Monthly Archives: October 2012

「印鑑登録」の本当の意味

 ほとんどの方にとってはどうでもいいことなんでしょうが…
「印鑑」とは「はんこ本体」を意味する、というのは誤りです

「印鑑」は、ハンコ本体ではなく、印影を登録する図録の事です

 右のとおり、はんこ本体は「印章」が正しい言葉であり、「印鑑」は、印影を登録する(公式な)図録の事に成ります。(「印鑑」の「鑑」は、「図鑑」の「鑑」であることを考えると、しっくりくると思います)

 まあ私個人は、一般の方が誤って「印鑑」という言葉を使われるのは一向に構わないのですが、プロである業界人が「印鑑あります!!」って誤って言葉を使うのはどうかと思っています…

 ところで、なぜ「印鑑」という言葉を一般の方が誤って使うようになったのか?
それは…

 間違いなく役所にある「印鑑登録」と言う言葉が原因ですね。
これを、「印鑑登録する事」と思い込むから、「印鑑=はんこ本体」と思う人が多いんです。

でも実は、「印鑑登録」というのは、

印鑑登録は、印鑑「を」登録する、ではなく、印鑑「に」(印影を)登録する、という意味です

 そう「印鑑(役所にある印影の一覧)(自分のはんこの印影を)登録するって言う意味なんです。

 繰り返し申し上げますが、「印鑑」という言葉遣いはどうされても結構です。ただ、こういった背景を知っていただくと、印章のプロとしてはうれしく思います。

はんこ職人が「機械」で彫ると、手彫りはんこと同じ出来になるんでっせ

機械を使っても使わんでも、はんこを作る「最初」と「最後」がしっかりしてたら、出来るモンはほぼ同じレベルなんやで!
 「はんこの『手彫り』は機械不使用って意味やない」って記事を見て、納得してない方はまだおられるとちゃいますか?
 まあ上の画像を見て下さい。左が完全手彫り。右が手彫りできる職人が機械を使ったときの彫刻ですわ。

 はんこを彫る手順って、文字デザインを決める「字入れ」、多少雑に彫る「粗彫り」、そして最後の「仕上げ」っていう工程に分かれるんです。
 で、機械彫りのほうを見てください。自分で書いた字をコンピューターに読み込ませて、それを機械彫刻してます。はんこのデザインは手書きやからオリジナルだし、最後の仕上げもちゃんとやってます。って事は、この機械彫刻は完全手彫りとほとんど変わらないんです
 事実、左右のはんこは両方とも僕がデザインしたんですが、あまり大きな違いは無いでしょ?

 え? まだ納得できない? ならもう一つ重大な事を言いましょか。完全手彫りの場合、真ん中の段階「粗彫り」を弟子(しかも入門したて)にやらせる場合があります。多少ミスしても仕上げでカバーできる「粗彫り」の工程は、他の工程に比べてさほど重要じゃないからです。

 そ、「粗彫り」を「弟子」にさせるか「機械」にさせるかの違いしかないので、職人にとってはそれを区別する意味が全く無いんですわ。

 っつー訳でご理解いただけましたか? はんこの「手彫り」と「機械彫り」が、実は大した差がない事もあるってことを。
 ちなみに当店はこのどちらでもなく、このような方法で彫刻しとります

 明日は視点を変えて、同じ機械彫りでも職人と素人ではどう違うかってのをお話します。

「素人が はんこを見分けるのは無理」って決め付けたらアカンで

「手彫りで判断で気品と困る!」って言いはりますけど、それって「自分ではんこの良し悪しが区別できへん」って決め付け鶴だけでっせ手彫りはんこ=機械不使用ではない」とか、「職人ははんこを見たらその出来が分かるから、手彫りかどうかは興味がない」ってのを見て、「ほな、どないせえっちゅーねん!」と思っていませんか?

 落ち着いてください。貴方がそう思ってるのは、「自分にははんこの良し悪しが見分けられない」って言う固定観念を持ってるからなんですよ!

 前回も言うた様に、はんこの職人は「手彫り」か「機械」かではなく、彫った結果生まれた「印影」の出来が良いか悪いかで全てを判断します
 ほな、素人でも「印影の良し悪し」を見分ける事が可能なんか?
 これは、発想をちょっと変えたら「可能」になるんです!

