Category Archives: はんこ屋(職人)の見極め方

「はんこ職人」の見極め方、まとめ

はんこが必要な人 はんこ屋を探している人は、まずこのページをチェックしなはれ! 先日より、「手彫り」ではんこを選ぶな! はんこ屋の「印影」で良い店かどうか判断しいや! と訴えてきた僕ですが、その方法を一通り話し終えたんで、とりあえずはまとめとして掲載しておきたいと思います


 ・そもそも、なんで「印影」で判断せなあかんのか?

 だって「手彫り」や「開運」ってのは、分かりやすいようで、実は確実な判断基準にはなりまへん。特に「手彫り」は「機械不使用」と言う意味ではないんで、人によっては「騙された!」って思うでしょう。
 ってなことで、騙されないように判断するには、一見分かりにくい「印影」で判断するのが一番なんですわ。だって職人が彫った結果、生まれるんが「印影」ですからね。


 ・ホンマに「素人」が印影で見分けつくんか?

 これは意外と難しくないんですわ。印影には見分けのつきやすいモンと、そうでないモンがあります。なんで、はんこを買おうかなと思ってる候補の店の中から、見分けのつきやすい印影を見て見極めることで、その店が買うに値するかどうかわかります。
 ちなみに、印影見本が少ない店ってのは、論外と思って下さいな。


 ・まずは「印面の『縁』」を確認しろ!

 「印影で見分けろ」って言いながらなんですが、まず最初に見るべきなのは、捺印した「印影」ではなく、はんこに彫られた「印面」になります。
縁の加工が出来ているはんこ  「印面の縁」を見て、はんこ屋として最低限の仕事をやってるかどうかは、はんこの「印面の縁」を見れば分かります。右の写真のように、印面の縁にある「墨で色づけされた部分」の外側に、うっすらと印材の色が見えたら、最低限の仕上げをしている店ってのが分かります。これをしてるかどうかではんこの欠けにくさが段違いになるんです。詳しくはこちらを見てくださいな。


 ・「篆書(てんしょ)」と言う文字の「先端」をチェック!

篆書のはんこの「筆意」の有無 右の画像のほうのように、「篆書」って言う文字の先端は独特の形状をしてます。篆書の実印の印影をもつけて、こういったものがちゃんと出来てるかどうかチェックしてください。素人との違いなど詳しくはこちら。あと、この違いが実は大きな違いだってことも説明してますんで、良かったら見てくださいな。


 ・「縦長の字」を圧縮してみろ!

「泰保」の印面 → 「泰保」の印面を縦に圧縮したもの
 個人のはんこの中には、画像のように文字を「横並び」にしたやつがあります。当然ながらそういったはんこの文字は縦長です。この画像を縦にぐしゃっと圧縮してみてください。文字の特に上半分があからさまに窮屈に見えたら、それはデザインが優れている証拠です。その理由はこちらを見て下さいな!


 ・リスクを承知で「篆書古印(てんしょこいん)で彫って」と言ってみるべし

左:篆書体の「野田」 右:篆書古印の「野田」 「篆書古印」なんて言葉、ネットで検索してもあまり出てきません。こんな言葉を言い放って、さらっと「分かりました」と言える職人は熟練と言っていいでしょう。ただし、相手が受けてしまったら後戻りは許せません。手間のかかる彫刻なんで高額の支払いは覚悟してくださいね!
 篆書古印について詳しくはこちらに書いとります! 

こんな変わった「はんこの注文」を、さらっと「できますよ」って言う職人は信頼していい

「○○」ではんこ作って って頼むと、「こいつ・・・出来る・・・!」って店員は思いますよ! はんこは「手彫り」かどうかで判断したらアカン! はんこ屋の「印影見本」で良い店かどうか判断しなはれ

 …と言うわけで紹介してきた「はんこ屋(職人)を見分ける方法」なんですが、本日お話しするので一旦終了とさしてもらいます。その代わり、今日の話は色んな意味で強烈です。なんせその道に詳しい職人しか知らない言葉の入ったセリフを言って、その反応を見るってやつですから、その店の「専門性」が一発で分かります。

