7種類の印章文字と、その特徴

50年の彫刻歴で培った、7種類の印章文字
その文字のほとんどがなじみの薄い「印章文字」。
印章彫刻の職人は、彫刻や文字デザインを重ねていくことで、
印影写真

  • 誤字にならない範囲で、文字のルールを順守するとともに、
  • 師匠や有名作家の作品を見たり、書いたり、真似たりすることで、独特の文字の美しさを身につけてゆき、
  • それらの経験をさらに活かし、「自分自身の文字デザイン」を生み出すのです。

私が50年以上の彫刻歴を経験を持って生れた、私自身の7種類の文字…
その特徴を以下の通りに解説しておりますので、ぜひお読みください

解説の下には、実印や銀行印など、用途に応じたお勧めの書体とその理由を記載しております。そちらをご覧になりたい方はこちらをクリックしてください。

↓書体名をクリックすると、下に解説が表示されます↓

  • 印相体
  • 篆書体
  • 古印体
  • 隷書体
  • 楷書体
  • 行書体
  • 草書体
印相体(いんそうたい)

特徴

はんこ独特の書体である「篆書体」から、文字同士、あるいは文字と外周を接触させるアレンジを施すことで、いわゆる「縁起の良い」形状とした書体です。(当店のはんこは開運を保証する物ではありません)

どうして開運を売り文句にしてないのに、縁起が良い文字を勧めるの?

この書体にお勧めするはんこ

実印、銀行印

(複雑な書体であり、最もオリジナリティがあるため)

この書体の採用頻度
(当店における感覚的な値です)

6割以上

(地域によっては4割程度になる場合もあります)

こんな方にお勧めです

  • 普通のはんこよりも縁起のいい実印や銀行印をお求めの方
  • 流行の書体が良いという方
  • 読みにくい印影のほうが良いとお考えの方
  • 「はんこは少しでも丈夫な方がいい」という方
    (文字同士や文字と縁との接触が多いため、他の書体より比較的丈夫になります)

注意点

  1. 全体的に読みにくい字となります。
  2. 基本となる篆書体が、古典文字を元に作られていますので、編(へん)や旁(つくり)が現在の書体(主に楷書体)と大きく異なる場合があります
  3. 原則的に文字の線と外周の線と接触させるため、線の長さが従来の書体と異なる場合があります(例:「吉」の「士」の部分が「土」になるなど)
  4. 銀行印・認印では横書きも選ぶことが出来ますが、読みは左→右ではなく、右→左となります。
  5. お名前に空白の多い漢字が含まれる場合は、全体的なバランスを整えるため、文字の線を湾曲させます。特に「一」の字は文字のアレンジが多彩(印影見本「菅野俊一」をご覧下さい)であり、またたすきがけ(「稲田修一」の印影を参照)をすると言う手段も用いられるため、通常の文字とはかなり異なる印象を受けます
    当店作品一覧にも記載がありますのでご覧下さい。

印影見本

守拙の印影 印相体守拙の印影 印相体守拙の印影 印相体守拙の印影 印相体守拙の印影 印相体守拙の印影 印相体守拙の印影 印相体守拙の印影 印相体守拙の印影 印相体守拙の印影 印相体  守拙の印影 印相体 守拙の印影 印相体 守拙の印影 印相体
守拙の印影 印相体  守拙の印影 印相体

篆書体(てんしょたい)

特徴

古くから中国において印章の字体としてよく用いられていた書体「印篆」を基に作られた書体です。
木口(こぐち:はんこ彫刻のこと)の作品展でもっとも多く見られる書体です。古来から存在するだけでなく、厳密なルールが存在し、はんこ彫刻技術の物差しとして最適な書体なのです。
展覧会等の厳密なルールは、現在日本で使用されている常用漢字と大きくかけ離れた文字が多く存在するため、はんこ業界では独自に実用印として使用できるルールを設けております
お札に印刷されている印影も、この書体です。

この書体にお勧めするはんこ

実印、銀行印

(印相体ほどではないものの、ある程度のアレンジが出来ます)

この書体の採用頻度
(当店における感覚的な値です)

2割程度

(地域によっては5割程度になる場合もあります)

こんな方にお勧めです

  • はんこらしい書体が好きだけど、印相体はくどくてお気に召さない方
  • 古くからの文字のルーツにのっっとった、厳格な文字をお求めの方
  • 「開運」と言うものに胡散臭さを感じている方

