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「印章(印鑑)10年保証」事前に理解しておくべき注意点

「印章(印鑑)10年保証」事前に理解しておくべき注意点

 ネットで印章(当店では「印鑑」の事を正式名の「印章」と読んでいます)を注文する際に「10年保証で安心」などという言葉をよく目にすると思います。店によっては20年以上の保証としているところもありました。
 消費者としてこういった保証は「ないよりあった方が安心」だとは思いますが、これらの保証は利用の際に注意しておくべき点がいくつか存在します。それら印章保証制度の注意点を事前に把握していただくことで、もしもの時の心構えを持っていただくことを目的に情報公開いたします。

※全ての保証サービスをチェック・検証したわけではないので、例外がある可能性はあります。その点ご了承ください

注意点1:保証は「破損等による彫り直し」のみ。「紛失」「盗難」は対象外
破損は保証対象ですが、紛失は対象外です 例外はあるかもしれませんが、ほとんどの保証サービス店が注意点として「破損したもの、捺印出来ないものは彫り直します」と書かれており、盗難や紛失など、印章本体をなくしてしまったものは対象外となります(後述しますが盗難が対象となる保証サービスはあります)。
 確かに紛失まで対象となると、「素材を一から店が用意しないといけない」「客が紛失と偽ってはんこを二つ持つことができる」という点があるので、この条件となっているのはやむなしですね。
 ただ、印章店で店員をしているとわかるのですが、「はんこが欠けてしまった」というご相談とほぼ同数ぐらいのイメージで「はんこをなくしてしまった」というご相談を多数うけます。破損等は対象なのでその点は安心ですが、「100%安心」ではないという事です。
注意点2:同じはんこは作れない
彫り直しすると別の印になります 「印章は唯一無二」という考えの方からすれば当然ですが、深く考えてない方はひょっとすると「10年保証は買ったものと同じはんこを彫ってくれる」と考えているかも知れません。しかし、同じはんこの彫刻はできません。分からない程度の複製は理論上可能ですが、非常に手間がかかります。そしてそれ以上に対応するのが難しい法的な理由があるのです。
 ですので、実印や銀行印で保証サービスを利用する場合は、別のハンコとなるので再登録の手間が必要になるとお考え下さい。
注意点3:日数がかかる
 そしてこれが結構大きな問題になると思います。お手元の破損した印章を店舗に送り、彫り直して送り返してもらうまで待たないといけません。「迅速に対応します」と記載されている店舗もありますが、私個人の本心として「彫っても入金されない保証サービスの彫刻と、売上につながる新規彫刻のどちらを優先するか…」と思うと、最優先対応を期待するのは酷だと思ってしまいます。
 そして重要なのが、保証サービスが必要になるときは「今はんこを捺す必要があるとき」が多いのです。当店にもお客様から「はんこが欠けてしまったから、新しく作りたい」というご依頼を受けますが、感覚的に半数以上が「これから使うので急いでほしい」とご希望されます。残念ながら、はんこを落とすなどしてその際に破損に気づくより、次に必要となった時に初めてはんこをチェックして、印面の破損等に気づくことが多いようです。
 縁が欠けている程度の状態なら、仕方なく欠けたまま捺印してその後保証サービスを利用する手がありますが、「何とかしのげた。また今度保証を申請しよう」として、そのまま忘れてしまうケースも考えられます。
その他注意点
 細かい注意点になりますが、完全手彫りの印章の場合は「手仕上げ(彫刻機使用)」による彫り直しになることが多いようです。また、店によってはチタンなどの特殊な素材の場合有料になるばあいもあるとか。
 また当然ではありますが、下記の例外を除き、注文した店舗でしか保証サービスは利用できませんので、万一注文されたショップサイトが閉鎖となった場合は利用不可になると考えられます。
例外的なサービス
 上記のように、意外と注意すべき点のある10年保証ですが、少し条件が異なる保証サービスもあります。それが公益社団法人 全日本印章業協会の「全国統一 印章保証制度(5年)」です。
 保証期間は5年となりますが、盗難も対象とされ、また協会加盟店であれば対応できますので、協会加盟の他店に持ち込んでサービスを利用する事も可能なようです。(当店は都合により非加盟店ですので対応できません。ご了承ください)
 加盟店は多数あるため、「ウチはそんなのやってない」と保証サービスをつけられなかったり、保証書をもっていっても断られるケースがあるかもしれませんので、事前に検討する加盟店への問い合わせをお勧めします。また「紛失」は対象外のようですので、盗難による保証利用の際は盗難届が受理されている証明が必要になるのではないかと考えられます。
よくあるご質問に回答いたします
どうして同じはんこは作れないの? 機械を使えば可能でしょ?
 確かに理論上は可能ですが、

