当店店主「野田守拙」が作成した印影をご紹介いたします。

「照美」
書体:印相体 横
「篆書体(てんしょたい)」「印相体(いんそうたい)」で選ぶことのできる横並びの印影は字が縦長になるので、美しい字形が作りやすくなるのが特徴です。
この「照美」の印影を見ると、両方の字とも、文字の中心と感じる部分(専門用語で「重心」といいます)が大体上から3分の1あたりのところにある様に感じると思います。
いわゆる足長の美しい字になっています(文字によっては逆に重心を下にすることもあります)。しかし、だからと言って下半身が空白だらけになっているわけではない点に着目してください。バランスよく、かつ足長に見せることが職人の力量に繋がるのです。

「末田亮介」
書体:印相体
フルネーム実印で最も多く選ばれる「印相体(いんそうたい)」でデザインした印影です
このご氏名は「亮」の画数が多く、他の漢字の画数は少ないため、全体としてのバランスをどのように調整するかがポイントとなります。
バランスを調整する方法は二つあります
- 一文字ずつの面積を変えて調整する
- 画数の多い漢字は線を省略し、少ない漢字は線を増やす
この二つの方法を巧みに使い分けることが職人技に繋がります。ちなみにこの印影では「末」「介」の線を増やし、「田」は少し線を増やしてやや面積を小さくすることで、全体的な線と空白のバランスがよくなるように調整しています。


「先田健一」 書体:篆書体
由緒ある字体である「篆書体(てんしょたい)」で実印をデザインいたしました。
お名前でよくある「一」と言う字のデザイン例をいくつかお見せしたいと思います。
印章でよく用いられる文字の篆書(てんしょ)で印影をおつくりした場合、漢字の「一」は原則として、横線一つの曲げないデザインか、たすきがけと言う手法を使った「弌」と言うデザインにするか、どちらかになります。
なお、「弌」は「一」の旧字で別の漢字では? とお思いかもしれませんが、右の画像にあるように、縦線をボーダーラインとしてその左右の文字群は同じ文字として解釈されますのでご安心下さい
なお、実印で良く用いられる字体「印相体」で「一」の字が入った見本もありますので、そちらもぜひご覧ください


「有岡」 書体:印相体 縦
銀行印などで良く用いられる、印相体の縦のデザインでおつくりした印影なのですが、印影を2種類用意いたしました。「有」の字が大きく異なっていることがお分かりだと思います。
左の「有」は篆書の字を基にしたもので、「ナ」はもともとこのようなデザインだったのです。
この漢字に限らず、「右」「左」や「寸」と言う漢字まで、色々なところでこのデザインは出てきますので、知っておいても良いと思います。
これに対して、右の「有」は現在の楷書に近いデザインです。いずれも同じ「有岡」なのですが、銀行印などでは読みにくくて風格のある左を、実印を必要としない契約用のはんこには右を、と言うように状況に応じて使い分けることをお勧めします。


「鈴木秀雄」
書体:左は印相体 右は篆書体
左は印相体の印影。右は篆書体の印影です。
二つとも文字の基本的な形は似ているように見えますが、最も違いを感じるところは「木」のデザインだと思います。
印相体の「木」は、線を曲がりくねらせて画数の少なさを補っていますが、篆書体の印影ではそのようなことをしていません。
篆書体で曲がりくねらせるのはNGなのか? というと そうではないのですが、お客様が印相体ではなくあえて篆書体を選ばれた場合は、スッキリした文字デザインを好まれる傾向があるので、印影見本でもそのようにさせていただきました。
なお、印相体、篆書体とも、「鈴」と「木」の境界線が、「秀」と「雄」の境界線よりやや下になっております。これは意図的に行っているもので、これによって全体的なバランスを調整しているのです。


「大澤秀夫」 書体:印相体
ここでは2種類の印影をおつくりいたしました。
注目していただきたいのは 全ての漢字のデザインが異なるということです。
一番違いが分かりづらい「澤」の字も、「幸」の下から二つ目の横線が左右に垂れ下がっているかいないかと言う違いがあります。その他の漢字は人目で違いがお分かりになるでしょう。
例え同姓同名の実印ご注文を受けても、このように文字のアレンジを工夫して、世界に一つしかない「唯一無二」の印章をお届けするのが職人としての勤めだと思っています。

書体:印相体
お名前でよくある「一」と言う字を印相体でいくつもデザインいたしました。
印相体では「一」の字を曲がりくねらせたデザインをさせていただくことが良くあります。曲げ方は上のように多種多様です。
「健一郎」など三文字であれば「一」は曲げませんが、今回の「俊一」など、「一」の漢字をお持ちでお名前が2文字以内なら、これらのどのデザインが好みか購入時にお伺いいたしますので、ご安心下さい。
印影例 「柏原一真」
印影例 「菅野俊一」
なお、上記の印影のうち、一番右は「弌」という字になっています。「一」の旧字で別の漢字では? とお思いかもしれませんが、右の画像にあるように、縦線をボーダーラインとしてその左右の文字群は同じ文字として解釈されますのでご安心下さい
なお、印相体ととともに実印で良く用いられる字体「篆書体」で「一」の字が入った見本もありますので、そちらもぜひご覧ください



書体:印相体 篆書体
稀にお客様から、名前にひらがな(かたかな)があるんですが大丈夫ですか?というご質問をお受けします。
実印、銀行印では見慣れない難解な漢字で印がデザインされるので不安に思われる方もいるようです。
もちろん、問題なく製作できますので、ご安心ください。
篆書体の「酒井ミヨ子」はシンプルに。印相体の「﨑野ひろみ」「市野ヨシヱ」は線を曲げつつも字が理解できる範囲でアレンジしております。
なお、銀行印でひらがなの下のお名前の印影見本もありますので、そちらもぜひご覧ください


書体:印相体
銀行印の場合や、未婚の女性の方への実印の場合、下のお名前で彫刻することをお勧めします。
(当店が下の名前で銀行印等をお勧めする理由を見る)
実印、銀行印では見慣れない難解な漢字で印がデザインされるので不安に思われる方もいるようです。
もちろん、問題なく製作できますので、ご安心ください。
上記の印影見本は印相体というデザインですが、いずれも線と空白のバランスを保ちながらも字が理解できる範囲でアレンジしております。
なお、フルネームの実印でひらがなの下のお名前の印影見本もありますので、そちらもぜひご覧ください
右のある4つの印影のうち、私が作成した上のデザイン、下の印影は量販店のデザインを模したものです。実は下の印影は「羽」も「鳥」も同じデザインの文字で、それぞれを縦長、横長に広げてるだけなのです。これに対し私の印影は横長、縦長それぞれ専用の文字を使って印影デザインしています、上の印影と比較するとすぐに優劣がわかります。
「縦長の文字」は、横長の文字と比べて使用頻度が低いのですが、そんな注文が入った場合でも、しっかりと縦長専用にデザインする、という事が職人の技量の証となります。





上の5つの作品を見てください。全てというわけではありませんが、縦長の文字は多くが「足長」に表現させ、美しい字形でをもたらしているのです。