 そのセリフとは、「篆書古印(てんしょこいん)ではんこをつくれますか?」
 この「篆書古印」って言葉、googleで検索してもほとんど出てきません。大半が「篆書」と「古印体」の説明に関するページになってます。
 はっきり言ってはんこ屋の8割が「何それ?」って反応やと思います。で、残り2割のうち半分以上が「知ってるけどそんなの彫れない」って答えるでしょうね。

左:篆書体の「野田」 右:篆書古印の「野田」 ちなみに、うちの店主がデザインした「篆書古印」が、上の右の印影です(左は普通の「篆書」の印影ですね)。はんこでよくある文字の「篆書」に、これまたはんこでよくある「古印体」独特の凹凸をつけたものなんですが、どうやって凹凸をつけるか、経験の無い人には難しいし、そもそも一から文字を作った事の無い素人には無理ですわな。

 …ってなわけで、はんこを見分ける方法として最強とも思えるんですが、欠点があります。だってほら…ねぇ、そこまで専門用語を強気で言いはなってるのに、「作れますよ」って答えられて「いやいらない。聞いただけ」なんていえないでしょ…
 この方を勧めた僕が睨まれても困るんで、この方法を試すつもりなら、はんこを買うつもりで挑んでくださいよ! もちろん特殊なはんこなんで、普通の倍の値段はすると思ってください。それぐらい、このはんこには価値がありますからね!

本当の「はんこ職人」かどうかは、「縦長の字」を見れば分かる

「泰保」って名前のはんこ。この縦長の字のはんこを少し工夫すれば、良し悪しが直ぐに分かります 前回のはんこ職人を見分けるポイントが良く分かった人も、そうでない人も、今日のやり方は必見です。この方法ははんこ業界では常識なんですが、素人でも分かるよう工夫した方法はまだどこにも公開されて無いと思います。

 その方法は「縦長の字を見る」です。
 上の二つのはんこ(写真ははんこ本体ですが、印影でもOK)ですが、昨日と同じく篆書(てんしょ)と言う文字。でも昨日とは違い、文字が縦長になってますわね。

 このふたつ、どっちが良いか直ぐに見分けられる人は少ないと思います。これをちょっと加工する事で、直ぐに判別できる方法をお教えしましょう。それは、こうするんですわ。


「泰保」の印面を縦に圧縮したもの

 そ、縦長のはんこ(印影)を、立てにギュギュ~っと圧縮して、逆に横長の字にするんです。
 わかりますかね? 分からない人は圧縮した画像をクリックしてください。黒い印面の「泰」って言う字の上半分が、えらい窮屈になってますよね?

 「あ! なるほど! ほな黒い方がアカンねや!」…と思った貴方! 残念!! まるっきり逆です!
 要は、縦長前提の文字を無理やり横長にするとデザインが破綻するって言う事。つまり、縦長の字のはずなのに、無理やり横長にしてもあまり破綻してない朱色の印面は、正方形の文字を単純に横長にしただけの手抜きデザインってのが分かるんです。

 で、その説明が終わったところで、もう一度、圧縮前の字を見てください。赤い印面はただ縦に間延びしただけって感じしません? それに対して黒い印面は、字の下半分が伸びやかに見えて、いわゆる「足長」の美しい文字なのが何となく分かると思います。これを専門用語で「(文字の)重心が高い」って言うんです。

 ちなみに、縦長の文字は「篆書」もしくは「印相体」ってやつで見てください。たまに認印なんかで良く見られる「古印体」ってヤツで縦長の文字見本がありますが、あの字は平べったいからこそ味があるんで、比較にはお勧めできません。

 はい、ここまで来れば、はっきり言って「はんこを見極める力量」はかなり上がってますんで、是非、いろんなはんこ屋の作品を見比べてくださいね!