 例えば、今僕が一つのはんこを出して「このはんこの出来がエエか悪いか」なら、難しいと思います。
 何でかって言うと、はんこには見分けのつきやすいモノと、そうでないモノがあるからです。

 そやけど、それは「発想」を変えたら大した問題やありません。今見つけるべきなんは「ちゃんとしたはんこを彫れる店(職人)かどうか」って事。なら、そのはんこ屋(職人)の作品見本の中から、見分けのつきやすいものをみつけて判断すればいいんですわ。

 そんなわけで、今後、その方法を紹介していきますが、うちのショッピングサイトでは公開済みなんで、気の早い方はそっちをみてくださいな。

はんこの「手彫り」に基準が無い理由

「なんで業界で『手彫り』の基準を決めへんねや!」…とお怒りの気持ちは分かるんですが 理由があるんです はんこの「手彫り」は「機械不使用」ではないっていうのを知って、上のようにお怒りになってるかもしれない貴方へ。

 なんで「手彫り=機械不使用」って基準にしないのかといえば、はんこ職人のほとんどが彫刻機を使ってるからですわ。

 「そんなん業界の自分勝手な都合に過ぎひんやん!」ってお思いですよね? でもちょっと待ってくださいな。

 何で、ほとんどの職人が機械を使ってるんか? それは機械を使ったほうが効率がエエってのもあるんですが、一番大きい理由は「機械を使ってもモノは悪くならない」からです。先日「機械を全く使わない職人はホント少ない」って書きましたが、あれは機械を使うのが苦手な人ばかりで、機械を使うのが苦にならない職人は、腕が良くても機械を導入するのが普通なんですわ。

 それともう一つ。
職人は「良いはんこと悪いはんこ」の区別が簡単につけられます
職人に言わせれば、手彫りか機械かっていう「過程」よりも、彫った結果出来上がった「結果」の方が重要って事ですわ。

 そんなわけで、機械云々については業界で明確な基準がついてないんですが、「ほな、どないしたらエエねん!」ってなりますよね。
 すいません、明日の内容をご期待下さい!

「手彫りはんこ は手間暇かけてる」ってのは、ある意味「幻想」

手間暇? 言っときますけど一流の職人はメチャクチャ彫るの早いですよ しかも上手やし
 もし、「手彫りのはんこは手間暇かけてるからいい」と思ってるのなら、ちょっと待ってください。

 確かに、機械を使ったほうがいいはんこが効率よく出来ます。これは事実です。でも、手彫りが「手間暇かけてる」って言うのは、必ずしもそうは言えません

 だって皆さん「手間暇」って、何日とか、5時間以上とか、そんな感じに思ってますよね?

 言っときますけど、法人印ならともかく、個人の実印・銀行印なら大抵2時間もかけませんよ。1時間なら流石に満足良く出来は…って言うレベルなんです。熟練の職人は。

 っていうか、彫るのに慣れる事で、「綺麗に早く彫れる」から、一流の職人なんですわ。

 考えてみてください。発想を逆にして「彫るのが下手な人ほど完成に手間取る」って考えると、メチャクチャしっくり来るでしょ?

 大抵皆さん「良いはんこは手間暇かけて時間がかかるし、今すぐ必要な自分には無理」とか思ったりするみたいです。

 違います。短時間で良いはんこを作れるんが職人なんです
 (もちろん、注文が殺到してて行列ができる職人だったら別ですけどね…)

 この辺はうちのショッピングサイトにも同様のことを書いてるページがあるんで、是非見てくださいな。

「手彫りのはんこは複製できない」は、今や「ウソ」

手彫りはんこだろうが、機械彫刻のはんこだろうが、複製されるリスクはほとんど一緒!
 「手彫り=機械不使用」ではない、ってことで、憤慨している貴方

ほな、なんで「手彫り」がエエと思ってるんですか

 これは調べてないんでわかんないんですが、「やっぱりはんこは手彫り」って思ってる人の大半が、その理由を「機械で彫ったら同じ物がたくさん出来るから」「手彫りのほうが手間ひまかけてるから」と思ってるんやないかと想像してます。

 断言しましょか。そのどっちも間違ってます

 まず、今日は「機械で彫ったら同じ物がたくさん出来る」について反論しましょか。
 実は「手彫りなら同じ物が彫れない」が、残念ながら間違ってるんですわ。
 現在の彫刻機はデータどおりに正確に彫刻できるので、綺麗に捺印された印影さえあれば、それをスキャンする事でほとんど分からない程度に同じ物が彫刻できます

 それに、「機械彫りなら複製可能」というのも、その最新式彫刻機で「(はんこを彫る)データが残って」いて、「意図的に彫刻開始」しない限り、同じようなはんこは出来ません。

 大体、「機械を使った手彫りはんこ」が存在する以上、手彫りか否かで職人(はんこ屋)を見極めるんはナンセンスです。それなら、信頼できる職人を自分の目で見極める方がいいですね

 ちなみに、当店では彫刻機を使ってはんこを彫っていて、データも保存してますが、そのデータは厳重に保管してます。「田中」や「鈴木」なんかのはんこはしょっちゅう注文が入るんで、これまでと違ったデザインをするための確認用に使うことが多いですわ。