  • 精密ロボット彫刻機で彫刻したはんこである
  • 過去に彫刻したデータが店舗に保存されている
  • 手仕上げがほとんどない(仕上げすると印影が変わるため)

という条件がクリアされてないと、複製に手間がかかります。
そしてそれ以上に「他人の印章の複製を禁じる」という法律が大きなハードルになるのです。「他人のじゃなくて私のだよ!」とお思いでしょうが、身分証のコピーを添えて「私が本人で複製を依頼します」という、法的にクリアできる書類を用意しないと、店側が罰せられることになります。そんなリスクを背負う店はまず存在しない、というのが現状なのです。

欠けた印面を補修することはできないの?
縁が補修できたとしても、加工時に印面・印影が変わります これも不可能です。欠けた部分を埋めるというのが非現実的ですし、万一埋めることが出来たとしても、右図のように捺印するには印面を少し削る必要があり、それにより印影が変わってしまうからです。

 

おたくの店(綺麗印影)ではどんな保証サービスをしているの?
 当店ではサイト立ち上げ当初は保証サービスを実施しておりましたが、数年後に廃止いたしました。理由としては職人の高品質な印章を自負しており、「破損しても安心」ではなく「破損させたくない・紛失したくない」と思われるような印章の提供に力を入れるべき、と判断したからです。
当店では

  • 全商品に紙製化粧箱をつけることで、保管場所が目立ち紛失の可能性を減らす
    印章の保管を分かりやすくする貼箱
  • 印章ケースを開ける時の「星印の目印」を貼り、開け方の解説書をつけることで、ケースを開けたときにうっかり印章を落として破損してしまうリスクを減らす。
    印章ケースに貼った、目印のシール

などの対応で、破損や紛失が起きないよう努力しております。

印鑑登録出来るはんこの条件について

印鑑登録ができるはんこって、役所に代ってビミョーに違います
※2012年11月22日 一部情報に誤りがあったので、訂正させていただきました。失礼いたしました。

昨日は、はんこの「文字のルール」について話しましたが、実印として印鑑登録できるためのルールは文字だけに限りません。本日はその内容について記載いたします。

まず大前提なんですが、印鑑登録できる出来ないの「基準」は統一されてません。各地方自治体でそれぞれ決められてますので、以下の内容は貴方が住んでいる自治体の基準とは少なからず違います
ですので、参考にするんは良いのですが、保証はできないので、正確な情報は役所に問い合わせてください


■大きさ

「大きさ」というのは、はんこ本体ではなく印影(印面)大きさの事です。
当店のある大阪府茨木市では「8mm四方の正方形からはみ出る大きさで、25mm四方の正方形からはみ出さない大きさ」ってなってます。
自治体によって多少大きさの基準の違いはあるでしょうが、大抵は直径1ミリ直径1センチの認印サイズから、2センチぐらいの角印まで登録可能と考えられます。


■文字

結論から言えば、ご自身(はんこ所有者となる方)のご氏名がフルネームで入ってたら、絶対大丈夫です。
大抵の自治体は、印鑑登録の条件として、

  • 苗字もしくは名前が入っている事
  • 名前と無関係の文字が入ってない事(職業や肩書など)

と記載されています。ただ、風の噂で一部の自治体ではフルネームで無いと印鑑登録できないってところがあるらしいと聞いた事がありますので、注意が必要です。
それと、例外として「(名前)之印」「(名前)ノ章」などの表現は慣例として認められることが多いみたいです。

あと、苗字で印鑑登録可能である場合、同居(同世帯)の方で印鑑登録済の印影のはんこは登録NGです。これは家族での実印の使いまわしがトラブルの元になるからです。

なお、文字の種類は原則として問いません。別にはんこらしい文字でなくても、判別できれば登録できます。また、お名前に旧字体などの、常用漢字とは異なる字が入っている方は、常用漢字に代える事は可能なようです。

ちなみに、大阪府茨木市では「名前と苗字の一部を組み合わせたもの」が印鑑登録できるとあります。私の場合は苗字が「野田」、名前が「将弘」なんで、「野将」ってはんこが印鑑登録できるという事になります。ただ、これはNGの自治体が多そうなんで、引越しのことを考えるとお勧めできませんね…。


