印章に用いられる文字は、実印や銀行印に多い「読みにくい文字」と、認印に多い「読みやすい文字」があります。そしてその「読みにくい文字」、「読みやすい文字」それぞれに、複数の種類があります。
このページでは、印章に用いられる7種類の文字について、その特徴や見本を解説いたします。
当ページの印影作品は、私「野田守拙」によるものですが、文字の解説については一般的な内容です(他店でも必ず当てはまる保証は致しません)。
当店の作品独自の特徴を知りたい場合は、当店の特徴:豊富な印影作品と解説ページをご覧になってください。
解説の下には、実印や銀行印など、用途に応じたお勧めの書体とその理由を記載しております。そちらをご覧になりたい方はこちらから移動してください。
↓書体名をクリックすると、下に解説が表示されます↓
特徴
どうして開運を売り文句にしてないのに、縁起が良い文字を勧めるの?
この書体にお勧めするはんこ
実印、銀行印
この書体の採用頻度(当店における感覚的な値です)
6割以上
こんな方にお勧めです
- 普通のはんこよりも縁起のいい実印や銀行印をお求めの方
- 流行の書体が良いという方
- 読みにくい印影のほうが良いとお考えの方
- 「はんこは少しでも丈夫な方がいい」という方(文字同士や文字と縁との接触が多いため、他の書体より比較的丈夫になります)
注意点
- 全体的に読みにくい字となります。
- 基本となる篆書体が、古典文字を元に作られていますので、編(へん)や旁(つくり)が現在の書体(主に楷書体)と大きく異なる場合があります。
- 原則的に文字の線と外周の線と接触させるため、線の長さが従来の書体と異なる場合があります(例:「吉」の「士」の部分が「土」になるなど)
- 銀行印・認印では横書きも選ぶことが出来ますが、読みは左→右ではなく、右→左となります。
- お名前に空白の多い漢字が含まれる場合は、全体的なバランスを整えるため、文字の線を湾曲させます。特に「一」の字は文字のアレンジが多彩(印影見本「菅野俊一」をご覧下さい)であり、またたすきがけ(「稲田修一」の印影を参照)をすると言う手段も用いられるため、通常の文字とはかなり異なる印象を受けます。当店作品一覧にも記載がありますのでご覧下さい。
印影見本
特徴
この書体にお勧めするはんこ
実印、銀行印
この書体の採用頻度(当店における感覚的な値です)
2割程度
こんな方にお勧めです
- はんこらしい書体が好きだけど、印相体はくどくてお気に召さない方
- 古くからの文字のルーツにのっっとった、厳格な文字をお求めの方
- 「開運」と言うものに胡散臭さを感じている方
注意点
- 篇や旁の構成が独特であり、古典文字がモチーフであるため、文字によっては読みにくくなります。
- 篇と旁と言う左右の構成が上下の構成に変わることも良くあるため、文字によってはまったく別の文字であると言う印象を受けることもあります。
- 銀行印・認印では横書きも選ぶことが出来ますが、読みは左→右ではなく、右→左となります。
- お名前に空白の多い漢字が含まれる場合は、全体的なバランスを整えるため、文字の線を湾曲させます。特に「一」の字は文字のアレンジが多彩であり、またたすきがけ(下にある「西川功一」の印影を見てください)をすると言う手段も用いられるため、通常の文字とはかなり異なる印象を受けます。当店作品一覧 その3にも記載がありますのでご覧下さい。
印影見本
特徴
この書体にお勧めするはんこ
認印
この書体の採用頻度(当店における感覚的な値です)
1割程度
こんな方にお勧めです
- オーソドックスで読みやすい書体がお好みの方
注意点
- 線に凹みがあったり(右の画像の「○」)、本来つながっている線が離れている(右の画像の「□」)と言うことがよくあります
印影見本
特徴
この書体にお勧めするはんこ
銀行印・認印
この書体の採用頻度(当店における感覚的な値です)
1割程度
こんな方にお勧めです
- オーソドックスで読みやすい書体がお好みだけど、古印体や楷書体ではありきたりでつまらないとお考えの方
- こじんまりとしたかわいらしい印影をお望みの方
- 変わった書体をお求めで、かつお名前に長くて右端が交差してない線が多くある方
注意点
- 「はらい」が特徴の書体ですが、この「はらい」は横に長く、かつ右端が交差していない線に限って現れます。文字に短い横線しかない場合や、長くても右端に交差がある場合は、特徴的な「はらい」は見られず、楷書体や古印体と似たような印影になる場合があります。
- 逆に、横に長く、かつ右端が交差していない線が複数ある文字(「春」など)の場合、特徴的な「はらい」は一番下の横線に限られます。
- 名前の四隅を縁に接触させないため、こじんまりとした印影になります。
印影見本
特徴
この書体にお勧めするはんこ
認印
この書体の採用頻度(当店における感覚的な値です)
数%程度
こんな方にお勧めです
- なるべく特徴が少ないオーソドックスな書体がお好みの方
注意点
- 本来つながっている線が離れている(右の画像の「□」)、また本来離れている線がつながっていると言うことがよくあります。(「□」は、画像にマウスを合わせると表示されます)
印影見本
特徴
この書体にお勧めするはんこ
認印
この書体の採用頻度(当店における感覚的な値です)
1%未満
こんな方にお勧めです
- 認印が欲しいけど、印章用書体はあきりたりなので避けたいとお考えの方