注意点

  1. 篇や旁の構成が独特であり、古典文字がモチーフであるため、文字によっては読みにくくなります
  2. 篇と旁と言う左右の構成が上下の構成に変わることも良くあるため、文字によってはまったく別の文字であると言う印象を受けることもあります
  3. 銀行印・認印では横書きも選ぶことが出来ますが、読みは左→右ではなく、右→左となります。
  4. お名前に空白の多い漢字が含まれる場合は、全体的なバランスを整えるため、文字の線を湾曲させます。特に「一」の字は文字のアレンジが多彩であり、またたすきがけ(下にある「西川功一」の印影を見てください)をすると言う手段も用いられるため、通常の文字とはかなり異なる印象を受けます
    当店作品一覧 その3にも記載がありますのでご覧下さい。

印影見本

守拙の印影 篆書体守拙の印影 篆書体守拙の印影 篆書体守拙の印影 篆書体  守拙の印影 篆書体"守拙の印影 篆書体 守拙の印影 篆書体
守拙の印影 篆書体 守拙の印影 篆書体

古印体(こいんたい)

特徴

認印として最も良く用いられる書体です。
線と線の交差部分が「墨だまり」となって太くなっており、また筆の強弱を表現するため線に太い部分と細い部分が存在するという特徴があります。
この「墨だまり」「筆の強弱」の特徴を持つ書体は全て「古印体」と呼ばれます。篆書体にこれらの特徴を与えた文字は「篆書古印」と呼ばれ、他にも様々な「○○古印」が存在します
一般的な「古印体」とは、隷書体に墨だまりと筆の強弱を与えた「隷書古印」の事を指します。

この書体にお勧めするはんこ

認印

(当店オリジナル書体ですが、他店の古印体印影との区別は難しく、銀行印や実印には向いていません)

この書体の採用頻度
(当店における感覚的な値です)

1割程度

こんな方にお勧めです

  • オーソドックスで読みやすい書体がお好みの方

注意点

  • 古印体の見本画像線に凹みがあったり(右の画像の「○」)、本来つながっている線が離れている(右の画像の「□」)と言うことがよくあります

印影見本

守拙の印影 古印体

守拙の印影 古印体

守拙の印影 古印体

守拙の印影 古印体

守拙の印影 古印体  守拙の印影 古印体  守拙の印影 古印体

隷書体(れいしょたい)

特徴

筆書きをモチーフにした書体で、特に横線の「はらい」が特徴的な書体です(右の印影「賀上」参照)。
新聞紙のロゴなどに良く用いられています。
縦線が太く、横線が細い明朝体とは逆で、横線が太く縦線が細いのが特徴です。
また、楷書のように横線が右上がりでなく平行で、基本的に線の太さは均一(一文字に一箇所だけ強調する「はらい」を覗いて)という特徴を持っています。
名前の四隅を縁に接触させないように字を入れることが基本ですので、古印体などよりややこじんまりとした印象を受ける書体です。
はんこに用いられる書体ですが、量販彫刻機の標準書体として搭載されていないことが多いためか、比較的採用頻度の低い書体です。

この書体にお勧めするはんこ

銀行印・認印

(銀行印の場合は、女性の方やお子さんなどの下の名前で作られることをお勧めします。)

この書体の採用頻度
(当店における感覚的な値です)

1割程度

こんな方にお勧めです

  • オーソドックスで読みやすい書体がお好みだけど、古印体や楷書体ではありきたりでつまらないとお考えの方
  • こじんまりとしたかわいらしい印影をお望みの方
  • 変わった書体をお求めで、かつお名前に長くて右端が交差してない線が多くある方

注意点

  1. 「はらい」が特徴の書体ですが、この「はらい」は横に長く、かつ右端が交差していない線に限って現れます。文字に短い横線しかない場合や、長くても右端に交差がある場合は、特徴的な「はらい」は見られず、楷書体や古印体と似たような印影になる場合があります
  2. 逆に、横に長く、かつ右端が交差していない線が複数ある文字(「春」など)の場合、特徴的な「はらい」は一番下の横線に限られます。
  3. 名前の四隅を縁に接触させないため、こじんまりとした印影になります。

印影見本

守拙の印影 隷書体

守拙の印影 隷書体

守拙の印影 隷書体

守拙の印影 隷書体

楷書体(かいしょたい)

特徴

印章だけではなく、様々な場面で用いられる、最もオーソドックスな書体です。
名前の四隅を縁に接触させないように字を入れますので、古印体などよりややこじんまりとした印象を受けます。