「手彫り」印章(印鑑)の事実を徹底解説 知られざる実態からQ&Aまで

手彫り=機械不使用『とは限りません』

 はんこの「手彫り」ついて、当サイトは立ち上げ当初から警鐘を鳴らしており、店主の野田守拙も「「手彫り」をお求めの方にお伝えする『重要な事実』」というページを公開しております。
 私が過去に公開したこのページも「印鑑 手彫り 嘘」という検索で、かなり上位に表示されており、そこそこの方が見られているようなので、より印章の「手彫り」について理解していただける様、当ページの内容をより詳しく表記し、大幅にリニューアルして公開いたします。

 先に申しますが、当店店主「野田守拙」は熟練職人ですが、印章彫刻に彫刻機を使用しております。このページには「他店の手彫りじゃなく当店を選べ」という意図はありません。どちらかというと「手彫りに固執しすぎて失敗するお客様を減らしたい」という思いで情報公開しております。
 また、このページは情報提供により、ご自身である程度見極めをつけてもらうためのページです。他店に「手彫りの実態というページを見ましたが、おたくは本当に手彫りですが?」と質問するのはやめてください。そのお店の迷惑ですし、言質を取ることは本質的な解決にはなりません。
もっとも伝えたい重要なこと
 これはリニューアル前にも書いておりましたが、トップに表示されてる画像の通り
「手彫り」=「機械を使ってない」という意味ではありません
要はいくら彫刻機を使っても、部分的に手で彫れば、「手彫りであることは間違いない」という事です。
 ですので、「手彫り」と言いつつも、実は彫刻機を使っている、というケースがあります。
 「理論上ありえる」なんてもんじゃありません。結構見受けられます。

※「詐欺じゃないのか」「業界で基準はないのか」などのご質問については後述します。

実態はどうなのか
 気になる方は、一度「印鑑 手彫り」で検索してみてください。

「印鑑 手彫り」でgoogle検索
「印鑑 手彫り」でYahoo検索

 出てきたサイトの中に、「完全手彫り」と記載されたサイトが見受けられます。こういうサイトは偽りでない限り彫刻機は使ってないでしょう。

※「完全手彫り」「彫刻機使用」と2段階の彫り方・価格設定をされている店もあるので、サイトの商品すべてが完全手彫りではない場合もあります。

 その一方で、「手彫り仕上げ」と記載してるサイトもあると思いますが、そのサイトは、十中八九「彫刻機」を使用しています
 実は「手仕上げ」という言葉は、印章業界が「彫刻機使用なので『手彫り』とは違うけど、まともに仕上げしてない安物よりは良い品質のもの」と主張するために独自に定めた言葉になるのです。
 何故「手仕上げ」が「手彫り仕上げ」になっているのか、私にははっきりと分かりません。ただ、機械不使用であるなら前述の通り「完全手彫り」と謳えばいいので、彫刻機を使っていると考えるのが自然と言えます。

混乱を招く原因は
一言で言うなら、お客様と職人で認識が大きく異なるからでしょう。

「手彫り」に関する、売り手と買い手の認識の違い

買い手(お客様)

  • 「手彫り」は手間暇かけた良いもの   
  • 機械を使ったはんこは複製される 
  • 機械彫りのはんこは手抜き           
  • いいはんこを手っ取り早く見分けたい  
  • 「手彫り」の肩書があれば、手っ取り早く良いものと理解できる      

売り手(職人)

  • 技術があれば手彫りでも機械彫りでも良いもの
  • 手彫りでも機械彫りでも複製は可能
  • 道具をうまく使って効率よく良いものを彫るのが職人
  • 職人の出来の良さを手っ取り早く伝えたい
  • 品質の良さを手っ取り早く伝えるために「手彫り」「手仕上げ」と伝えたい

 上記のように、お客様とはんこ職人で大きな認識の違いがあり、その差が埋まらないのが原因だと、私は思っています。
お客様側からすると、売り手(職人)側の発想が不可解でしょうが、長くなるので後ほど解説いたします。

「手彫り」にも種類がある?
 「部分的に手で彫ったものでも『手彫り』」ということは、「どの部分を彫るか」で、いくつも種類が存在することになります。
 ここでは手彫りの種類について解説いたします。主に考えられる種類として6種類、下記の通り紹介いたします。

分類

字入れ

印章彫刻の字入れ工程

完成品となる印影を印面や紙・機械に書き込む

粗彫り

印章彫刻の粗彫り工程

字入れした印影原稿をもとに、粗く彫刻する

仕上げ等

印章彫刻の仕上げ工程

粗彫りの後さらに仕上げて鮮明な印影にする他、場合によって底さらえを行う


完全
手彫り
A1 熟練職人(手書き) 熟練職人(手彫り) 熟練職人(手仕上げ)
A2 熟練職人(手書き) 見習い(手彫り) 熟練職人(手仕上げ)
A3 見習い(手書き) 見習い(手彫り) 見習い(手仕上げ)

