に契約できるのって、ほんま凄いと思うんですよ。ほやから、今の印鑑登録制度は、デフレまっさなかの世の中の消費者にとっても悪くは無いって思うてるんです。

 あ。何度も言いますけど、こんな安いはんこでの印鑑登録、禁止にしなくてもいいとは思ってますが他人には絶対勧めません。縁が欠けやすいし、安いはんこはありがたみが無いんで、次に使うときまでに紛失しやすくなります。何より、自分の「証」としてみすぼらし過ぎますからね。

既成認印の印鑑登録は是か非か

既成認印を実印にしたらアカンって言うけど、別にええんとちやうの? 前回、印鑑登録の基準について「既成認印は正式NGと言う表記は無くても、担当者によっては登録できない」って事を書きました。
 で、そういうことを書くと、同業のはんこ屋さんが、「そもそも既成の認印で印鑑登録できるのがオカシイんや!!」って怒って言うたりするんです。

 でも、実は僕は正直言うて「別にエエんちゃう?」と思うてます。だって、大切な自分の「証」を、量産品で登録するのは自分で判断したんですからね。
 やっすい認印を重要な契約書に捺して、「みすぼらしいなぁ」って思われたり、ちょっとした衝撃で欠けてしまったり、安物だからと直ぐに紛失して困ったりするのも、自己責任やないですか
 「俺は非難されようが後ろ指差されようが、安い認印を実印代わりにするんや!」っていう覚悟を持ってるんやったら、どうぞ好きにして下さい… って思ってるんですわ。

 ってなわけで、自己責任(というか、リスクを承知)で安いはんこを大事なはんことして使うのは、個人的には別にかまわんと言うか、禁止までする必要はないって思ってるし、強制させるのは筋違いやと思ってます。
 ま、そう考える理由は他にもあって、これは明日書こうと思います。

はんこの文字の「ルール」ってどうなってんの?

はんこ登録の「ルールブック」みたいなもん…かな 昨日の記事で「文字にも色々あるんやで。学校で習った文字のルールが全てちゃうよ。」って話をしました。文字の種類によってルールが違うから、自分の知ってる文字と違う文字を見て「おかしい!」っていうたらアカンよって話ですな。

 で、勘のいい方は「って言う事は、はんこの字はそれ独特の『ルール』があるって事かな?」と思ったかもしれません。それは一応正解です。

 はんこの場合、全日本印章業組合業界が発行している「辞書」があり、これがルールとなっています。
 この辞書が各地方自治体に配られ、印鑑登録の際の参考資料となるので、「この辞書に載っていたら間違いではないのでセーフ」って言えるんです。

 ただ、辞書に載ってない字だとNGか? というと、そうとは限りません。そうなった場合は、基本的に役所の担当者の一存で決まるんでしょうが、判断に困った担当者が、はんこ屋に質問してくる場合があります。

 当店も過去に何度か、担当者が訪ねてきました。
 役所の方が尋ねてきて「この字なんですけど…合ってますか?」と印影を見せてくれた事がありました。その時は、店主は印影を見て一言「あぁ、実用印ではあんまり使わんけど、篆刻なら使いますね。間違いでは無いですよ」と答えました。実際、篆刻用の辞書を調べてみたら、しっかりとその字が載ってたのを覚えています。

 こういったケースになると、印鑑登録担当者が知識のあるはんこ屋とめぐり合えるか…という「運」の要素も絡んでくるので、やはり実用印は配られた辞書に載っている字で彫るのが無難なんでしょうね。

 あと、それぞれの自治体などに適応される独自ルール(ローカルルール?)もあります。それについては明日またお話しますね。

はんこの文字が「変」って思う人に共通する、大きな誤解

「賀正」って字やけど これ見て何か気づきました? 11月も中旬。年賀状シーズンってことで、こんな字を出してみました。

 さて、上の画像の「賀正」の文字。何か気づきましたか? 良く見ると「正」の字の書き順が違うんですよねこのページにある「正」の字の書き順をみると、違うのが分かると思います。

 これに気づいた貴方。もし、「これ間違ってるやん!」って思ったんやったら、それこそが、タイトルにある共通した「大きな誤解」なんですわ。機会が合ったら色んな年賀状を見てください「正」の字がこの書き順になってるやつ。結構あるんでっせ。

 学校で習った文字ってのは、絶対やない

 絶対やと勘違いしてる人がホント多いと思います。確かに学校では、一般的な文字についてちゃんと書ける様に厳しく指導されます。でも。それと異なる字が許されない存在かというと、そうではないんですわ。

 申請書などの書類を書くとき、用紙の端っこや記入見本に「楷書(かいしょ)で丁寧に書いてください」って書いてるのを見たこと無いですか?実はこの「楷書」ってのが、学校で習った字という意味になるんですわな。要は、学校で習ったのは「楷書」と言う字の常識なんであって、日本の全ての文字の常識ではないって事です。
 「楷書で書いてください」って注釈が入ってるのも、学校で習った字(=楷書)だけが文字の全てではないって事の証拠ともいえます。画像の「賀正」の字も楷書ではないんで、書き順が普通と違っても間違いや無いんです。大体「楷書」って言う字一つとっても、硬筆(鉛筆やボールペン)と毛筆でも書き方が違いますしねぇ。

 はんこの文字って、確かに学校で習う文字とはえらい違いがありますけど、でも「普通と違う字」ってのは意外と色々あるんやでってのは、覚えておいていただけると嬉しいです!

「はんこ」って、何で字が難しいの?

読みにくいよりも読みやすい方がエエに決まってるやん! たま~に、お客さんに聞かれるんですわ。
 「何ではんこって、読みにくい字なんですか?」って。

 大抵、こういうようなことを言われる方は、はんこが現在の読みやすい字でないことに納得がいってない方。「読みやすい方が便利で良いのに、何でこんな読みにくいのが一般的になってるんかが分からん!」って思ってるようです。

 でもね、よう考えてみてください。日本人って、英語が苦手なくせに、日本語のTシャツより英語のTシャツ来てる人のほうが多いですよね。逆に、外国人は漢字のTシャツを喜んで着たりしますよね。

 僕の予想なんですが、人間はあまり意味が理解できない言語に対する憧れみたいなものがあると思ってるんです。だから、日本人には英語が、外国人には漢字が「風格のある言葉」に見える。と言うわけです。

 そんなわけで、はんこも「すぐに読める字」より「少し読みにくい字」の方が格上に見えるんやと思います。もちろん、仕事や宅配便、回覧板とかで使うはんこは読みやすくてナンボですが、実印や銀行印は自分の大切な物に関する「証」になるもんであり、読みやすさよりは「風格」を重視した方がええ、って事やと思って下さいな!

