Monthly Archives: December 2012

はんこの材質「象牙」は『純白』と思ってる人は和英辞典を引け

はい、和英辞典。ちゃんとひいてな…と言っても、わざわざ和英辞典を用意してペラペラする人なんていないでしょうから、goo和英辞典の「象牙」のページをリンクしておきます。

 はい、見ました??

 「ivory」ですよ! 「アイボリー」!! あの、色の名前のヤツ!!

 そ、象牙は「アイボリー」なんで、色は純白や無くて少し黄色を帯びてるんが正しいですわ!!! もっと言うとほんのりピンクが入ってるのが最上級の素材って言われてます。

 ですから、純白の象牙は逆に邪道なんです!

 ちなみに、天然の象牙は面白く、暗いところにおいておくと色が濃くなり、光を当て続けると少しだけ色が白くなります

 以前、展示してた象牙のはんこが、下半分が褐色になっていて、この部分を1週間蛍光灯に当て続けたら、確かに色が薄くなってました。あの時写真を撮らんかったんが悔やまれますわ…(汗)

はんこの素材、象牙の「横目」がメチャクチャ高い理由

何でコイツだけ向きが違うん? 昨日「象牙の芯持ちは高い割に品質が悪い」って書きましたが、その第二弾が象牙の「横目」です

 この「横目」ってヤツ、何かと言うと、上の画像のように、牙の長い方向を縦とすると「横」の方向で切り抜いてはんこにするヤツです。

 ほとんどの象牙は「縦」の形で作るんで、「横」で切り取ったはんこは貴重。それゆえに高いとされてます。

 …ん? ちょっと待てよ?
 全部横の方向に切り取ったら別に貴重ではなくなるはず、何でそうせえへんの?

 と思った貴方は鋭い!! 実は横の目ではんこを作ると、縦の目よりはるかに脆くなってしまうんです。
 紙でも縦と横で「ビリッ」と破ると、きれいに破れる方向と上手く破れない方向がありますよね。それと一緒なんですわ。

 そんなわけで、前回書いた象牙の芯持ちと同様、職人は大抵「彫れって言われたら彫るけど、高いし品質悪いんで自分からは勧めない」っていう方針なんですわ。店の方針が職人系かそうでないかを見極める一つの指標になるかもしれませんね。

自筆看板「選挙終わって、ホンマの年末」

選挙も終わって ようやくホンマの「年末」ですなぁ あと少し頑張りましょう! 年末の総選挙が終わって、関係者の方はホッと一息ついてるんじゃないでしょうか。皆さん本当にお疲れ様でした。

 さて、今日から約二週間、ラストスパートです。頑張りましょう!!

 …って言う意味を込めて、自筆看板を書いたのがこれなんです。

宝石はんこやチタンはんこって 粗悪なモノがあるの?

 つい先日、プラスチック製のおしゃれはんこについて、「外見がオシャレって考えは幻想むしろ実際は往々にしてオシャレやない」っていう話をしました。んで、同じくオシャレ(カッコイイ)系の素材である宝石印やチタンについてはどやねん? と思われた方もおるかも知れません。

 宝石・チタンは、非常に固いため、激安の彫刻機では彫ることが出来ません。高機能な彫刻機を用いて専用の針等を用いて彫るか、ガラス細工などに使われるサンドブラストって言う機械を使って彫ることがほとんどです。

 そんなわけで、プラスチックはんこのよりは彫るのにちゃんとした準備が必要な分、まともなはんこ屋が彫っている可能性は高いと思ってます。

 ただ、過去に宝石印で線がガタガタの作品を見たことがあるんで、粗悪なモノがないとは断言できないと思います。
 それと、サンドブラストの機械は他業種の人の方が持っているので、はんこのノウハウが無い人が彫ってしまうと、欠けやすくなったり朱肉が綺麗に紙に写らなかったりする可能性も無きにしも非ず…ですんで、注意が必要です。

 また、言うまでもないことですが、設備が必要な分、価格も高くなります。そして、「なるべく安く」って考えると、粗悪なモノを手に入れてしまう可能性が高まるので、その点は注意して欲しいと思いますわ。

くだらんチラシ 「冬のどんぐり拾いもエエで」

 手書きのくだらないチラシ、平成25年1月号です。

 …と言っても、中身は新春と全然関係なし。12月の寒い時期にどんぐりを拾いに行った話しです。

 ホントくだらない話なんですが、これでも結構見ていただいているファンの方も多く、ご来店いただくお客さんから「いつも見てますよ」といわれる事もしばしばあります。

 過去のデータについてはfacebookページのほうで公開してますので、是非見て下さい。

はんこの素材「柘(つげ)」は「エエ素材」? 「悪い素材」?