彫刻機
使用
B1 熟練職人(手書き) アナログ彫刻機 (熟練)職人(手仕上げ)
B2 (熟練)職人(手書き) ロボット彫刻機 (熟練)職人(手仕上げ・底さらえ)
B3 素人(既成文字) ロボット彫刻機 素人(底さらえのみ)

※表にはわかりやすく色分けしておりますが「手彫りのグレード」「品質の高さ」を分類するものではありません。

 上記の表を見たらわかりますが、実は彫刻機を全く使用しない「完全手彫り」でも、細かく3種類に分かれます

「A1」:全て熟練職人が手彫り彫刻
 最初の字入れから最後の仕上げまで、全て熟練職人が行うもので、出来は職人の熟練度合いによりますが「完全手彫り」に相応しいのは間違いありません。
「A2」:「粗彫り」は見習いが手彫り彫刻
手彫りの粗彫り工程 途中の工程である「粗彫り」を、弟子などの見習いにやらせる場合です。熟練職人が印面に書いた文字を見習いが彫り、粗彫りの出来が多少悪くても最後の仕上げで職人がカバーする、という方式で、これも「完全手彫り」に相応しいものです。また「弟子」「見習い」と言っても、独立直前の優秀な職人である場合もあります。
「A3」:見習い(実績の浅い職人)が全て手彫り彫刻
 最初から最後まで見習い、もしくは実績の浅い職人が彫刻するタイプです。
 完全手彫りに間違いはないですが、「一応彫ることができる」人たちによるものだと、出来が良くない場合があります。
 実際にこのような店舗を見たことはないのですが、「そうかも知れない」と感じる店はあります。
 完全手彫りの「A1」「A2」であれば、熟練職人が手掛けているので職人の紹介があるはずなのですが、その職人の名前記載が見当たらないサイトがあるのです。サイトに職人名のないところは「特定の人以外が彫っている」という事で、このA3に分類する可能性が高いです(特定の職人が彫っているかもしれませんし、不特定の職人でも出来の良い手彫りである場合もあります)。

次に、彫刻機を使用するタイプの分類です。

「B1」:職人がアナログ彫刻機で粗彫り
初期の光電式彫刻機 今はごく少数となりましたが、年季のある職人が「光電式」というアナログ彫刻機を用いて仕上げる方法です。透明フィルムに朱墨で印影を手書きし、機械が「フィルム」と「はんこ」をそれぞれ渦巻き状に回転しながら、フィルムの原稿に連動して針を上げ下げすることで彫ります。
 この光電式彫刻機は職人がちゃんと仕上げしないとまともな作品とならないものでしたが、当初はそれでも「粗彫りを任せている間、他のことができる」と重宝されました。また、「職人しか扱えない」こと、そして「見習い弟子に粗彫りさせているのと変わらない」という認識だったため、印章業界では「出彫りも彫刻機使用も同じ」という考えになっているのです。
「B2」:職人がロボット彫刻機を用いて字入れ・粗彫り、最後に底さらえ
手書き印影をスキャンしロボット彫刻 この分類は現在の職人の大半の彫刻方法に、追加で手を入れたものです。紙に手書きで印影を書き、それをコンピューターに取り込んで精度の高いロボット彫刻機に彫刻させ、その後手仕上げ彫刻します。

機械彫りを手彫りに見せる「底さらえ」 なお、最後(一番右)に記載の「底さらえ」とは、右写真の赤枠部分のように、最後にもう一度粗彫りと同じ工程を行って印面の底を手彫りに見せる工程です。「手彫り印章は彫って凹んだ部分の底が波うっている」というのが有名ですが、「底さらえ」を行う事で手彫りに見せることができます
 この「底さらえ」を行わない店舗は「手書きはんこ」「手仕上げ印章」などと書いている店が多いようです。
 手書き印影を意図的に粗く書いて仕上げを丁寧にする職人や、しっかりと手書きして最小限に仕上げるなど、職人によって手法は違いますが、しっかりした技量の職人が手掛けるのであれば「唯一無二」で立派な作品と言えます。