銀行印不要で出来る銀行口座の「落とし穴」

優良ショップがお客さんにクレームを受ける… その理由が「銀行印」にあった? 「お客さんから、『クレジットカードで二重請求された!』って言われて怒られたけど、身に覚えがない…

 これ、5年ほど前に、とあるネットショップさんから聞いた話やったんです。じつはこの原因の一つに「銀行印」があったんですわ。

 このショップ運営の方。別にやましいことはなんもしてませんでした。逆に、2回に分けて商品を購入した人に「一括で買えば割引になるから、その価格に変更してあげよう」と、良心的に対応してたんですわ。

 ほな、何でこんな事になったんか? 実はお客さんのクレジットカードがデビットカードやったんです。
 クレジットカードは一般的に、決済(商品購入)して一月ほどしてから引き落とされます。しかしデビットカードは決済直後に引き落とし。そのため、「商品購入直後」に一度引き落とされ、さらにその後。ショップさんが割引した「新たな金額を設定した直後」に引き落とされたんですわ。
 ショップさんからすれば、引き落としは後日だろうから、金額修正で問題ないと思ってたのが、二重の引き落としになってしまったって訳です

 「ショップさんがデビットカードって分かってたら、対応できるやん!」ってお思いかもしれませんが、無理なんですわ。だって16桁のカード番号など、形式はクレジットカードと全く一緒。要は普通のクレジットカードと見せかけてる(言葉が悪くて関係者には申し訳無いですが)んで、区別のしようが無いんですわ。

 …で、長くなりましたが、ココからが本題。
 実はこのデビットカード、銀行印不要の銀行口座で作られるヤツなんです。

 前回、銀行印は口座の開設の時ぐらいしか使わんって書きましたが、実はもう一つありました。それがクレジットカードなどの自動引き落としの申請書類を出す時

 そ、カード会社などが「後になってお金を勝手に引き落とすけど、それを認めるよね?」っていう契約をする時に、銀行印が絶対必要になるんです。
 ネットバンクなどの「銀行印の無い口座」はそれが出来ないんで、決済直後に引き落とすデビットカードを発行してるって訳ですわ。

 少なくとも日本では「後払い」が前提のクレジットカード。ほやのに、「その場で支払い」のデビットカードが紛れ込む事で、たまにこういった変な現象が起きてしまうんですな。「銀行印不要」が、意外なところで影響を及ぼす一例として、覚えておいて下さいな!

「銀行印」がなくならない理由

銀行印も不要って? いやちょっと話をきいてぇな 今の銀行って、暗証番号だけや無く、指紋や手のひら静脈認証とかで、セキュリティはかなり上がってますよね。

 で、昨日と同じ「はんこ不要論」ですわ。
 「もう、銀行印なんて無くてええやん」って話。

 今、銀行印が無くても口座が開ける銀行もいくつかありますが、ほとんどが銀行印を必要とします。ほやけど、これは別に今までの習慣を破るのが嫌とかそういうのや無くて、銀行印が必要である理由がちゃんとあるんですわ。

 ところで、銀行印って、何のためにあると思います? お金の引き落としにはATMと暗証番号があれば出来るし、口座を作るとき以外はあまり使うイメージがありませんよね。

 そ。実はその「口座の開設」と「口座の閉鎖」っていう、銀行にとって最も重要なこの二つの行為は、確実な本人の同意を残しておきたいっていう、銀行側の思惑があるんですわ。それが大きな理由。

 と、ある人から聞いたことがあります。

 ……え?
 「銀行印不要で口座開設できる銀行があるんやから、それは理由にならんやろ!」って?

 そうですねぇ。実は僕もそう思うてたんですわ…

 で、実はもう一つ重要な理由があったんです。っていうかこっちの方が利用者としては大きな理由になりますね。

 で、それは…

 すんません!! こっから先は長くなるんで…
 次回、週明けにまたお話さしていただきます!!

「はんこはもう古い」って思ってる人はちょっとそこ座れ

「もうサインでええやんか」って言われますが 意外とはんこって便利なんでっせ いますよね、特に若い人に。「はんこ不要論」を持ってる人。

 いや、気持ちはわかります。今はデジタル全盛の時代。コンピューターの性能が上がったことではんこの偽造も可能なレベルになってきました。偽造については深刻な問題ですし、「古い」と感じることまでには否定しません。

 ほやけど、それでも言わせて欲しいんですわ「ちょっと待って!」って

 実ははんこの制度って、欧米のサインと比べたら結構シンプルなんです。
自分のはんこが捺印されてたら、それは自分が認めたった証拠。
はんこの真贋を見極めるのは偽造問題によって難しくはなりましたが、それでもサインほどじゃありません

 「サインは筆跡鑑定で見分けつくだろ!」って思われるかもしれませんが、確実に見分けるのって実は結構面倒なんです

 その証拠に、欧米では、重要な契約を行うその時に、両者が複数の弁護士を連れてくるほどなんです。
 弁護士なしに重要な契約が行えるのは、はんこ制度があるから、といってもいいんですわ。

「はんこ職人」の見極め方、まとめ

はんこが必要な人 はんこ屋を探している人は、まずこのページをチェックしなはれ! 先日より、「手彫り」ではんこを選ぶな! はんこ屋の「印影」で良い店かどうか判断しいや! と訴えてきた私ですが、その方法を一通り話し終えたんで、とりあえずはまとめとして掲載しておきたいと思います


・そもそも、なんで「印影」で判断する必要があるのか?

「手彫り」や「開運」ってのは、分かりやすいようで、実は確実な判断基準にはなりません。「手彫り」「開運」含めて、肩書というものは、わかりやすく「良いもの」だと判別できるようで、売り手にとって「(売るのに都合の)良いもの」にもなりえるのです。
特に「手彫り」は「機械不使用」と言う意味ではないんで、人によっては「騙された!」って思うでしょう。
騙されないように判断するには、一見分かりにくいけど本質である、作品そのもの、つまり「印影」で判断するのが一番なんです。職人が彫った結果、生まれるものが「印影」ですからね。


・本当に「素人」が印影で見分けつくんか?

条件次第で、見分けることは可能です。印影には見分けのつきやすいものと、そうでないものがあります。ですから、はんこを買おうかなと思ってる候補の店の中から、見分けのつきやすい印影を見て見極めることで、その店が買うに値するかどうかわかります。
印影見本が多くある店が最低条件になります。


・まずは「印面の『縁』」を確認する

「印影で見分けろ」って言いながらなんですが、まず最初に見るべきなのは、捺印した「印影」ではなく、はんこに彫られた「印面」になります。
縁の加工が出来ているはんこ  「印面の縁」を見て、はんこ屋として最低限の仕事をやってるかどうかは、はんこの「印面の縁」を見れば分かります。右の写真のように、印面の縁にある「墨で色づけされた部分」の外側に、うっすらと印材の色が見えたら、最低限の仕上げをしている店ってのが分かります。これをしてるかどうかではんこの欠けにくさが段違いになるんです。詳しくはこちらを見てくださいな。


・「篆書(てんしょ)」と言う文字の「先端」をチェックする

篆書のはんこの「筆意」の有無 右の画像のほうのように、「篆書」って言う文字の先端は独特の形状をしてます。篆書の実印の印影をもつけて、こういったものがちゃんと出来てるかどうかチェックしてください。素人との違いなど詳しくはこちら。あと、この違いが実は大きな違いだってことも説明してますんで、良かったら見てくださいな。


・「縦長の字」を、縦に圧縮加工してみる

「泰保」の印面 → 「泰保」の印面を縦に圧縮したもの
個人のはんこの中には、画像のように文字を「横並び」にしたやつがあります。当然ながらそういったはんこの文字は縦長です。この画像を縦にぐしゃっと圧縮してみてください。文字の特に上半分があからさまに窮屈に見えたら、それはデザインが優れている証拠です。その理由はこちらを見て下さい


・リスクを承知で「篆書古印(てんしょこいん)で彫って」と言ってみるべし

左:篆書体の「野田」 右:篆書古印の「野田」 「篆書古印」なんて言葉、ネットで検索してもあまり出てきません。こんな言葉を言い放って、さらっと「分かりました」と言える職人は熟練と言っていいでしょう。ただし、相手が受けてしまったら後戻りは許せません。手間のかかる彫刻なんで高額の支払いは覚悟してくださいね!
篆書古印について詳しくはこちらに記載してますので、ぜひお読みください。