■その他

模様の入った印影のはんこってのは印鑑登録できない場合が多いようです(出来る自治体もあります)
あとは、以下のはんこは一般的にNGとされます。

  • ゴムなど変形しやすい素材で出来たもの
  • 印影が鮮明でないもの
  • その他、登録を受ける印鑑として適切でないもの

最後の項目は「なんかあった時にどうとでも対処できるように…」って感じで付け足したって感じでしょうね…。

まあ実はこの最後の項目が、微妙にややこしかったりします。それについては明日お話ししたいと思います。

印鑑登録出来るはんこ。出来ないはんこ[補足]

印鑑登録の基準に合致? さてこのはんこ、ほんまに印鑑登録できるんかいな? 印鑑登録の基準ってのは、先日の投稿でほとんど紹介しましたが、それで完璧という訳ではありません。今回はその内容を「補足」として記載します。

その投稿でも申しましたが、印鑑登録出来ないはんことして、大抵最後に「その他、登録を受ける印鑑として適切でないもの」という記載があったりします。
これはすなわち、「いざとなったらNGにする場合もある」という事です。

その最たる例が「既成認印」ですです。
市町村役所の基準で「既製品はダメ」って書いてあったら言うまでもなくNGなのですが、そうでない場合でもNGになる場合があります。
更に申し上げると、家族が既成認印で印鑑登録できたので、今回別の既成認印を印鑑登録しようとしたところ、「ダメ!」といわれる場合があります
※同世帯の別の方と同じ印影のものは、今回とは別に印鑑登録NGとなります。上記は印影が違ったとしてもNGとなるケースです。

要は、その「OKかNGか」の判断が、役所の担当の方で色々変わる場合があるという事です。「印鑑登録として適当でないもの」かどうかは、その担当の人が決める、という事なんでしょうか…。

上記のように、細かい部分で基準は統一されてませんので「誰かがOKだったって言ってたから、今回もOKだろう」と言うわけには行きません。その点ご注意くださいませ。

銀行印は本名で彫らんでもええみたい

あだ名のはんこでも銀行印登録できる? 先日まで、印鑑登録(実印)の登録基準や制度の是非について話してましたが、今回は銀行印について話します。

 実は銀行印の判断基準って、実印と比べると総じてメチャクチャゆるいと言えます。もちろん、各銀行などによって基準が違うんでしょうけどね。

 一番大きいのは「名前と関係ない字が入っててもOK」というケースが見られるところです。僕の知り合いの方はあだ名で銀行印登録してますし、うちの店主も、仕事用の銀行口座は、実店舗名である「摂津印章」と言うはんこを銀行印にしています(法人じゃないんですよ!)

 あと、名前と無関係な絵や模様なども「煩雑で判断が困難でなければOK 」と言うことが多いようです。実際、たまにニュースに出る絵入りのはんこなどで「銀行印として登録できた」と紹介されてるのを見たことがあります

 銀行印がこれだけ基準がゆるいと「なんでや?」ってなるかもしれませんね。実は、それには大きなわけがあるんです。それは明日お話しますわ!

なんで実印は「フルネームが良い」って言うの?

はんこ屋が実印にフルネームを勧めるのは儲けたいから… って勝手に決め付けんといて!! 以前、どこかのQ&Aサイトで「実印ってフルネームで無いとダメなんですか?」っていう質問があり、その回答で「大抵は苗字だけでも登録できますよ」と言うのが載っていました。

 これは以前書いた実印の登録条件にもあるとおりで、間違いではないんですが、そのQ&Aページの下の方を見ていくと、「フルネームのほうが高いから、高いもの買わせようって言うはんこ屋の策略ですね」っていう表記がありました。

違うわ!
何でもかんでも高いもの買わせたいんやったら、銀行印もフルネーム勧めるわ!
ちゃんと理由があるんじゃ!!