「B3」:素人ががロボット彫刻機を用いて字入れ・粗彫り、最後に底さらえ
コンピュータ内蔵のフォント文字でロボット彫刻 印章文字を書くことができない素人レベルの方が、コンピューターに内蔵する既成の印章文字を並べて加工し、彫刻したものです。右の画像を、同じ名前である「B2」の作品とよく見比べると、こちらの方が線が単調で、直角部分などが角ばっているのがわかると思います。
 コンピューター彫刻機は精度が高いので手仕上げする必要はなく、底さらえさえ行えば「手彫り」は嘘ではないし、一般の方には見分けがつきません。ただ既成フォントは種類が少なくクオリティも高くないので、しっかりした職人が見るとすぐに「彫刻機を使っているな」とわかります。また、同名のはんこを同じ彫刻機の別の店で彫った場合、似通った印影作品になる(字の並べ方や大きさのバランスで多少の違いはあるでしょうが)のもデメリットです。同じ職人が彫れば似通るのは仕方ないですが、全く異なる店でそうなってしまうのはある意味悲しいですよね…。
総括
 上記の説明を読まれたら気づかれたかもしれませんが、6種類の手彫りのタイプのうち、ほとんどが「熟練度合いで」とか、「出来が良い場合もあります」などと記載しています。
 結局は彫刻の出来・品質は手彫りかどうかというより、職人の技量で「印章の良し悪し」が決まるのです。
 はっきり申します。「手彫り」などの肩書は、手っ取り早く判別するものと見せかけて、売り手が手っ取り早く都合の良いものを売らせるための言葉にもなるのです。
 実際「A3」や「B3」の中には「手彫り」と謳いつつも品質の悪いものがあると言われ、当店のお客様から「過去に手彫りというサイトで印鑑を買いましたが、出来にがっかりしました」という声を何回か聞いております。
ここまでの長文をお読みいただいたのでしたら、是非とも肩書に頼らない本質の良さについて、少しでもご理解いただけると幸いです。
よくあるご質問に回答いたします
「手彫り」と謳ってるのに彫刻機を使ってるなんて、詐欺じゃないの?
 最初に申しました通り、彫刻の段階で手作業による彫刻を行っている以上は、詐欺とまでは言えないと思います。ただ当店としては誤解を招く表現は避けるべきと思っています。
何故、はんこ業界で「手彫り=機械不使用」と定めないの?
 印章業界(職人)の認識として「手彫りだろうが彫刻機を使おうが、職人の技が良ければ良いものができる」と考えているからです。また、完全手彫りでも途中の「粗彫り」工程は見習い弟子に彫らせることが多いので、「他に任せるという意味では人も機械も同じ」という認識もあるかもしれません。
彫刻機を使うと複製されるから止めるべきなのに、何故使い続けるの?
 確かに精密ロボット彫刻機を用いることで複製は可能ですが、それは理論上可能なだけであって、実際には行いません。大抵の職人は一度彫刻した印影データは削除しますし、保存していても「過去に同じ印影にのものがないか確認する」ためです。そもそも同じ印影で彫刻すると「他人の印章の複製」となり、法律で禁止されています

印影見本「首都」

 彫刻機を用いている当店でも、同名の印影は何度もおつくりしていますが、すべて異なるデザインです。例えば右にある「首都」という名前の印影(時間経過で変化します)は6種類ありますが、すべて異なるデザインになっております。
 むしろ、手彫りであったとしても、鮮明に捺印された印影があれば複製されてしまうので、複製についてはそちらを警戒すべきです。

彫刻機を使って彫るのって「手抜き」でずるいんじゃないの?
 効率よく良いものを作るのは職人の技量であり、手抜きでもずるくもありません
 そもそも「手間暇かける」という考えに大きな誤解があります。もし1万円の印章に1週間かけて彫るとした場合、本当に1週間彫り続けているなら、その間他の仕事ができなくなるので、月に4万ちょっとの売上しか立てられなくなります。印章職人が生きてゆくには基本的に1日10本程度彫刻する能力が必要で、その結果彫刻機を検討するのはごくごく自然なことだと言えます。
「手仕上げ」って謳いながら彫刻機を使うなんて、混乱を招くだけじゃない?
 お客様の立場からすれば、おっしゃる通りだと思います。実際、国から(確か消費者庁だったと思うのですが、資料が見当たりませんでした)そういった表現を止めるよう業界に通達が来た、という話を聞いた事があります。
 業界として、彫刻機使用の印章を「手彫り」と謳うのはさすがにやめたいが、安物の機械彫りと同一視されるのも避けたい、ということで、「手仕上げ」という言葉が生まれたのだと思います。
おたくの店(綺麗印影)は、手彫りの6分類のうちどれに当てはまるの?
 当店は彫刻機での粗彫りを行っており「手彫り」とは謳わないようにしておりますので、上記6分類には当てはまりません。近いものは「B2」(手書きで字入れして彫刻機で荒彫りし、手仕上げ)ですが、字入れは手書きではなく、店主の野田守拙が1から作成した数万の文字(同じ字体・同じ文字でも複数種類あります)を組み合わせて作っております。また最後の「底さらえ」も行っておりません。
「坂本龍馬」の実印見本 ご注文ごとにデザインを変更しておりますので、同名の場合デザインが似通ることはあっても同一にはなりません(右の「坂本龍馬」の印影は最も極端な例ですが)し、50年以上の経験で印影を作成しておりますので、品質はよいものと自負しております。
「手彫り」という肩書に頼らない見分け方ってあるの?
 確かに難しくはありますが、店舗にある作品見本を色々見比べることである程度の見分けはつくと考えております。一例として当店サイトの「貴方も出来る、『印章職人を見極める』方法」というページをご参考にしていただけたら幸いです。