こんな変わった「はんこの注文」を、さらっと「できますよ」って言う職人は信頼していい

「○○」ではんこ作って って頼むと、「こいつ・・・出来る・・・!」って店員は思いますよ! はんこは「手彫り」かどうかで判断したらアカン! はんこ屋の「印影見本」で良い店かどうか判断しなはれ

 …と言うわけで紹介してきた「はんこ屋(職人)を見分ける方法」なんですが、本日お話しするので一旦終了とさしてもらいます。その代わり、今日の話は色んな意味で強烈です。なんせその道に詳しい職人しか知らない言葉の入ったセリフを言って、その反応を見るってやつですから、その店の「専門性」が一発で分かります。

 そのセリフとは、「篆書古印(てんしょこいん)ではんこをつくれますか?」
 この「篆書古印」って言葉、googleで検索してもほとんど出てきません。大半が「篆書」と「古印体」の説明に関するページになってます。
 はっきり言ってはんこ屋の8割が「何それ?」って反応やと思います。で、残り2割のうち半分以上が「知ってるけどそんなの彫れない」って答えるでしょうね。

左:篆書体の「野田」 右:篆書古印の「野田」 ちなみに、うちの店主がデザインした「篆書古印」が、上の右の印影です(左は普通の「篆書」の印影ですね)。はんこでよくある文字の「篆書」に、これまたはんこでよくある「古印体」独特の凹凸をつけたものなんですが、どうやって凹凸をつけるか、経験の無い人には難しいし、そもそも一から文字を作った事の無い素人には無理ですわな。

 …ってなわけで、はんこを見分ける方法として最強とも思えるんですが、欠点があります。だってほら…ねぇ、そこまで専門用語を強気で言いはなってるのに、「作れますよ」って答えられて「いやいらない。聞いただけ」なんていえないでしょ…
 この方を勧めた僕が睨まれても困るんで、この方法を試すつもりなら、はんこを買うつもりで挑んでくださいよ! もちろん特殊なはんこなんで、普通の倍の値段はすると思ってください。それぐらい、このはんこには価値がありますからね!

本当の「はんこ職人」かどうかは、「縦長の字」を見れば分かる

「泰保」って名前のはんこ。この縦長の字のはんこを少し工夫すれば、良し悪しが直ぐに分かります 前回のはんこ職人を見分けるポイントが良く分かった人も、そうでない人も、今日のやり方は必見です。この方法ははんこ業界では常識なんですが、素人でも分かるよう工夫した方法はまだどこにも公開されて無いと思います。

 その方法は「縦長の字を見る」です。
 上の二つのはんこ(写真ははんこ本体ですが、印影でもOK)ですが、昨日と同じく篆書(てんしょ)と言う文字。でも昨日とは違い、文字が縦長になってますわね。

 このふたつ、どっちが良いか直ぐに見分けられる人は少ないと思います。これをちょっと加工する事で、直ぐに判別できる方法をお教えしましょう。それは、こうするんですわ。


「泰保」の印面を縦に圧縮したもの

 そ、縦長のはんこ(印影)を、立てにギュギュ~っと圧縮して、逆に横長の字にするんです。
 わかりますかね? 分からない人は圧縮した画像をクリックしてください。黒い印面の「泰」って言う字の上半分が、えらい窮屈になってますよね?

 「あ! なるほど! ほな黒い方がアカンねや!」…と思った貴方! 残念!! まるっきり逆です!
 要は、縦長前提の文字を無理やり横長にするとデザインが破綻するって言う事。つまり、縦長の字のはずなのに、無理やり横長にしてもあまり破綻してない朱色の印面は、正方形の文字を単純に横長にしただけの手抜きデザインってのが分かるんです。

 で、その説明が終わったところで、もう一度、圧縮前の字を見てください。赤い印面はただ縦に間延びしただけって感じしません? それに対して黒い印面は、字の下半分が伸びやかに見えて、いわゆる「足長」の美しい文字なのが何となく分かると思います。これを専門用語で「(文字の)重心が高い」って言うんです。

 ちなみに、縦長の文字は「篆書」もしくは「印相体」ってやつで見てください。たまに認印なんかで良く見られる「古印体」ってヤツで縦長の文字見本がありますが、あの字は平べったいからこそ味があるんで、比較にはお勧めできません。

 はい、ここまで来れば、はっきり言って「はんこを見極める力量」はかなり上がってますんで、是非、いろんなはんこ屋の作品を見比べてくださいね!

はんこの「文字デザイン」は、手彫り経験の有無で大きく変わる

この二つ 大した違いがないように見えますが、実はメチャクチャでかい違いがありますねん これまで僕は散々「手彫りと言っても機械を使ってる」「手彫りと機械彫りには大した違いは無い」と言いました。

 が、「手彫りの経験が全く不要」とは言ってません
 手彫りの経験は絶対必要です。なぜなら、手彫りを経験する事によって、文字の概念が大きく変わるからなんですわ。

 実は前回お話した「文字の先端を見て職人のレベルを見極める」話が、この「手彫り」経験と大きく関係してるんです。この二つは全く違う概念でデザインされとります。

手彫り経験の有無が生む、印影デザインの大きな違い その証拠が上の画像ですわ。
素人さんははんこの文字をデザインする際に、線でデザインして、その線を太らせる(コンピューターで自動で出来ます)方法をとります。この方法だと、文字の先端は丸まってしまうだけ。

 手彫りを経験した職人は違うんですわ。師匠が書いた字を彫る際に、画像の黄色い部分を彫るんです。これによって文字は線でなく面積だという認識が出来るんです。だから前回言った篆書の筆意という、絶妙な表現をする事が出来るんです。

 この表現は、篆書の「文字の先端」が一番分かりやすいのですが、他の文字でもいろんな表現の幅を生み出す事になります。だからこそ、お勧めしたい「職人を見分けるポイント」なんですわ。

はんこ職人のレベルは、印影の「ココ」を見れば分かる

上と下、どっちがエエかなんて分かりにくいですよね でも実はあるところを拡大してみれば直ぐに分かるんです 昨日ははんこの縁で素人か良心的なはんこ屋か見分ける方法を伝授しましたが、これはほんの序の口。昨日は出来ていて当たり前の項目です。まともな手彫り経験を積んでない人でもやる加工ですからね。
 本日は少しレベルの高い話をしますわ。

 まず、大前提なんですが、職人がこれまで彫った作品の見本(印影)が必要になります。基本的に今後の職人の見分け方には、その職人が作った「印影」が必要なんです。何度も前から言うてますように、印影こそがはんこ職人を見極める結果ですからね。

 で、見分け方ですが、画像の通り。
 まずは職人の印影見本の中で「篆書(てんしょ)」ってやつを探して下さい。出来れば実印の見本がいいですね。
篆書のはんこの「筆意」の有無 その印影の中で、文字の先端となる部分を見て、右下のように丸ゴシックのように丸くなっていたらダメと言わざるを得ません。職人であれば右上のように文字の先端が独特の形状をしてるんですわ。
 
 これ、専門用語で「筆意」って言うんですが、「篆書はこういうもんだ」って考えでかまいません。とにかく、はんこ職人にとってこの表現は当然なので、出来ているかをチェックすると、ちゃんとした職人が彫っているのかどうか分かりますよ。