…あ、すんません熱くなって……(反省)

 えっと、実印をフルネームで勧める理由はちゃんとあるんです。昨日も書いたように、実印は役所で登録するけど、実印を使う相手は役所ではありません。車の契約するときはディーラーさん。家を買うときは不動産屋が実印を使う相手です。

 いくら印鑑登録できたはんこを持ってきたところで、契約相手が「そんなはんこじゃ契約できんわ」って言われたらおしまいなんですわ
 「そんな事ないやろ」って思うかもしれませんが、過去に一度だけ、当店に「フルネームのはんこで無いと契約できないから実印を作り変えてくれって、契約相手に言われた」って言うお客さんが居たんです。

 そんなわけで当店では、男性の方は世帯主として色んな契約をするし、名前が変わることも無いだろうということで、実印はフルネームにする事を強く勧めてます。もう一度言いますが、高いモンを買わせるためやありませんで! 女性には「苗字だけ・名前だけでもいいと思いますよ」って言うてますからね!

実印の登録基準が、銀行印より厳しい理由

はんこを使う「相手」のクイズ わかります? 昨日は、銀行印に出来る基準が総じて実印のそれよりも緩いって話をしましたが、今回は「ほな、何で緩いんや? 何で実印の方が登録が厳しいんやろ?」って話をします。
  
 この理由は、実印と銀行印の根本的な違いからきてます。
 「違いって言うても、役所で登録するんが『実印』。銀行に登録するんが『銀行印』やろ?」って思いますよね? それは確かにそうなんですが、根本的な違いが他にもあるんですわ。

 それは何か? と言うと、実印は登録する場所と使う相手が異なるって事。印鑑登録は役所で行うけど、役所に対して使うモンではないって事ですわ。

 役所は、あくまで日本国内での契約を円満にサポートするために印鑑の登録をしてるんです。実際に実印を使う相手は契約相手で、役所とは全く別の人(上の画像でいうと「実印」を使う相手は「その他」ですな)。
 それやのに「名前と関係ない文字でもいい」みたいな基準にすると、色んなトコから「何でそんなややこしい事するん??」と文句を言われるわけです。だから、極力無難に、極力無難な基準を採用してます。

 その一方で、銀行印はその銀行本体と相手の個人や法人との間だけの取り決めごとに使うもの。横から口を挟まれることが無いんで、実印に比べると基準が緩いんですわ。

「印鑑登録制度」の弊害

「印鑑登録制度」にはメチャお世話になりましたが、弊害もあると思うんです印鑑登録に既成認印の使用は許せない? 別にいーじゃん」って話を先日したんですが、僕はそう思ってる理由には、現在の既成認印の製作システムが意外と優れているって言うこと以外に、もう一つあります。

それは、「印鑑登録制度」に弊害があると思ってることと関連してるんです。
どうも同業のはんこ屋さんは

  • 既成認印を実印にするなんてとんでもない!
  • 印鑑登録制度は守らないとダメだ!

ってな感じで、第三者からすれば自分の利権を守りたいだけにしか見えない主張をしとります。

あ、いや、はんこ制度は前にもいったとおり利便性はあるし、僕自身「この世に不要なモノ」やとは一切思ってません。そして何より、印鑑登録制度によってはんこ業界の需要が大きくなり、職人である父は飯が食えるようになったんで、それは感謝しとります

ほやけど、その「印鑑登録制度」で、日本人にはんこの使用を強制したせいで、「嫌でも買わないといけないモノ」になって、価格破壊・はんこの価値の低下が起きてるんやと思ってます。

正直、はんこを「安い方が良い」「既成認印で済ませたい」って思う消費者が出てくるんは、印鑑登録制度によるはんこの強制のために生まれた自業自得ですわ。で、これに対して何とか創意工夫を…って言うなら分かるんですが、制度をキツクして守ってもらうって発想は筋違いやと思うんです。

 むしろ僕は、実印を年収1000万以上の人しか使えないっていう風に変えてしもうたらどうかな… と思ってます。 そないしたらはんこが「成功者のステータス」になって価値が上がるんで。
 需要は格段に減りますが、その需要低下で、機械で彫刻する必要が無くなって、手彫り中心になったら偽造問題もなくなり、ちゃんとした手彫り職人に適正な報酬が渡るようになる、と思うんやけどねぇ…

現在の印鑑登録制度って、意外と効率的なんやで

効率的って思う理由は、この機械にあります 多くのはんこ屋がもってますねん えっとですね、前回「印鑑登録に既成認印の使用を禁止せんでもエエやん」って内容を書きました。そう思う理由の一つに、上にあるはんこ彫刻機があります。
 こいつの名前は「BanBan(バンバン)」。文字コードを入力するだけで、センターから印影データが送信されて、自動的に認印を彫ってくれる機械ですわ。
 で、この機械、印影は職人に言わせればメチャメチャ下手な字で、それが嫌なはんこ屋は置いてません。でも、月数千円のリース費用と、ちょっとした通信費だけで使える上に、10分ではんこが彫れるっていう特徴があります。彫れない文字は少ない(これまで2文字程度しかありませんでした)し、珍しい苗字の認印を簡単に彫れるんで、かなりのはんこ屋で置かれてるんですわ