安いけどエエ素材。ただしパチモンには注意やね はんこにの素材として、「柘(つげ)」って素材があるんですが、この素材、「価格が安い」のと「彫刻に適してる」と言う特徴があります。
 「安い」ってイメージをもってる人は「悪い素材」って感じるんですが、逆に「彫刻に適してる」ってイメージの人は「いい素材」って思ってたりしてます。

 ほな、実際はどうなんか? 今回は「柘」って言う素材について、ちょっと真面目に書いてみようと思います

 ・柘の「偽者」に要注意!
 まず最初に言っておかないといけないのですが、「柘」にはパチモン(偽者)が存在します外国産の「アカネ」って言う素材なんですが、柘よりも密度が低くて脆く、それでいて「シマツゲ」っていう呼び名があるんですわ。これと区別するために、一般の柘は「本柘(ほんつげ)」って言われます。
 職人の店なんかでは、脆くて彫りにくいシマツゲは扱わないんですが、フランチャイズ等では取り扱ってる場合もありますんで、注意が必要です。

 ・「柘」は木の中で最も硬い?
 文字通り「木」篇に「石」って書く「柘」ですが、純粋な硬さだけなら「黒檀」「紫檀」等の方が若干上といわれています。また、最近は杉などを圧縮加工した素材も出回っており、それらの素材にも硬さは若干劣ります。

 ただ、それらの素材は柘よりも脆く、刀で仕上げするとボロボロといった感じで削れてゆきます
 そんな訳で、やはり職人系の店では「本柘」を木製素材の主力商品として扱っているんですね。

 ・朱肉の「油」にご注意!
 柘の一番の弱点は「朱肉」です。朱肉の油が柘に浸透する事で脆くなってゆきます。そのため、朱肉のつけすぎは厳禁です。
 良く、はんこを朱肉や印肉にぎゅ~っと強く押し付ける人がいますが、これは絶対やっちゃダメですよ!! 溝に朱肉の油が入って脆くなりやすいんで! 後日書きますが、はんこは強く押し付けるんや無くて、軽く叩いて、叩く回数で濃さを調節してくださいね。これは柘に限らないですよ。

自筆看板「年賀状もはんこも、今年に間に合わせます」

年賀状もはんこも、全力で今年いっぱい間に合わせます 今年最後の自筆看板の一つです。

 年末の最終週になると、「今年中ってのはもう無理やな…」って思ってしまう方もおられるので、まだ何とかなるってのをアナウンスしました。

 三週間ほど広告的な内容を書きましたが、新年からは普通に商売とは関係ない内容のみに戻す予定です。

はんこの素材「象牙・牛の角」は「芯(中心)」に近いほうが丈夫って、ホンマ?

象牙って、中心に近いほどモノはええんやけど… 知らない人は「何それ?」って感じかもしれませんが…

 象牙や牛の角って、中心に近いほど密度が高くて硬いって言う性質があります。
 これは事実です。現に、上にある画像のように、象牙は中心の「芯」に近いほど、グレードが上がって丈夫、そして高価になります。

 ただ、それを聞いて、象牙や牛の角の中心にある「芯」が最も硬い部分であるって誤解してる人がいはるんですわ。

 実は、象牙も牛の角も、中心の「芯」は逆に柔らかい性質を持っとります。簡単に言うと「台風」と同じで、中心に近ければ近いほど強いけど、中心そのものはメチャクチャ弱いんです。

 それともう一つ。牛の角は芯(中心)より離れすぎると使い物にならないんで、芯入りのモノがはんこの素材になってます。でも、象牙は芯が無くても全然問題ないんで、芯から外れた廻りの部分がたくさん使われます。

 つまり、象牙の芯の部分は取れる場所が少なくて貴重(つまり高価)なんですが、その芯の部分は柔らかくて彫刻には向いてないという、コストパフォーマンスの悪い素材なんです。

 ってなわけで、当店をはじめとした職人系の店は大抵、象牙の芯持ちは「彫れって言われたら彫るけど、高いだけでモノは悪いから自分から勧めない」って言う方針をとっています。

 象牙の芯持ちをこれ見よがしに販売してる店は、確率的に「高級な物を売って儲けたい」店である可能性が高いと思いますね。

はんこの材質「牛の角」と「象牙」の大きな違い

似たように見えるけど全然違うねんで 最近ははんこの材質について色々書いてますが、そういえば僕、この業界に入った頃、「牛の角」(黒集牛を含む)と「象牙」が全然違うもんやってのを知らんかったのを思い出しました。

 「え? 象か牛かの違いだけなんちゃうの?」と思った方! 全然違いますよ!! 組成が全然違うんですわ

 牛の角は、組成はたんぱく質人間で言うと「爪」と同じ。これに対して「象牙」は「牙」つまり「歯」なんで、硬さは牛の角とは全然ちゃいます。

 それに、たんぱく質で出来た牛の角は稀に虫食いがあり、裸で保管しておくとはんこに穴が開く可能性があるんですが、象牙はそんな心配ありません。燃えない素材なんで、火事になった家の焼け跡から出てきたって言う話もあるんですわ(絶対大丈夫って言う保証はしませんけどね)

 動物の顔からニョキっと生えてるんで、似たようなモンやんな…と思ってた方、勉強になりましたか??

はんこは堅けりゃええってモンちゃんで

はんこは「硬けりゃエエ」って思ってませんか? 知ってる人にとったら、改めて言うような事や無いんですが、「堅い」って事は「丈夫」って事とは限りません

 はんこに限らんのですが、「堅さ」と「脆さ」ってのは全く別な要素なんですわ。

 例えばガラスは直ぐ割れるって言うイメージがありますが、堅さは意外とあるって言われます。
 あと、世界一堅い素材って言ったらダイヤモンドですが、欠けにくさをあらわす「靭性(じんせい)」って性質は、ダイヤモンドよりも翡翠(ひすい)の方が高いって言われてるんです。

 はんこの素材って「柘」「牛の角」「象牙」ってのが多く、「古臭いなぁ」ってお思いかもしれませんが…
 実はあれ、刀で彫れる素材の中では「堅さ」と「脆さ(欠けにくさ)」のバランスが最も優れてるんですわ。
 「古い」んやなくて「歴史ある」素材って事って事をご理解下さい!