 え? 「今は文字の先端が縁にひっつける開運の字体が主流だし、この見分け方は意味が無い」って?
 そんな事無いですよ。その理由は明日お話しましょう。

こんな「はんこ」は実印・銀行印にしたらアカン

はんこのメチャメチャ最初の見分けポイントは、印面の「縁」の部分! 矢印のところを良く見てや! はい皆さん注目! あ 特にはんこは安くてもいいって人! これを見ないと多分後悔しまっせ! はんこの最低限の質はココで決まります。

 実印や銀行印って、いくら安くても欠けてしもうたら意味無いですよね。で、はんこって一番欠けやすいんは「縁」の部分。
 大抵の方は、はんこの縁の欠けやすさははんこの素材で決まるって思ってるんですが、違います! むしろ「彫刻」が欠けにくさを決めるんです。


はんこの「縁」の断面図 上の画像を見たら分かりますよね。同じ材質でも縁が太い方が欠けにくいって事です。だから「a」のはんこではなく「c」のように縁を仕上げしてるはんこを選んでください。

 

縁の太さが一定じゃないはんこ
 ちなみに「b」のはんこはダメなの? って思うかもしれませんが、「c」のように最低限の一手間をかけないってのは、はっきり言って手抜き! そういったはんこ屋は右の写真の方に部分的に縁が細いはんこを出してくる可能性があるので注意してくださいね!

縁の加工が出来ているはんこ ちゃんと縁の仕上げをしてるかどうかは、はんこ本体の印面を見れば直ぐに分かります、写真のように、縁の周りの更に外側に「はんこの材料の色」が見えたら大丈夫です!
 

はんこの「機械彫刻」って、職人と素人じゃ全然違うねんで!

同じ「はんこの機械彫刻」でも、自分で字を作る職人と 良く分からずに手元にある字を使う素人やと、出来が全然違いますねん
 昨日、はんこの完全手彫りと職人の機械彫刻はクオリティがそんなに変わらんで、って話をしましたが、今日は同じはんこの機械彫刻でも、素人と職人ではどれだけ違うかってのをお話しますわ。

 と言うわけで、上の画像を見て欲しいんですが… これだけじゃ分かりにくいかもしれませんね…
 肝心なのは最初の「字入れ(印影のデザイン)」のところ、実は素人は彫刻機に入ってる文字(フォント)をそのまま並べて、あまり加工しません。そんなわけで、当然同じフォントを使ってれば、全然違う店でも似た文字になりやすいし、そういった文字は素人が作った文字なんで少し知ってる人が見れば「あ、これはアカンな」ってのがすぐ分かるんです。

 で、素人は仕上げも最小限。良心的な店は多少仕上げはします(それでも、しないよりは遥かにいい事なんですけどね)が、仕上げしない場合もあるほどです。
 当店店主も、粗彫りの機械彫刻でかなり綺麗に彫るんで粗彫りは最小限なんですが、全くしないって事はありません。職人のプライドがあるんで、細かいところをしっかりと仕上げしてます

 って言うわけで…
 同じ機械彫りでも、職人が作ったはんこと、素人が作ったはんこでは、見る人が見れば天と地ほどの違いがあるんですわ。

 と言うても、「その違いがワシには分からんわ!!」ってお思いかもしれません

 OK! わかりました!
 次回以降は、その「違い」を見分けるためのわかりやすい方法をお教えいたしましょうや無いですか!!!!!
 明日以降は必ずチェックしてくださいね!!

はんこ職人が「機械」で彫ると、手彫りはんこと同じ出来になるんでっせ

機械を使っても使わんでも、はんこを作る「最初」と「最後」がしっかりしてたら、出来るモンはほぼ同じレベルなんやで!
 「はんこの『手彫り』は機械不使用って意味やない」って記事を見て、納得してない方はまだおられるとちゃいますか?
 まあ上の画像を見て下さい。左が完全手彫り。右が手彫りできる職人が機械を使ったときの彫刻ですわ。

 はんこを彫る手順って、文字デザインを決める「字入れ」、多少雑に彫る「粗彫り」、そして最後の「仕上げ」っていう工程に分かれるんです。
 で、機械彫りのほうを見てください。自分で書いた字をコンピューターに読み込ませて、それを機械彫刻してます。はんこのデザインは手書きやからオリジナルだし、最後の仕上げもちゃんとやってます。って事は、この機械彫刻は完全手彫りとほとんど変わらないんです
 事実、左右のはんこは両方とも僕がデザインしたんですが、あまり大きな違いは無いでしょ?

 え? まだ納得できない? ならもう一つ重大な事を言いましょか。完全手彫りの場合、真ん中の段階「粗彫り」を弟子(しかも入門したて)にやらせる場合があります。多少ミスしても仕上げでカバーできる「粗彫り」の工程は、他の工程に比べてさほど重要じゃないからです。

 そ、「粗彫り」を「弟子」にさせるか「機械」にさせるかの違いしかないので、職人にとってはそれを区別する意味が全く無いんですわ。

 っつー訳でご理解いただけましたか? はんこの「手彫り」と「機械彫り」が、実は大した差がない事もあるってことを。
 ちなみに当店はこのどちらでもなく、このような方法で彫刻しとります

 明日は視点を変えて、同じ機械彫りでも職人と素人ではどう違うかってのをお話します。

「素人が はんこを見分けるのは無理」って決め付けたらアカンで

「手彫りで判断で気品と困る!」って言いはりますけど、それって「自分ではんこの良し悪しが区別できへん」って決め付け鶴だけでっせ手彫りはんこ=機械不使用ではない」とか、「職人ははんこを見たらその出来が分かるから、手彫りかどうかは興味がない」ってのを見て、「ほな、どないせえっちゅーねん!」と思っていませんか?

 落ち着いてください。貴方がそう思ってるのは、「自分にははんこの良し悪しが見分けられない」って言う固定観念を持ってるからなんですよ!

 前回も言うた様に、はんこの職人は「手彫り」か「機械」かではなく、彫った結果生まれた「印影」の出来が良いか悪いかで全てを判断します
 ほな、素人でも「印影の良し悪し」を見分ける事が可能なんか?
 これは、発想をちょっと変えたら「可能」になるんです!

 例えば、今僕が一つのはんこを出して「このはんこの出来がエエか悪いか」なら、難しいと思います。
 何でかって言うと、はんこには見分けのつきやすいモノと、そうでないモノがあるからです。

 そやけど、それは「発想」を変えたら大した問題やありません。今見つけるべきなんは「ちゃんとしたはんこを彫れる店(職人)かどうか」って事。なら、そのはんこ屋(職人)の作品見本の中から、見分けのつきやすいものをみつけて判断すればいいんですわ。

 そんなわけで、今後、その方法を紹介していきますが、うちのショッピングサイトでは公開済みなんで、気の早い方はそっちをみてくださいな。

はんこの「手彫り」に基準が無い理由

「なんで業界で『手彫り』の基準を決めへんねや!」…とお怒りの気持ちは分かるんですが 理由があるんです はんこの「手彫り」は「機械不使用」ではないっていうのを知って、上のようにお怒りになってるかもしれない貴方へ。

 なんで「手彫り=機械不使用」って基準にしないのかといえば、はんこ職人のほとんどが彫刻機を使ってるからですわ。

 「そんなん業界の自分勝手な都合に過ぎひんやん!」ってお思いですよね? でもちょっと待ってくださいな。

 何で、ほとんどの職人が機械を使ってるんか? それは機械を使ったほうが効率がエエってのもあるんですが、一番大きい理由は「機械を使ってもモノは悪くならない」からです。先日「機械を全く使わない職人はホント少ない」って書きましたが、あれは機械を使うのが苦手な人ばかりで、機械を使うのが苦にならない職人は、腕が良くても機械を導入するのが普通なんですわ。

 それともう一つ。
職人は「良いはんこと悪いはんこ」の区別が簡単につけられます
職人に言わせれば、手彫りか機械かっていう「過程」よりも、彫った結果出来上がった「結果」の方が重要って事ですわ。

 そんなわけで、機械云々については業界で明確な基準がついてないんですが、「ほな、どないしたらエエねん!」ってなりますよね。
 すいません、明日の内容をご期待下さい!