 で、一番言いたいことなんですが、これ。
彫刻機「BanBan」で彫った日本の認印
 「稙田」っていう二つの認印。二つともこの機械で彫ったんですが、白丸のところを見てください。微妙ですが違うでしょ?
 実はこの機械、毎回、ほんの少しだけデザインを変えて彫るようになってるんです(連続で彫った場合は前のデータが残ってるんで同じ印影になりますけどね)

 なんで、こんな安い機械で彫った、こんな安いはんこでも「唯一無二」のはんこになり易いんですよ。
 はっきり言って字は汚いし、安いはんこだから仕上げもしてないので縁も欠けやすい(理由はこちら)。実印に相応しいはんことは絶対言えないんですが、それでも唯一無二で印鑑登録できたら最低限の用は足せます(あまりにも安っぽいんで契約相手に白い目で見られると思いますが…)

 重要な契約を、たった数百円のはんこを買うだけで安全に契約できるのって、ほんま凄いと思うんですよ。ほやから、今の印鑑登録制度は、デフレまっさなかの世の中の消費者にとっても悪くは無いって思うてるんです。

 あ。何度も言いますけど、こんな安いはんこでの印鑑登録、禁止にしなくてもいいとは思ってますが他人には絶対勧めません。縁が欠けやすいし、安いはんこはありがたみが無いんで、次に使うときまでに紛失しやすくなります。何より、自分の「証」としてみすぼらし過ぎますからね。

既成認印の印鑑登録は是か非か

既成認印を実印にしたらアカンって言うけど、別にええんとちやうの? 前回、印鑑登録の基準について「既成認印は正式NGと言う表記は無くても、担当者によっては登録できない」って事を書きました。
 で、そういうことを書くと、同業のはんこ屋さんが、「そもそも既成の認印で印鑑登録できるのがオカシイんや!!」って怒って言うたりするんです。

 でも、実は僕は正直言うて「別にエエんちゃう?」と思うてます。だって、大切な自分の「証」を、量産品で登録するのは自分で判断したんですからね。
 やっすい認印を重要な契約書に捺して、「みすぼらしいなぁ」って思われたり、ちょっとした衝撃で欠けてしまったり、安物だからと直ぐに紛失して困ったりするのも、自己責任やないですか
 「俺は非難されようが後ろ指差されようが、安い認印を実印代わりにするんや!」っていう覚悟を持ってるんやったら、どうぞ好きにして下さい… って思ってるんですわ。

 ってなわけで、自己責任(というか、リスクを承知)で安いはんこを大事なはんことして使うのは、個人的には別にかまわんと言うか、禁止までする必要はないって思ってるし、強制させるのは筋違いやと思ってます。
 ま、そう考える理由は他にもあって、これは明日書こうと思います。

はんこの文字の「ルール」ってどうなってんの?

はんこ登録の「ルールブック」みたいなもん…かな 昨日の記事で「文字にも色々あるんやで。学校で習った文字のルールが全てちゃうよ。」って話をしました。文字の種類によってルールが違うから、自分の知ってる文字と違う文字を見て「おかしい!」っていうたらアカンよって話ですな。

 で、勘のいい方は「って言う事は、はんこの字はそれ独特の『ルール』があるって事かな?」と思ったかもしれません。それは一応正解です。

 はんこの場合、全日本印章業組合業界が発行している「辞書」があり、これがルールとなっています。
 この辞書が各地方自治体に配られ、印鑑登録の際の参考資料となるので、「この辞書に載っていたら間違いではないのでセーフ」って言えるんです。

 ただ、辞書に載ってない字だとNGか? というと、そうとは限りません。そうなった場合は、基本的に役所の担当者の一存で決まるんでしょうが、判断に困った担当者が、はんこ屋に質問してくる場合があります。