開運はんこの意外なメリット

縁起のいい「印相」ってはんこは、縁が欠けにくい場所が多いって言うメリットがありますねん
 はんこ屋である当店が、縁起がいい「印相」っていうのを、邪道と知りつつも薦めてるのは「縁起」とは別の理由が大きかったりします

 ひとつは上の画像にあるとおり、縁と文字が接する部分は欠けにくくなると言うこと。縁と文字が接する場所が多いとそれだけかけにくい部分が増えますんでね。
 これは実はかなりデカイと思ってます。そのうち書くと思いますが、職人が彫ったはんこは縁が欠けにくいんです。でも、それでもやっぱり落としたときの衝撃が悪かったら欠けてしまいますわ。

 ほやけど、縁が文字の線と繋がってたら、その部分は間違いなく頑丈で欠けにくい。ほしたらそのふちと線が繋がってる部分が多いほうが、欠けにくくなる。すなわち持つ人にとってええはんこって事ですわね。

 あとは、一般論として印相の文字の方がデザインに手作業となる部分が多いからってのもあります。先ほど言った「文字の線と縁が繋がってる」のは、デザイン上、手作業で行うか無いんです。例えコンピューターでデザインするとしても、全自動では出来ず、手作業で一つずつ繋げていかないとアカンのです。

 ということは、機械による自動化が多くを占める世の中にあって、ある程度手作業が入るこのやり方の方がいいかも知れんって事ですわ。

 まあでも本来は、手作業云々より、自分の「証」となる印影がどんだけしっかりデザインできてるか、やと思います。

 その辺についてはまたいずれ、お話したいと思います。
 明日以降は、すんませんが開運とはちょっと離れた話をしますんで。

はんこで「験担ぎ(げんかつぎ)」ってアリ? ナシ?

こいつ「開運はんこ」に否定的やな… とお思いかもしれませんが、「験担ぎ(げんかつぎ)」はやってます 散々、開運はんこを「やりすぎ」「邪道」と言うといて何ですが…
「験担ぎ」するのまで「ナシ」ってのはどうか…と思うてたりしてます。

 この辺は正直、葛藤もありますね。

 確かに「開運商法」がまかり通ってる中、そういうのは慎むのが理想かもしれません。
 ただ、さすがに「開運」より軽めの験担ぎまで許さないって言うのは、お客様の需要に背きすぎかという気がするんですよね。

 当店では例えば「大安吉日に納品して欲しい」などの「験担ぎ」はお受けしてます。
 開運で文字をあれこれ変えろって言う要望は、文字そのものの意味や姿をまるっきり変えてしまって逆効果になりかねないですが、納品日の指定は商品の出来に左右する事は無いんで、デメリットは無いし、これは要望にこたえたいと思っています。

 それと、縁起重視の「印相」には別のメリットもありんです。
 それについては次回書きますわ。

開運はんこで「鑑定してくれ」ってのは超失礼なんよ

開運の鑑定士の人に「はんこはこうやって作れ」って言われても… 正直「あんた誰?」って感じになるんです 良くお客さんに聞かれるるのが「開運の鑑定をしてくれますか?」っての。
 当店はこう聞かれると「当店ならではの手法で印影をおつくりしますんで、鑑定士への依頼は行いません」って答えてます。

 でも、当ブログを読んでいただいている人は「え?」って思うかもしれませんね。
 「前回、プロはお客さんの要望に応えるって言うたやん! それと矛盾するやろ!」って

 でも、矛盾しませんねん。
 だって、「鑑定しろ」っていうのはすなわち、自分でもお客さんでもない、第三者である鑑定士の言うことに従って彫れって事ですから。
 
 お客さん自身が細かく接点の数とかを指定する場合は、極力従いますよ。(もちろん、字がグチャグチャになってまうほどの要望はお断りしてますが)
 でも「鑑定しろ」って言うことは、自分で調べることもせず、なおかつ彫る職人にすべてを任せず、その癖「開運の保障」を求めてるわけです。