「手彫りはんこ は手間暇かけてる」ってのは、ある意味「幻想」

手間暇? 言っときますけど一流の職人はメチャクチャ彫るの早いですよ しかも上手やし
 もし、「手彫りのはんこは手間暇かけてるからいい」と思ってるのなら、ちょっと待ってください。

 確かに、機械を使ったほうがいいはんこが効率よく出来ます。これは事実です。でも、手彫りが「手間暇かけてる」って言うのは、必ずしもそうは言えません

 だって皆さん「手間暇」って、何日とか、5時間以上とか、そんな感じに思ってますよね?

 言っときますけど、法人印ならともかく、個人の実印・銀行印なら大抵2時間もかけませんよ。1時間なら流石に満足良く出来は…って言うレベルなんです。熟練の職人は。

 っていうか、彫るのに慣れる事で、「綺麗に早く彫れる」から、一流の職人なんですわ。

 考えてみてください。発想を逆にして「彫るのが下手な人ほど完成に手間取る」って考えると、メチャクチャしっくり来るでしょ?

 大抵皆さん「良いはんこは手間暇かけて時間がかかるし、今すぐ必要な自分には無理」とか思ったりするみたいです。

 違います。短時間で良いはんこを作れるんが職人なんです
 (もちろん、注文が殺到してて行列ができる職人だったら別ですけどね…)

 この辺はうちのショッピングサイトにも同様のことを書いてるページがあるんで、是非見てくださいな。

「手彫りのはんこは複製できない」は、今や「ウソ」

手彫りはんこだろうが、機械彫刻のはんこだろうが、複製されるリスクはほとんど一緒!
 「手彫り=機械不使用」ではない、ってことで、憤慨している貴方

ほな、なんで「手彫り」がエエと思ってるんですか

 これは調べてないんでわかんないんですが、「やっぱりはんこは手彫り」って思ってる人の大半が、その理由を「機械で彫ったら同じ物がたくさん出来るから」「手彫りのほうが手間ひまかけてるから」と思ってるんやないかと想像してます。

 断言しましょか。そのどっちも間違ってます

 まず、今日は「機械で彫ったら同じ物がたくさん出来る」について反論しましょか。
 実は「手彫りなら同じ物が彫れない」が、残念ながら間違ってるんですわ。
 現在の彫刻機はデータどおりに正確に彫刻できるので、綺麗に捺印された印影さえあれば、それをスキャンする事でほとんど分からない程度に同じ物が彫刻できます

 それに、「機械彫りなら複製可能」というのも、その最新式彫刻機で「(はんこを彫る)データが残って」いて、「意図的に彫刻開始」しない限り、同じようなはんこは出来ません。

 大体、「機械を使った手彫りはんこ」が存在する以上、手彫りか否かで職人(はんこ屋)を見極めるんはナンセンスです。それなら、信頼できる職人を自分の目で見極める方がいいですね

 ちなみに、当店では彫刻機を使ってはんこを彫っていて、データも保存してますが、そのデータは厳重に保管してます。「田中」や「鈴木」なんかのはんこはしょっちゅう注文が入るんで、これまでと違ったデザインをするための確認用に使うことが多いですわ。

「手彫り」印章(印鑑)の事実を徹底解説 知られざる実態からQ&Aまで

手彫り=機械不使用『とは限りません』

 はんこの「手彫り」ついて、当サイトは立ち上げ当初から警鐘を鳴らしており、店主の野田守拙も「「手彫り」をお求めの方にお伝えする『重要な事実』」というページを公開しております。
 私が過去に公開したこのページも「印鑑 手彫り 嘘」という検索で、かなり上位に表示されており、そこそこの方が見られているようなので、より印章の「手彫り」について理解していただける様、当ページの内容をより詳しく表記し、大幅にリニューアルして公開いたします。

 先に申しますが、当店店主「野田守拙」は熟練職人ですが、印章彫刻に彫刻機を使用しております。このページには「他店の手彫りじゃなく当店を選べ」という意図はありません。どちらかというと「手彫りに固執しすぎて失敗するお客様を減らしたい」という思いで情報公開しております。
 また、このページは情報提供により、ご自身である程度見極めをつけてもらうためのページです。他店に「手彫りの実態というページを見ましたが、おたくは本当に手彫りですが?」と質問するのはやめてください。そのお店の迷惑ですし、言質を取ることは本質的な解決にはなりません。
もっとも伝えたい重要なこと
 これはリニューアル前にも書いておりましたが、トップに表示されてる画像の通り
「手彫り」=「機械を使ってない」という意味ではありません
要はいくら彫刻機を使っても、部分的に手で彫れば、「手彫りであることは間違いない」という事です。
 ですので、「手彫り」と言いつつも、実は彫刻機を使っている、というケースがあります。
 「理論上ありえる」なんてもんじゃありません。結構見受けられます。

※「詐欺じゃないのか」「業界で基準はないのか」などのご質問については後述します。

実態はどうなのか
 気になる方は、一度「印鑑 手彫り」で検索してみてください。

「印鑑 手彫り」でgoogle検索
「印鑑 手彫り」でYahoo検索

 出てきたサイトの中に、「完全手彫り」と記載されたサイトが見受けられます。こういうサイトは偽りでない限り彫刻機は使ってないでしょう。

※「完全手彫り」「彫刻機使用」と2段階の彫り方・価格設定をされている店もあるので、サイトの商品すべてが完全手彫りではない場合もあります。

 その一方で、「手彫り仕上げ」と記載してるサイトもあると思いますが、そのサイトは、十中八九「彫刻機」を使用しています
 実は「手仕上げ」という言葉は、印章業界が「彫刻機使用なので『手彫り』とは違うけど、まともに仕上げしてない安物よりは良い品質のもの」と主張するために独自に定めた言葉になるのです。
 何故「手仕上げ」が「手彫り仕上げ」になっているのか、私にははっきりと分かりません。ただ、機械不使用であるなら前述の通り「完全手彫り」と謳えばいいので、彫刻機を使っていると考えるのが自然と言えます。

混乱を招く原因は
一言で言うなら、お客様と職人で認識が大きく異なるからでしょう。

「手彫り」に関する、売り手と買い手の認識の違い

買い手(お客様)

  • 「手彫り」は手間暇かけた良いもの   
  • 機械を使ったはんこは複製される 
  • 機械彫りのはんこは手抜き           
  • いいはんこを手っ取り早く見分けたい  
  • 「手彫り」の肩書があれば、手っ取り早く良いものと理解できる      

売り手(職人)

  • 技術があれば手彫りでも機械彫りでも良いもの
  • 手彫りでも機械彫りでも複製は可能
  • 道具をうまく使って効率よく良いものを彫るのが職人
  • 職人の出来の良さを手っ取り早く伝えたい
  • 品質の良さを手っ取り早く伝えるために「手彫り」「手仕上げ」と伝えたい

 上記のように、お客様とはんこ職人で大きな認識の違いがあり、その差が埋まらないのが原因だと、私は思っています。
お客様側からすると、売り手(職人)側の発想が不可解でしょうが、長くなるので後ほど解説いたします。