 当店も過去に何度か、担当者が訪ねてきました。
 役所の方が尋ねてきて「この字なんですけど…合ってますか?」と印影を見せてくれた事がありました。その時は、店主は印影を見て一言「あぁ、実用印ではあんまり使わんけど、篆刻なら使いますね。間違いでは無いですよ」と答えました。実際、篆刻用の辞書を調べてみたら、しっかりとその字が載ってたのを覚えています。

 こういったケースになると、印鑑登録担当者が知識のあるはんこ屋とめぐり合えるか…という「運」の要素も絡んでくるので、やはり実用印は配られた辞書に載っている字で彫るのが無難なんでしょうね。

 あと、それぞれの自治体などに適応される独自ルール(ローカルルール?)もあります。それについては明日またお話しますね。

はんこの文字が「変」って思う人に共通する、大きな誤解

「賀正」って字やけど これ見て何か気づきました? 11月も中旬。年賀状シーズンってことで、こんな字を出してみました。

 さて、上の画像の「賀正」の文字。何か気づきましたか? 良く見ると「正」の字の書き順が違うんですよねこのページにある「正」の字の書き順をみると、違うのが分かると思います。

 これに気づいた貴方。もし、「これ間違ってるやん!」って思ったんやったら、それこそが、タイトルにある共通した「大きな誤解」なんですわ。機会が合ったら色んな年賀状を見てください「正」の字がこの書き順になってるやつ。結構あるんでっせ。

 学校で習った文字ってのは、絶対やない

 絶対やと勘違いしてる人がホント多いと思います。確かに学校では、一般的な文字についてちゃんと書ける様に厳しく指導されます。でも。それと異なる字が許されない存在かというと、そうではないんですわ。

 申請書などの書類を書くとき、用紙の端っこや記入見本に「楷書(かいしょ)で丁寧に書いてください」って書いてるのを見たこと無いですか?実はこの「楷書」ってのが、学校で習った字という意味になるんですわな。要は、学校で習ったのは「楷書」と言う字の常識なんであって、日本の全ての文字の常識ではないって事です。
 「楷書で書いてください」って注釈が入ってるのも、学校で習った字(=楷書)だけが文字の全てではないって事の証拠ともいえます。画像の「賀正」の字も楷書ではないんで、書き順が普通と違っても間違いや無いんです。大体「楷書」って言う字一つとっても、硬筆(鉛筆やボールペン)と毛筆でも書き方が違いますしねぇ。

 はんこの文字って、確かに学校で習う文字とはえらい違いがありますけど、でも「普通と違う字」ってのは意外と色々あるんやでってのは、覚えておいていただけると嬉しいです!

「はんこ」って、何で字が難しいの?

読みにくいよりも読みやすい方がエエに決まってるやん! たま~に、お客さんに聞かれるんですわ。
 「何ではんこって、読みにくい字なんですか?」って。

 大抵、こういうようなことを言われる方は、はんこが現在の読みやすい字でないことに納得がいってない方。「読みやすい方が便利で良いのに、何でこんな読みにくいのが一般的になってるんかが分からん!」って思ってるようです。

 でもね、よう考えてみてください。日本人って、英語が苦手なくせに、日本語のTシャツより英語のTシャツ来てる人のほうが多いですよね。逆に、外国人は漢字のTシャツを喜んで着たりしますよね。

 僕の予想なんですが、人間はあまり意味が理解できない言語に対する憧れみたいなものがあると思ってるんです。だから、日本人には英語が、外国人には漢字が「風格のある言葉」に見える。と言うわけです。

 そんなわけで、はんこも「すぐに読める字」より「少し読みにくい字」の方が格上に見えるんやと思います。もちろん、仕事や宅配便、回覧板とかで使うはんこは読みやすくてナンボですが、実印や銀行印は自分の大切な物に関する「証」になるもんであり、読みやすさよりは「風格」を重視した方がええ、って事やと思って下さいな!