 レストランに行って、シェフに「料理評論家の○○が、△△の料理には□□の食材が良いって言ってたから、それで作って」って言いますか??
 はんこで「鑑定しろ」ってのは、それと全く同じで、失礼かつ場違いで恥ずかしい要求だと言う事を理解してくださいな。

 いかに失礼かつ自分勝手なことか、ってわかりますよね?
 そんなことがまかり通るのが、人生にとって逆効果とさえ思うんですわ。

「開運はんこ」を彫る人は二種類に分かれる

開運はんこを彫る職人 どっち?
これは単刀直入に書きましょう
高く売れるから彫る」と言う人と「プロとしてお客様の要望に応えるために彫る」と言う人です。
当店も基本的には後者の理由で、縁起の良いとされる「印相」って言うはんこを取り扱っております。

前回、「縁起のいい『印相』は邪道」やと書きましたが、邪道の癖に彫る職人が多いのは、良心的な職人が後者の発想を持っているためなんです。

ちなみに、「本当にお客様の幸せになって欲しいから彫る」と言う人は… 消費者としてはいて欲しいでしょうが、ほとんどいないでしょう。

ただ、「高く売るからには、本当にお客様の幸せにつながって欲しい」というはんこ屋は、いるかも知れませんね。

そんなわけで、開運の「印相」ってはんこは邪道やけど、その「印相を彫る人」まで邪道かって言うと、そんな訳ではないんで、その点気をつけてくださいね。

開運はんこの文字って、実は『邪道』なんよ

縁起がエエから「田」に線を足すって、普通の字ではやらんよね
 何で邪道なのか? それは「ルール」が存在せんへんからです。

 文字にはちゃんとした「ルール」があります。小学校で習った文字の書き方のようなもんです(これは実はもっと深い話があるのですが、それについては後日書きます)。
 はんこで良く使われる「篆書(てんしょ)」と言う文字には、はっきりとしたルールがあるんです。 しかし、縁起がよいとされる「印相」と言う自体は、「字と字をつなげる」「中心から外に広がるように」というのに従って、篆書のルールをぶち壊したもんなんです。

 例えば上の写真の「野田」のはんこ。「田」の上部の左右から、縁に向かって線が延びてますわね。「腕」と言うか「触角」みたいな感じで。
 こんな「田」と言う字はどの辞書にも載っていません。「その方が縁起がええから」と勝手に線をつけ足しとるんです。

 はんこにも展覧会やグランプリと言うのがありますが、その中では「印相」ってのは評価されません。何故なら上記の理由で「ルールがないから評価しようがない」ためなんですわ。

 昨今は、はんこは「開運」が主流で、「どうせなら開運の方がいい」と言う風潮がありますが、厳密には開運であることのデメリットもあると言うのは覚えといて欲しいと思います。

 しかしその印相、「邪道」であれば彫る人が少ないので広がらないはず…なのですが、実際は多くの職人が彫刻しています。
 この理由については次回に書きましょか。

開運はんこの「誤解」

使ってナンボの「はんこ」やのに 持つだけで開運になるって…
 今の「開運はんこ」って、要は使い方が間違ってると思うんですわ。

 お守りとの違いで言うた様に、はんこは実用品。契約書とかに捺印して、初めて意味があるもんです。

 ってなわけで、はんこを『使う』ことによって開運に繋がる、っていう考え方なら、僕はアリやと思うんです。

 実際、開運はんこでは「アタリ(正面の目印)はつけない」という考えがあります。これは正面の印をつけて捺しやすくしてしまうと安易な捺印に繋がるので、自分でちゃんと見て慎重に捺印しましょう、っていう事らしいですわ。

 こんな感じで、捺印と言う『行為』と開運を結びつける事で、はんこを使うことの重要性・次にはんこを使うまでに大事にしまう事の大切さを伝えていけば、使う人もはんこを無くさなくなるし、売り手もはんこの価値が上がってwin-winだと思うんですわ。

 ただ、現在は「はんこで開運」ってのが一人歩きしてしまい、あたかも「買って手に入れれば開運」であるかのような扱われ方になっとる。売り手の方も「高く売れたらいいから」と思ってるのか、是正しようとも思わん。

 そらあかんわ

 そんなわけで、はんこで開運って考え方は慎重にして欲しいとおもっとります。

なんで「はんこ」で「開運」やねん

はんこが必要になる時って…
 昨日、僕は「はんこは実用品なのに開運と関連してるせいで変な事になってる」って感じの内容を書きました。

 ほな、そもそも「なんで「はんこで開運」なのか?」って事について書こうとしましょうか。

 はんこの「開運商法」「開運詐欺」とかも良く聞きますよね。
 でも、それと同時に開運のはんこって、結構需要があるのも事実。

 さて、そこで、画像にある「はんこが必要になるとき」ですわ。

 はんこが必要となるときって「銀行口座の開設」「普通車の購入」「不動産の購入」ですな。
 また、そのほかに「進学」「就職」「結婚」の機会にはんこをお求めになる方もいはります。