「手彫り」にも種類がある?
 「部分的に手で彫ったものでも『手彫り』」ということは、「どの部分を彫るか」で、いくつも種類が存在することになります。
 ここでは手彫りの種類について解説いたします。主に考えられる種類として6種類、下記の通り紹介いたします。

分類

字入れ

印章彫刻の字入れ工程

完成品となる印影を印面や紙・機械に書き込む

粗彫り

印章彫刻の粗彫り工程

字入れした印影原稿をもとに、粗く彫刻する

仕上げ等

印章彫刻の仕上げ工程

粗彫りの後さらに仕上げて鮮明な印影にする他、場合によって底さらえを行う


完全
手彫り
A1 熟練職人(手書き) 熟練職人(手彫り) 熟練職人(手仕上げ)
A2 熟練職人(手書き) 見習い(手彫り) 熟練職人(手仕上げ)
A3 見習い(手書き) 見習い(手彫り) 見習い(手仕上げ)

彫刻機
使用
B1 熟練職人(手書き) アナログ彫刻機 (熟練)職人(手仕上げ)
B2 (熟練)職人(手書き) ロボット彫刻機 (熟練)職人(手仕上げ・底さらえ)
B3 素人(既成文字) ロボット彫刻機 素人(底さらえのみ)

※表にはわかりやすく色分けしておりますが「手彫りのグレード」「品質の高さ」を分類するものではありません。

 上記の表を見たらわかりますが、実は彫刻機を全く使用しない「完全手彫り」でも、細かく3種類に分かれます

「A1」:全て熟練職人が手彫り彫刻
 最初の字入れから最後の仕上げまで、全て熟練職人が行うもので、出来は職人の熟練度合いによりますが「完全手彫り」に相応しいのは間違いありません。
「A2」:「粗彫り」は見習いが手彫り彫刻
手彫りの粗彫り工程 途中の工程である「粗彫り」を、弟子などの見習いにやらせる場合です。熟練職人が印面に書いた文字を見習いが彫り、粗彫りの出来が多少悪くても最後の仕上げで職人がカバーする、という方式で、これも「完全手彫り」に相応しいものです。また「弟子」「見習い」と言っても、独立直前の優秀な職人である場合もあります。
「A3」:見習い(実績の浅い職人)が全て手彫り彫刻
 最初から最後まで見習い、もしくは実績の浅い職人が彫刻するタイプです。
 完全手彫りに間違いはないですが、「一応彫ることができる」人たちによるものだと、出来が良くない場合があります。
 実際にこのような店舗を見たことはないのですが、「そうかも知れない」と感じる店はあります。
 完全手彫りの「A1」「A2」であれば、熟練職人が手掛けているので職人の紹介があるはずなのですが、その職人の名前記載が見当たらないサイトがあるのです。サイトに職人名のないところは「特定の人以外が彫っている」という事で、このA3に分類する可能性が高いです(特定の職人が彫っているかもしれませんし、不特定の職人でも出来の良い手彫りである場合もあります)。

次に、彫刻機を使用するタイプの分類です。

「B1」:職人がアナログ彫刻機で粗彫り
初期の光電式彫刻機 今はごく少数となりましたが、年季のある職人が「光電式」というアナログ彫刻機を用いて仕上げる方法です。透明フィルムに朱墨で印影を手書きし、機械が「フィルム」と「はんこ」をそれぞれ渦巻き状に回転しながら、フィルムの原稿に連動して針を上げ下げすることで彫ります。
 この光電式彫刻機は職人がちゃんと仕上げしないとまともな作品とならないものでしたが、当初はそれでも「粗彫りを任せている間、他のことができる」と重宝されました。また、「職人しか扱えない」こと、そして「見習い弟子に粗彫りさせているのと変わらない」という認識だったため、印章業界では「出彫りも彫刻機使用も同じ」という考えになっているのです。
「B2」:職人がロボット彫刻機を用いて字入れ・粗彫り、最後に底さらえ
手書き印影をスキャンしロボット彫刻 この分類は現在の職人の大半の彫刻方法に、追加で手を入れたものです。紙に手書きで印影を書き、それをコンピューターに取り込んで精度の高いロボット彫刻機に彫刻させ、その後手仕上げ彫刻します。

機械彫りを手彫りに見せる「底さらえ」 なお、最後(一番右)に記載の「底さらえ」とは、右写真の赤枠部分のように、最後にもう一度粗彫りと同じ工程を行って印面の底を手彫りに見せる工程です。「手彫り印章は彫って凹んだ部分の底が波うっている」というのが有名ですが、「底さらえ」を行う事で手彫りに見せることができます
 この「底さらえ」を行わない店舗は「手書きはんこ」「手仕上げ印章」などと書いている店が多いようです。
 手書き印影を意図的に粗く書いて仕上げを丁寧にする職人や、しっかりと手書きして最小限に仕上げるなど、職人によって手法は違いますが、しっかりした技量の職人が手掛けるのであれば「唯一無二」で立派な作品と言えます。

「B3」:素人ががロボット彫刻機を用いて字入れ・粗彫り、最後に底さらえ
コンピュータ内蔵のフォント文字でロボット彫刻 印章文字を書くことができない素人レベルの方が、コンピューターに内蔵する既成の印章文字を並べて加工し、彫刻したものです。右の画像を、同じ名前である「B2」の作品とよく見比べると、こちらの方が線が単調で、直角部分などが角ばっているのがわかると思います。
 コンピューター彫刻機は精度が高いので手仕上げする必要はなく、底さらえさえ行えば「手彫り」は嘘ではないし、一般の方には見分けがつきません。ただ既成フォントは種類が少なくクオリティも高くないので、しっかりした職人が見るとすぐに「彫刻機を使っているな」とわかります。また、同名のはんこを同じ彫刻機の別の店で彫った場合、似通った印影作品になる(字の並べ方や大きさのバランスで多少の違いはあるでしょうが)のもデメリットです。同じ職人が彫れば似通るのは仕方ないですが、全く異なる店でそうなってしまうのはある意味悲しいですよね…。
総括
 上記の説明を読まれたら気づかれたかもしれませんが、6種類の手彫りのタイプのうち、ほとんどが「熟練度合いで」とか、「出来が良い場合もあります」などと記載しています。
 結局は彫刻の出来・品質は手彫りかどうかというより、職人の技量で「印章の良し悪し」が決まるのです。
 はっきり申します。「手彫り」などの肩書は、手っ取り早く判別するものと見せかけて、売り手が手っ取り早く都合の良いものを売らせるための言葉にもなるのです。
 実際「A3」や「B3」の中には「手彫り」と謳いつつも品質の悪いものがあると言われ、当店のお客様から「過去に手彫りというサイトで印鑑を買いましたが、出来にがっかりしました」という声を何回か聞いております。
ここまでの長文をお読みいただいたのでしたら、是非とも肩書に頼らない本質の良さについて、少しでもご理解いただけると幸いです。
よくあるご質問に回答いたします
「手彫り」と謳ってるのに彫刻機を使ってるなんて、詐欺じゃないの?
 最初に申しました通り、彫刻の段階で手作業による彫刻を行っている以上は、詐欺とまでは言えないと思います。ただ当店としては誤解を招く表現は避けるべきと思っています。
何故、はんこ業界で「手彫り=機械不使用」と定めないの?
 印章業界(職人)の認識として「手彫りだろうが彫刻機を使おうが、職人の技が良ければ良いものができる」と考えているからです。また、完全手彫りでも途中の「粗彫り」工程は見習い弟子に彫らせることが多いので、「他に任せるという意味では人も機械も同じ」という認識もあるかもしれません。
彫刻機を使うと複製されるから止めるべきなのに、何故使い続けるの?
 確かに精密ロボット彫刻機を用いることで複製は可能ですが、それは理論上可能なだけであって、実際には行いません。大抵の職人は一度彫刻した印影データは削除しますし、保存していても「過去に同じ印影にのものがないか確認する」ためです。そもそも同じ印影で彫刻すると「他人の印章の複製」となり、法律で禁止されています