銀行印不要で出来る銀行口座の「落とし穴」

優良ショップがお客さんにクレームを受ける… その理由が「銀行印」にあった? 「お客さんから、『クレジットカードで二重請求された!』って言われて怒られたけど、身に覚えがない…

 これ、5年ほど前に、とあるネットショップさんから聞いた話やったんです。じつはこの原因の一つに「銀行印」があったんですわ。

 このショップ運営の方。別にやましいことはなんもしてませんでした。逆に、2回に分けて商品を購入した人に「一括で買えば割引になるから、その価格に変更してあげよう」と、良心的に対応してたんですわ。

 ほな、何でこんな事になったんか? 実はお客さんのクレジットカードがデビットカードやったんです。
 クレジットカードは一般的に、決済(商品購入)して一月ほどしてから引き落とされます。しかしデビットカードは決済直後に引き落とし。そのため、「商品購入直後」に一度引き落とされ、さらにその後。ショップさんが割引した「新たな金額を設定した直後」に引き落とされたんですわ。
 ショップさんからすれば、引き落としは後日だろうから、金額修正で問題ないと思ってたのが、二重の引き落としになってしまったって訳です

 「ショップさんがデビットカードって分かってたら、対応できるやん!」ってお思いかもしれませんが、無理なんですわ。だって16桁のカード番号など、形式はクレジットカードと全く一緒。要は普通のクレジットカードと見せかけてる(言葉が悪くて関係者には申し訳無いですが)んで、区別のしようが無いんですわ。

 …で、長くなりましたが、ココからが本題。
 実はこのデビットカード、銀行印不要の銀行口座で作られるヤツなんです。

 前回、銀行印は口座の開設の時ぐらいしか使わんって書きましたが、実はもう一つありました。それがクレジットカードなどの自動引き落としの申請書類を出す時

 そ、カード会社などが「後になってお金を勝手に引き落とすけど、それを認めるよね?」っていう契約をする時に、銀行印が絶対必要になるんです。
 ネットバンクなどの「銀行印の無い口座」はそれが出来ないんで、決済直後に引き落とすデビットカードを発行してるって訳ですわ。

 少なくとも日本では「後払い」が前提のクレジットカード。ほやのに、「その場で支払い」のデビットカードが紛れ込む事で、たまにこういった変な現象が起きてしまうんですな。「銀行印不要」が、意外なところで影響を及ぼす一例として、覚えておいて下さいな!

「銀行印」がなくならない理由

銀行印も不要って? いやちょっと話をきいてぇな 今の銀行って、暗証番号だけや無く、指紋や手のひら静脈認証とかで、セキュリティはかなり上がってますよね。

 で、昨日と同じ「はんこ不要論」ですわ。
 「もう、銀行印なんて無くてええやん」って話。

 今、銀行印が無くても口座が開ける銀行もいくつかありますが、ほとんどが銀行印を必要とします。ほやけど、これは別に今までの習慣を破るのが嫌とかそういうのや無くて、銀行印が必要である理由がちゃんとあるんですわ。

 ところで、銀行印って、何のためにあると思います? お金の引き落としにはATMと暗証番号があれば出来るし、口座を作るとき以外はあまり使うイメージがありませんよね。

 そ。実はその「口座の開設」と「口座の閉鎖」っていう、銀行にとって最も重要なこの二つの行為は、確実な本人の同意を残しておきたいっていう、銀行側の思惑があるんですわ。それが大きな理由。

 と、ある人から聞いたことがあります。

 ……え?
 「銀行印不要で口座開設できる銀行があるんやから、それは理由にならんやろ!」って?

 そうですねぇ。実は僕もそう思うてたんですわ…

 で、実はもう一つ重要な理由があったんです。っていうかこっちの方が利用者としては大きな理由になりますね。

 で、それは…

 すんません!! こっから先は長くなるんで…
 次回、週明けにまたお話さしていただきます!!

「はんこはもう古い」って思ってる人はちょっとそこ座れ

「もうサインでええやんか」って言われますが 意外とはんこって便利なんでっせ いますよね、特に若い人に。「はんこ不要論」を持ってる人。

 いや、気持ちはわかります。今はデジタル全盛の時代。コンピューターの性能が上がったことではんこの偽造も可能なレベルになってきました。偽造については深刻な問題ですし、「古い」と感じることまでには否定しません。

 ほやけど、それでも言わせて欲しいんですわ「ちょっと待って!」って

 実ははんこの制度って、欧米のサインと比べたら結構シンプルなんです。
自分のはんこが捺印されてたら、それは自分が認めたった証拠。
はんこの真贋を見極めるのは偽造問題によって難しくはなりましたが、それでもサインほどじゃありません

 「サインは筆跡鑑定で見分けつくだろ!」って思われるかもしれませんが、確実に見分けるのって実は結構面倒なんです

 その証拠に、欧米では、重要な契約を行うその時に、両者が複数の弁護士を連れてくるほどなんです。
 弁護士なしに重要な契約が行えるのは、はんこ制度があるから、といってもいいんですわ。