 そ。はんこは、人生の転機のなる時に手に入れることが多いんですわ

 僕が想像するに、「開運はんこ」を最初に考案した人は、はんこが人生の転機で重要な時に使うにもかかわらず、その使うときにしか重宝されない(あるいはそのせいで価値が下がっている)事に対し、何とかしたいと考えたんやないかな…と思っています。

 その結果、開運のはんこが現在も需要があるということを考えると、最初に開運はんこを考えた人の思惑は成功してるって事で、正直「すごいな」と思うんですわ。

 ただ、僕は現在の「開運はんこ」については否定的です。
 その理由は明日書きますわ。

「開運はんこ」と「開運お守り」の決定的な違い

同じ「開運」でも、お守りとはんこじゃえらい違いやわ
開運はんこを買った人が陥る不幸第一位は「はんこが必要な時に見つからない」って内容を見て、「そんなん当たり前やん!」と思った方!

なんで「当たり前」なんやろか

例えば、大事に持っていたお守りが無くなったら、それって「不幸」ですかね

確かに大事にしてたら紛失は悲しいかも知れませんが、「不幸」とはちょっと違うと思いませんか?

「はんこ」と「お守り」 何が違うか?

  • はんこは「持ち歩かない」 。お守りは「持ち歩く」
  • はんこは「必要な時に使う」。お守りは持つことはあっても「使わない」

これで分かりました? はんこはお守りと違って「実用品」なんです
実際に使うものだから、使わないときに持ち歩いて紛失するわけにはいかない。だからしまっておく。
でも、いざと言うときには必ず必要になるから、その時はすぐに出せるようにしておかないといけない。

その様な物でありながら、縁起物として取り扱ってしまうために、調べるまでも無い「よくある不幸」が生じる事になったんです。

ほな、「はんこに開運」ってのは、そもそも間違いなのか? 良くないことなのか?
これについての僕の見解は、明日お話します。

開運はんこを買った人が体験する「不幸」 ワーストワン

「調べたんか?」ってお思いかもしれませんが 調べるまでも無いんですまず最初にお詫びです。
「不幸」って言う言葉は、他人を傷つけかねない表現だと承知で使っています。不快に思われた方はすんません。

ただ、「開運」を求めている人にとって、その逆とも言える体験が起こりがちだという事を伝えるために、あえて「不幸」と表現さしてもらいました。

で、そのワーストワンですが、上の絵にもある通り、調べるまでもありません。

はんこの紛失

いざ、はんこが必要となったときに見つからない」です

せっかく開運のはんこを買ったのに、一度使って(あるいは一度も使わずに)どこかにしまい、何年か後に必要となったときに探しても見つからず、散々探し回る。最悪、再びはんこを作りに行かなければならない…ってやつです。

「そんなん当たり前やん!」「開運でなくてもそれは一緒やん!」って思いました?
でも、これって結構重要な事やと思ってるんです。

なんで「当たり前」なのか?
「開運はんこでなくても一緒」なら、なぜ「開運はんこ」なのか?

これについて、明日以降に書いていきます。

こんな「開運はんこ」を求めてる人は幸せになれない

開運はんこが欲しいと とやかくうるさい注文をされたおばさん数年前にあった実話なんですけど…。

おばさんがやってきて、「開運のはんこが欲しい」「下の名前のはんこで」「接点(はんこの縁と文字が接触する数)は○○個で」と言う依頼があったんです。

で、まあこの方が妥協しない方で…
「ご指定の接点数が多いので、フルネームにされると作りやすいんですが…」と言っても「ダメ!」
「縁起の良い接点数はほかにあると思いますが…」と言っても「ダメ!」

仕舞いには、
「私、最近運勢が悪いの。今まで仲良かった人にも敬遠されるようになったみたいだし… だから絶対運勢を変えないといけないのよ!」と力説するほどに。

当時、対応したのは店主ですが…
横で聞いていた僕は、あと少しで言ってしまうところでしたわ。

お客さん、そのワガママっぷりが自分の運勢を下げてしもうてるんとちゃいますか?

って。

結局、その方は注文されずに帰られました。
でも、正直それでよかったと思います。
「妥協しない」事は大事かもしれませんが、度を過ぎると単なる「ワガママ」になってまいますからね。
こういった方がはんこを手に入れられても、あまりいい方向にはならないと思うし、お客さんにとってもはんこにとっても不幸ですからね。