印影見本「首都」

 彫刻機を用いている当店でも、同名の印影は何度もおつくりしていますが、すべて異なるデザインです。例えば右にある「首都」という名前の印影(時間経過で変化します)は6種類ありますが、すべて異なるデザインになっております。
 むしろ、手彫りであったとしても、鮮明に捺印された印影があれば複製されてしまうので、複製についてはそちらを警戒すべきです。

彫刻機を使って彫るのって「手抜き」でずるいんじゃないの?
 効率よく良いものを作るのは職人の技量であり、手抜きでもずるくもありません
 そもそも「手間暇かける」という考えに大きな誤解があります。もし1万円の印章に1週間かけて彫るとした場合、本当に1週間彫り続けているなら、その間他の仕事ができなくなるので、月に4万ちょっとの売上しか立てられなくなります。印章職人が生きてゆくには基本的に1日10本程度彫刻する能力が必要で、その結果彫刻機を検討するのはごくごく自然なことだと言えます。
「手仕上げ」って謳いながら彫刻機を使うなんて、混乱を招くだけじゃない?
 お客様の立場からすれば、おっしゃる通りだと思います。実際、国から(確か消費者庁だったと思うのですが、資料が見当たりませんでした)そういった表現を止めるよう業界に通達が来た、という話を聞いた事があります。
 業界として、彫刻機使用の印章を「手彫り」と謳うのはさすがにやめたいが、安物の機械彫りと同一視されるのも避けたい、ということで、「手仕上げ」という言葉が生まれたのだと思います。
おたくの店(綺麗印影)は、手彫りの6分類のうちどれに当てはまるの?
 当店は彫刻機での粗彫りを行っており「手彫り」とは謳わないようにしておりますので、上記6分類には当てはまりません。近いものは「B2」(手書きで字入れして彫刻機で荒彫りし、手仕上げ)ですが、字入れは手書きではなく、店主の野田守拙が1から作成した数万の文字(同じ字体・同じ文字でも複数種類あります)を組み合わせて作っております。また最後の「底さらえ」も行っておりません。
「坂本龍馬」の実印見本 ご注文ごとにデザインを変更しておりますので、同名の場合デザインが似通ることはあっても同一にはなりません(右の「坂本龍馬」の印影は最も極端な例ですが)し、50年以上の経験で印影を作成しておりますので、品質はよいものと自負しております。
「手彫り」という肩書に頼らない見分け方ってあるの?
 確かに難しくはありますが、店舗にある作品見本を色々見比べることである程度の見分けはつくと考えております。一例として当店サイトの「貴方も出来る、『印章職人を見極める』方法」というページをご参考にしていただけたら幸いです。

開運はんこの意外なメリット

縁起のいい「印相」ってはんこは、縁が欠けにくい場所が多いって言うメリットがありますねん
 はんこ屋である当店が、縁起がいい「印相」っていうのを、邪道と知りつつも薦めてるのは「縁起」とは別の理由が大きかったりします

 ひとつは上の画像にあるとおり、縁と文字が接する部分は欠けにくくなると言うこと。縁と文字が接する場所が多いとそれだけかけにくい部分が増えますんでね。
 これは実はかなりデカイと思ってます。そのうち書くと思いますが、職人が彫ったはんこは縁が欠けにくいんです。でも、それでもやっぱり落としたときの衝撃が悪かったら欠けてしまいますわ。

 ほやけど、縁が文字の線と繋がってたら、その部分は間違いなく頑丈で欠けにくい。ほしたらそのふちと線が繋がってる部分が多いほうが、欠けにくくなる。すなわち持つ人にとってええはんこって事ですわね。

 あとは、一般論として印相の文字の方がデザインに手作業となる部分が多いからってのもあります。先ほど言った「文字の線と縁が繋がってる」のは、デザイン上、手作業で行うか無いんです。例えコンピューターでデザインするとしても、全自動では出来ず、手作業で一つずつ繋げていかないとアカンのです。

 ということは、機械による自動化が多くを占める世の中にあって、ある程度手作業が入るこのやり方の方がいいかも知れんって事ですわ。

 まあでも本来は、手作業云々より、自分の「証」となる印影がどんだけしっかりデザインできてるか、やと思います。

 その辺についてはまたいずれ、お話したいと思います。
 明日以降は、すんませんが開運とはちょっと離れた話をしますんで。

はんこで「験担ぎ(げんかつぎ)」ってアリ? ナシ?

こいつ「開運はんこ」に否定的やな… とお思いかもしれませんが、「験担ぎ(げんかつぎ)」はやってます 散々、開運はんこを「やりすぎ」「邪道」と言うといて何ですが…
「験担ぎ」するのまで「ナシ」ってのはどうか…と思うてたりしてます。

 この辺は正直、葛藤もありますね。

 確かに「開運商法」がまかり通ってる中、そういうのは慎むのが理想かもしれません。
 ただ、さすがに「開運」より軽めの験担ぎまで許さないって言うのは、お客様の需要に背きすぎかという気がするんですよね。

 当店では例えば「大安吉日に納品して欲しい」などの「験担ぎ」はお受けしてます。
 開運で文字をあれこれ変えろって言う要望は、文字そのものの意味や姿をまるっきり変えてしまって逆効果になりかねないですが、納品日の指定は商品の出来に左右する事は無いんで、デメリットは無いし、これは要望にこたえたいと思っています。

 それと、縁起重視の「印相」には別のメリットもありんです。
 それについては次回書きますわ。

開運はんこで「鑑定してくれ」ってのは超失礼なんよ

開運の鑑定士の人に「はんこはこうやって作れ」って言われても… 正直「あんた誰?」って感じになるんです 良くお客さんに聞かれるるのが「開運の鑑定をしてくれますか?」っての。
 当店はこう聞かれると「当店ならではの手法で印影をおつくりしますんで、鑑定士への依頼は行いません」って答えてます。

 でも、当ブログを読んでいただいている人は「え?」って思うかもしれませんね。
 「前回、プロはお客さんの要望に応えるって言うたやん! それと矛盾するやろ!」って

 でも、矛盾しませんねん。
 だって、「鑑定しろ」っていうのはすなわち、自分でもお客さんでもない、第三者である鑑定士の言うことに従って彫れって事ですから。
 
 お客さん自身が細かく接点の数とかを指定する場合は、極力従いますよ。(もちろん、字がグチャグチャになってまうほどの要望はお断りしてますが)
 でも「鑑定しろ」って言うことは、自分で調べることもせず、なおかつ彫る職人にすべてを任せず、その癖「開運の保障」を求めてるわけです。

 レストランに行って、シェフに「料理評論家の○○が、△△の料理には□□の食材が良いって言ってたから、それで作って」って言いますか??
 はんこで「鑑定しろ」ってのは、それと全く同じで、失礼かつ場違いで恥ずかしい要求だと言う事を理解してくださいな。