注意点
- 筆書き調のため、本来つながっている線が離れていることがあります。また、本来あるべき線が省略されているように見える(「高樋」の木編など)と言うことがよくあります。
- 文字によっては旧字体の表記になる場合があります(「綺麗印影」の印影(糸偏)を参照)
印影見本
特徴
この書体にお勧めするはんこ
実印・銀行印
この書体の採用頻度(当店における感覚的な値です)
1%未満
こんな方にお勧めです
- 銀行印または実印が欲しいけど、印章用書体はあきりたりなので避けたいとお考えの方
- 複雑で読みにくい文字がいいけど、篆書体や印相体はおきに召さない方
注意点
- 早書き調の書体なので、線や点が省略されているような部分が多々見られます。
- 文字によっては旧字体の表記になる場合があります(「野田」の印影を参照)
印影見本
用途別 お奨めの書体とその理由
ここでは、実印・銀行印・認印のそれぞれについて、私、野田守拙がお勧めする字体(文字デザインの種類)と、その理由を記載しております。実印・銀行印にお勧めの書体は、「印相体」「篆書体」です。篆書は、秦の始皇帝の時代に中国全土で統一された由緒ある文字であり、日本のお札に印刷された印影の文字でもあります。そして、印相体とは、篆書を元に文字を中心から外に向けて広げて繋げ、縁起が良いとされるデザインです(ただし当店では開運の保証などはいたしません)。これらの文字は風格があり、重要な契約や財産の「証」として用いるのに最適だと言えます。人気の文字が好きな方、太い文字が好みの方、少しでも縁が欠けにくいほうがいい方は「印相体」を、スッキリした文字が好みの方、伝統を重んじたい方、開運が胡散臭いと感じる方は、「篆書体」をお求め下さい。
実印・銀行印は読みにくい方が良いって、どうして?どうして開運を売り文句にしてないのに、縁起が良い文字を勧めるの?
なお、苗字もしくは下の名前で、印相体や篆書体のはんこを作られる場合、文字の並びを「縦」か「横」か選ぶ事ができます。ただし、横は文字の方向が一般の横書きとは異なり、右から左に読む形になります。 無難なものが好みの方、文字の線が太い方が好みの方、お子様やお孫さんにプレゼントする際に「これおかしくない?」と言われると戸惑ってしまいそうな方はは縦を、縦長の美しい字が好みの方や、オリジナリティを重視されたい方は。横をお勧めいたします。[実印・銀行印の書体]よくあるご質問への回答
- 実印・銀行印は、読みにくい文字でないとダメなのですか??
- 誤字でなければ印鑑登録できますので、読みやすい文字でもダメではありませんが、人間の特性を考えると、篆書体や印相体など「読みにくい文字」を強くお勧めします。
日本人はファッションとして身に着ける服やカバンに「読める日本語」のものと「読めない英語」のものなら、圧倒的に後者の方が多いです。その一方で、外国人の方は、漢字を「cool」と言って称えます。このことから人間は、知らない言語に対し憧れ・尊厳を抱く傾向があるのです。有名人のサインが読めないデザインとなっているのも、その証拠と言えるでしょう。
また、右図のように、読めない文字である「篆書」は、現在の楷書文字では起きやすい「読み間違いの起きやすい似た文字」も、しっかり区別されている、というのも、印章に適している理由の一つだと言えます。
認印は、役所や銀行に届け出ないはんこのことですが、そのはんこをどのように用いるかによってお勧めのデザインが異なります。仕事で使うのか、役所で使うのか。それとも、実印を必要としない契約に使うのか…仕事で使うとしても、立場が一般社員か社長かでは使うべきはんこは異なります。以下には、「役所で使う」または「一般社員として仕事に使う」場合としてのお勧めを紹介しておりますが、そうでない場合は、右にある「実印を必要としない契約に使うまたは管理者・経営者として仕事で使う」をクリックしてください。
- 役所などの簡単な用途に使うまたは一般社員として仕事で使う
- 実印を必要としない契約に使うまたは管理者・経営者として仕事で使う
[認印の書体]よくあるご質問への回答
- 読みやすい字体のほとんどが、名前が小さく見えるのでですが、どうしてですか?
- 読みやすい字体のうち、古印体を除く「隷書体」「楷書体」「行書体」「草書体」は、名前の四隅に文字が縁に接しないようにする鉄則があるため、名前の四隅が縁に接する「古印体」より名前が小さくなってしまいます。
例えば楷書体の「渡辺」の認印。もし名前を大きく入れてもいいなら、図の左の印影ように「辺」の最後の、最も強調すべき「撥ね」がはみ出してしまって、締まらない文字になってしまいます。さすがのそれは不格好なので、右の印影のように撥ねがちゃんと見えるようにするとなると、文字の四隅が縁に接しないようにする必要があるのです。
なお、読みやすい字で唯一、文字の四隅が縁に接する古印体は「はんこが風化して印面が削れ、文字が太くなった」という設定によるものなので、右図のように文字が縁に接する事も問題ないとされます。
私が、貴方のために彫刻いたします
<プロフィール>
昭和17年2月生。15歳に印章彫刻を始め、書道や篆刻も研鑽。日展・篆刻部門入選の他に、印章彫刻・篆刻・書道で多数の賞を取得。1日の平均彫刻本数は、少なく見積もって10本ほど。総彫刻本数は10万本を超える。
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