「印章(印鑑)10年保証」事前に理解しておくべき注意点

「印章(印鑑)10年保証」事前に理解しておくべき注意点

 ネットで印章(当店では「印鑑」の事を正式名の「印章」と読んでいます)を注文する際に「10年保証で安心」などという言葉をよく目にすると思います。店によっては20年以上の保証としているところもありました。
 消費者としてこういった保証は「ないよりあった方が安心」だとは思いますが、これらの保証は利用の際に注意しておくべき点がいくつか存在します。それら印章保証制度の注意点を事前に把握していただくことで、もしもの時の心構えを持っていただくことを目的に情報公開いたします。

※全ての保証サービスをチェック・検証したわけではないので、例外がある可能性はあります。その点ご了承ください

注意点1:保証は「破損等による彫り直し」のみ。「紛失」「盗難」は対象外
破損は保証対象ですが、紛失は対象外です 例外はあるかもしれませんが、ほとんどの保証サービス店が注意点として「破損したもの、捺印出来ないものは彫り直します」と書かれており、盗難や紛失など、印章本体をなくしてしまったものは対象外となります(後述しますが盗難が対象となる保証サービスはあります)。
 確かに紛失まで対象となると、「素材を一から店が用意しないといけない」「客が紛失と偽ってはんこを二つ持つことができる」という点があるので、この条件となっているのはやむなしですね。
 ただ、印章店で店員をしているとわかるのですが、「はんこが欠けてしまった」というご相談とほぼ同数ぐらいのイメージで「はんこをなくしてしまった」というご相談を多数うけます。破損等は対象なのでその点は安心ですが、「100%安心」ではないという事です。
注意点2:同じはんこは作れない
彫り直しすると別の印になります 「印章は唯一無二」という考えの方からすれば当然ですが、深く考えてない方はひょっとすると「10年保証は買ったものと同じはんこを彫ってくれる」と考えているかも知れません。しかし、同じはんこの彫刻はできません。分からない程度の複製は理論上可能ですが、非常に手間がかかります。そしてそれ以上に対応するのが難しい法的な理由があるのです。
 ですので、実印や銀行印で保証サービスを利用する場合は、別のハンコとなるので再登録の手間が必要になるとお考え下さい。
注意点3:日数がかかる
 そしてこれが結構大きな問題になると思います。お手元の破損した印章を店舗に送り、彫り直して送り返してもらうまで待たないといけません。「迅速に対応します」と記載されている店舗もありますが、私個人の本心として「彫っても入金されない保証サービスの彫刻と、売上につながる新規彫刻のどちらを優先するか…」と思うと、最優先対応を期待するのは酷だと思ってしまいます。
 そして重要なのが、保証サービスが必要になるときは「今はんこを捺す必要があるとき」が多いのです。当店にもお客様から「はんこが欠けてしまったから、新しく作りたい」というご依頼を受けますが、感覚的に半数以上が「これから使うので急いでほしい」とご希望されます。残念ながら、はんこを落とすなどしてその際に破損に気づくより、次に必要となった時に初めてはんこをチェックして、印面の破損等に気づくことが多いようです。
 縁が欠けている程度の状態なら、仕方なく欠けたまま捺印してその後保証サービスを利用する手がありますが、「何とかしのげた。また今度保証を申請しよう」として、そのまま忘れてしまうケースも考えられます。
その他注意点
 細かい注意点になりますが、完全手彫りの印章の場合は「手仕上げ(彫刻機使用)」による彫り直しになることが多いようです。また、店によってはチタンなどの特殊な素材の場合有料になるばあいもあるとか。
 また当然ではありますが、下記の例外を除き、注文した店舗でしか保証サービスは利用できませんので、万一注文されたショップサイトが閉鎖となった場合は利用不可になると考えられます。
例外的なサービス
 上記のように、意外と注意すべき点のある10年保証ですが、少し条件が異なる保証サービスもあります。それが公益社団法人 全日本印章業協会の「全国統一 印章保証制度(5年)」です。
 保証期間は5年となりますが、盗難も対象とされ、また協会加盟店であれば対応できますので、協会加盟の他店に持ち込んでサービスを利用する事も可能なようです。(当店は都合により非加盟店ですので対応できません。ご了承ください)
 加盟店は多数あるため、「ウチはそんなのやってない」と保証サービスをつけられなかったり、保証書をもっていっても断られるケースがあるかもしれませんので、事前に検討する加盟店への問い合わせをお勧めします。また「紛失」は対象外のようですので、盗難による保証利用の際は盗難届が受理されている証明が必要になるのではないかと考えられます。
よくあるご質問に回答いたします
どうして同じはんこは作れないの? 機械を使えば可能でしょ?
 確かに理論上は可能ですが、

  • 精密ロボット彫刻機で彫刻したはんこである
  • 過去に彫刻したデータが店舗に保存されている
  • 手仕上げがほとんどない(仕上げすると印影が変わるため)

という条件がクリアされてないと、複製に手間がかかります。
そしてそれ以上に「他人の印章の複製を禁じる」という法律が大きなハードルになるのです。「他人のじゃなくて私のだよ!」とお思いでしょうが、身分証のコピーを添えて「私が本人で複製を依頼します」という、法的にクリアできる書類を用意しないと、店側が罰せられることになります。そんなリスクを背負う店はまず存在しない、というのが現状なのです。

欠けた印面を補修することはできないの?
縁が補修できたとしても、加工時に印面・印影が変わります これも不可能です。欠けた部分を埋めるというのが非現実的ですし、万一埋めることが出来たとしても、右図のように捺印するには印面を少し削る必要があり、それにより印影が変わってしまうからです。

 

おたくの店(綺麗印影)ではどんな保証サービスをしているの?
 当店ではサイト立ち上げ当初は保証サービスを実施しておりましたが、数年後に廃止いたしました。理由としては職人の高品質な印章を自負しており、「破損しても安心」ではなく「破損させたくない・紛失したくない」と思われるような印章の提供に力を入れるべき、と判断したからです。
当店では

  • 全商品に紙製化粧箱をつけることで、保管場所が目立ち紛失の可能性を減らす
    印章の保管を分かりやすくする貼箱
  • 印章ケースを開ける時の「星印の目印」を貼り、開け方の解説書をつけることで、ケースを開けたときにうっかり印章を落として破損してしまうリスクを減らす。
    印章ケースに貼った、目印のシール

などの対応で、破損や紛失が起きないよう努力しております。