はんこの「文字デザイン」は、手彫り経験の有無で大きく変わる

この二つ 大した違いがないように見えますが、実はメチャクチャでかい違いがありますねん これまで僕は散々「手彫りと言っても機械を使ってる」「手彫りと機械彫りには大した違いは無い」と言いました。

 が、「手彫りの経験が全く不要」とは言ってません
 手彫りの経験は絶対必要です。なぜなら、手彫りを経験する事によって、文字の概念が大きく変わるからなんですわ。

 実は前回お話した「文字の先端を見て職人のレベルを見極める」話が、この「手彫り」経験と大きく関係してるんです。この二つは全く違う概念でデザインされとります。

手彫り経験の有無が生む、印影デザインの大きな違い その証拠が上の画像ですわ。
素人さんははんこの文字をデザインする際に、線でデザインして、その線を太らせる(コンピューターで自動で出来ます)方法をとります。この方法だと、文字の先端は丸まってしまうだけ。

 手彫りを経験した職人は違うんですわ。師匠が書いた字を彫る際に、画像の黄色い部分を彫るんです。これによって文字は線でなく面積だという認識が出来るんです。だから前回言った篆書の筆意という、絶妙な表現をする事が出来るんです。

 この表現は、篆書の「文字の先端」が一番分かりやすいのですが、他の文字でもいろんな表現の幅を生み出す事になります。だからこそ、お勧めしたい「職人を見分けるポイント」なんですわ。

はんこ職人のレベルは、印影の「ココ」を見れば分かる

上と下、どっちがエエかなんて分かりにくいですよね でも実はあるところを拡大してみれば直ぐに分かるんです 昨日ははんこの縁で素人か良心的なはんこ屋か見分ける方法を伝授しましたが、これはほんの序の口。昨日は出来ていて当たり前の項目です。まともな手彫り経験を積んでない人でもやる加工ですからね。
 本日は少しレベルの高い話をしますわ。

 まず、大前提なんですが、職人がこれまで彫った作品の見本(印影)が必要になります。基本的に今後の職人の見分け方には、その職人が作った「印影」が必要なんです。何度も前から言うてますように、印影こそがはんこ職人を見極める結果ですからね。

 で、見分け方ですが、画像の通り。
 まずは職人の印影見本の中で「篆書(てんしょ)」ってやつを探して下さい。出来れば実印の見本がいいですね。
篆書のはんこの「筆意」の有無 その印影の中で、文字の先端となる部分を見て、右下のように丸ゴシックのように丸くなっていたらダメと言わざるを得ません。職人であれば右上のように文字の先端が独特の形状をしてるんですわ。
 
 これ、専門用語で「筆意」って言うんですが、「篆書はこういうもんだ」って考えでかまいません。とにかく、はんこ職人にとってこの表現は当然なので、出来ているかをチェックすると、ちゃんとした職人が彫っているのかどうか分かりますよ。

 え? 「今は文字の先端が縁にひっつける開運の字体が主流だし、この見分け方は意味が無い」って?
 そんな事無いですよ。その理由は明日お話しましょう。

こんな「はんこ」は実印・銀行印にしたらアカン

はんこのメチャメチャ最初の見分けポイントは、印面の「縁」の部分! 矢印のところを良く見てや! はい皆さん注目! あ 特にはんこは安くてもいいって人! これを見ないと多分後悔しまっせ! はんこの最低限の質はココで決まります。

 実印や銀行印って、いくら安くても欠けてしもうたら意味無いですよね。で、はんこって一番欠けやすいんは「縁」の部分。
 大抵の方は、はんこの縁の欠けやすさははんこの素材で決まるって思ってるんですが、違います! むしろ「彫刻」が欠けにくさを決めるんです。


はんこの「縁」の断面図 上の画像を見たら分かりますよね。同じ材質でも縁が太い方が欠けにくいって事です。だから「a」のはんこではなく「c」のように縁を仕上げしてるはんこを選んでください。

 

縁の太さが一定じゃないはんこ
 ちなみに「b」のはんこはダメなの? って思うかもしれませんが、「c」のように最低限の一手間をかけないってのは、はっきり言って手抜き! そういったはんこ屋は右の写真の方に部分的に縁が細いはんこを出してくる可能性があるので注意してくださいね!

縁の加工が出来ているはんこ ちゃんと縁の仕上げをしてるかどうかは、はんこ本体の印面を見れば直ぐに分かります、写真のように、縁の周りの更に外側に「はんこの材料の色」が見えたら大丈夫です!