 いかに失礼かつ自分勝手なことか、ってわかりますよね?
 そんなことがまかり通るのが、人生にとって逆効果とさえ思うんですわ。

「開運はんこ」を彫る人は二種類に分かれる

開運はんこを彫る職人 どっち?
これは単刀直入に書きましょう
高く売れるから彫る」と言う人と「プロとしてお客様の要望に応えるために彫る」と言う人です。
当店も基本的には後者の理由で、縁起の良いとされる「印相」って言うはんこを取り扱っております。

前回、「縁起のいい『印相』は邪道」やと書きましたが、邪道の癖に彫る職人が多いのは、良心的な職人が後者の発想を持っているためなんです。

ちなみに、「本当にお客様の幸せになって欲しいから彫る」と言う人は… 消費者としてはいて欲しいでしょうが、ほとんどいないでしょう。

ただ、「高く売るからには、本当にお客様の幸せにつながって欲しい」というはんこ屋は、いるかも知れませんね。

そんなわけで、開運の「印相」ってはんこは邪道やけど、その「印相を彫る人」まで邪道かって言うと、そんな訳ではないんで、その点気をつけてくださいね。

開運はんこの文字って、実は『邪道』なんよ

縁起がエエから「田」に線を足すって、普通の字ではやらんよね
 何で邪道なのか? それは「ルール」が存在せんへんからです。

 文字にはちゃんとした「ルール」があります。小学校で習った文字の書き方のようなもんです(これは実はもっと深い話があるのですが、それについては後日書きます)。
 はんこで良く使われる「篆書(てんしょ)」と言う文字には、はっきりとしたルールがあるんです。 しかし、縁起がよいとされる「印相」と言う自体は、「字と字をつなげる」「中心から外に広がるように」というのに従って、篆書のルールをぶち壊したもんなんです。

 例えば上の写真の「野田」のはんこ。「田」の上部の左右から、縁に向かって線が延びてますわね。「腕」と言うか「触角」みたいな感じで。
 こんな「田」と言う字はどの辞書にも載っていません。「その方が縁起がええから」と勝手に線をつけ足しとるんです。

 はんこにも展覧会やグランプリと言うのがありますが、その中では「印相」ってのは評価されません。何故なら上記の理由で「ルールがないから評価しようがない」ためなんですわ。

 昨今は、はんこは「開運」が主流で、「どうせなら開運の方がいい」と言う風潮がありますが、厳密には開運であることのデメリットもあると言うのは覚えといて欲しいと思います。

 しかしその印相、「邪道」であれば彫る人が少ないので広がらないはず…なのですが、実際は多くの職人が彫刻しています。
 この理由については次回に書きましょか。

開運はんこの「誤解」

使ってナンボの「はんこ」やのに 持つだけで開運になるって…
 今の「開運はんこ」って、要は使い方が間違ってると思うんですわ。

 お守りとの違いで言うた様に、はんこは実用品。契約書とかに捺印して、初めて意味があるもんです。

 ってなわけで、はんこを『使う』ことによって開運に繋がる、っていう考え方なら、僕はアリやと思うんです。

 実際、開運はんこでは「アタリ(正面の目印)はつけない」という考えがあります。これは正面の印をつけて捺しやすくしてしまうと安易な捺印に繋がるので、自分でちゃんと見て慎重に捺印しましょう、っていう事らしいですわ。

 こんな感じで、捺印と言う『行為』と開運を結びつける事で、はんこを使うことの重要性・次にはんこを使うまでに大事にしまう事の大切さを伝えていけば、使う人もはんこを無くさなくなるし、売り手もはんこの価値が上がってwin-winだと思うんですわ。

 ただ、現在は「はんこで開運」ってのが一人歩きしてしまい、あたかも「買って手に入れれば開運」であるかのような扱われ方になっとる。売り手の方も「高く売れたらいいから」と思ってるのか、是正しようとも思わん。

 そらあかんわ

 そんなわけで、はんこで開運って考え方は慎重にして欲しいとおもっとります。

「開運はんこ」と「開運お守り」の決定的な違い

同じ「開運」でも、お守りとはんこじゃえらい違いやわ
開運はんこを買った人が陥る不幸第一位は「はんこが必要な時に見つからない」って内容を見て、「そんなん当たり前やん!」と思った方!

なんで「当たり前」なんやろか

例えば、大事に持っていたお守りが無くなったら、それって「不幸」ですかね

確かに大事にしてたら紛失は悲しいかも知れませんが、「不幸」とはちょっと違うと思いませんか?

「はんこ」と「お守り」 何が違うか?

  • はんこは「持ち歩かない」 。お守りは「持ち歩く」
  • はんこは「必要な時に使う」。お守りは持つことはあっても「使わない」

これで分かりました? はんこはお守りと違って「実用品」なんです
実際に使うものだから、使わないときに持ち歩いて紛失するわけにはいかない。だからしまっておく。
でも、いざと言うときには必ず必要になるから、その時はすぐに出せるようにしておかないといけない。

その様な物でありながら、縁起物として取り扱ってしまうために、調べるまでも無い「よくある不幸」が生じる事になったんです。

ほな、「はんこに開運」ってのは、そもそも間違いなのか? 良くないことなのか?
これについての僕の見解は、明日お話します。

開運はんこを買った人が体験する「不幸」 ワーストワン

「調べたんか?」ってお思いかもしれませんが 調べるまでも無いんですまず最初にお詫びです。
「不幸」って言う言葉は、他人を傷つけかねない表現だと承知で使っています。不快に思われた方はすんません。

ただ、「開運」を求めている人にとって、その逆とも言える体験が起こりがちだという事を伝えるために、あえて「不幸」と表現さしてもらいました。

で、そのワーストワンですが、上の絵にもある通り、調べるまでもありません。

はんこの紛失

いざ、はんこが必要となったときに見つからない」です

せっかく開運のはんこを買ったのに、一度使って(あるいは一度も使わずに)どこかにしまい、何年か後に必要となったときに探しても見つからず、散々探し回る。最悪、再びはんこを作りに行かなければならない…ってやつです。

「そんなん当たり前やん!」「開運でなくてもそれは一緒やん!」って思いました?
でも、これって結構重要な事やと思ってるんです。

なんで「当たり前」なのか?
「開運はんこでなくても一緒」なら、なぜ「開運はんこ」なのか?

これについて、明日以降に書いていきます。

こんな「開運はんこ」を求めてる人は幸せになれない

開運はんこが欲しいと とやかくうるさい注文をされたおばさん数年前にあった実話なんですけど…。

おばさんがやってきて、「開運のはんこが欲しい」「下の名前のはんこで」「接点(はんこの縁と文字が接触する数)は○○個で」と言う依頼があったんです。

で、まあこの方が妥協しない方で…
「ご指定の接点数が多いので、フルネームにされると作りやすいんですが…」と言っても「ダメ!」
「縁起の良い接点数はほかにあると思いますが…」と言っても「ダメ!」

仕舞いには、
「私、最近運勢が悪いの。今まで仲良かった人にも敬遠されるようになったみたいだし… だから絶対運勢を変えないといけないのよ!」と力説するほどに。

当時、対応したのは店主ですが…
横で聞いていた僕は、あと少しで言ってしまうところでしたわ。

お客さん、そのワガママっぷりが自分の運勢を下げてしもうてるんとちゃいますか?

って。

結局、その方は注文されずに帰られました。
でも、正直それでよかったと思います。
「妥協しない」事は大事かもしれませんが、度を過ぎると単なる「ワガママ」になってまいますからね。
こういった方がはんこを手に入れられても、あまりいい方向にはならないと思うし、お客さんにとってもはんこにとっても不幸ですからね。