この書体にお勧めするはんこ

認印

(アレンジは困難とお考え下さい)

この書体の採用頻度
(当店における感覚的な値です)

数%程度

こんな方にお勧めです

  • なるべく特徴が少ないオーソドックスな書体がお好みの方

注意点

  • 楷書体の見本画像本来つながっている線が離れている(右の画像の「□」)、また本来離れている線がつながっていると言うことがよくあります。(「□」は、画像にマウスを合わせると表示されます)

印影見本

守拙の印影 楷書体

守拙の印影 楷書体

守拙の印影 楷書体

行書体(ぎょうしょたい)

特徴

毛筆で書いたイメージの書体です。楷書体を少し崩したような感じになっています。

この書体にお勧めするはんこ

認印

(アレンジは困難で、文字が崩れているものの「読めない」程度ではないので、認印としてのご利用をお勧めします)

この書体の採用頻度
(当店における感覚的な値です)

1%未満

こんな方にお勧めです

  • 認印が欲しいけど、印章用書体はあきりたりなので避けたいとお考えの方

注意点

  1. 筆書き調のため、本来つながっている線が離れていることがあります。また、本来あるべき線が省略されているように見える(「高樋」の木編など)と言うことがよくあります
  2. 文字によっては旧字体の表記になる場合があります(「綺麗印影」の印影(糸偏)を参照)

印影見本

守拙の印影 行書体

守拙の印影 行書体

守拙の印影 行書体

草書体(そうしょたい)

特徴

毛筆で早書きしたようなイメージの書体です。楷書体と比較すると大きく崩れており、一見して何の字か読めない字が多く存在します。

この書体にお勧めするはんこ

実印・銀行印

(アレンジは困難ですが、文字が崩れ過ぎているため認印としてはお勧めできません。採用頻度が非常に低い(頻繁なアレンジの必要がない)ため、実印や銀行印の用途をお勧めします)

この書体の採用頻度
(当店における感覚的な値です)

1%未満

こんな方にお勧めです

  • 銀行印または実印が欲しいけど、印章用書体はあきりたりなので避けたいとお考えの方
  • 複雑で読みにくい文字がいいけど、篆書体や印相体はおきに召さない方

注意点

  1. 早書き調の書体なので、線や点が省略されているような部分が多々見られます
  2. 文字によっては旧字体の表記になる場合があります(「野田」の印影を参照)

印影見本

守拙の印影 草書体

守拙の印影 草書体

守拙の印影 草書体


用途別 お奨めの書体とその理由

野田守拙ここでは、実印・銀行印・認印のそれぞれについて、私、野田守拙がお勧めする字体(文字デザインの種類)と、その理由を記載しております。


実印・銀行印にお勧めの文字 印相体・篆書体「綺麗印影」

実印・銀行印にお勧めの書体は、「印相体」「篆書体」です。
篆書は、秦の始皇帝の時代に中国全土で統一された由緒ある文字であり、日本のお札に印刷された印影の文字でもあります。
そして、印相体とは、篆書を元に文字を中心から外に向けて広げて繋げ、縁起が良いとされるデザインです(ただし当店では開運の保証などはいたしません)。
これらの文字は風格があり、重要な契約や財産の「証」として用いるのに最適だと言えます。
人気の文字が好きな方、太い文字が好みの方、少しでも縁が欠けにくいほうがいい方は「印相体」を、スッキリした文字が好みの方、伝統を重んじたい方、開運が胡散臭いと感じる方は、「篆書体」をお求め下さい。

実印・銀行印は読みにくい方が良いって、どうして?
どうして開運を売り文句にしてないのに、縁起が良い文字を勧めるの?

印相体・篆書体「野田」 縦と横

なお、苗字もしくは下の名前で、印相体や篆書体のはんこを作られる場合、文字の並びを「」か「」か選ぶ事ができます。ただし、横は文字の方向が一般の横書きとは異なり、右から左に読む形になります

どうして横だと読みが逆になるの?

 無難なものが好みの方、文字の線が太い方が好みの方、お子様やお孫さんにプレゼントする際に「これおかしくない?」と言われると戸惑ってしまいそうな方ははを、
縦長の美しい字が好みの方や、オリジナリティを重視されたい方は。をお勧めいたします。


認印にお勧めの文字

認印は、役所や銀行に届け出ないはんこのことですが、そのはんこをどのように用いるかによってお勧めのデザインが異なります
仕事で使うのか、役所で使うのか。それとも、実印を必要としない契約に使うのか…
仕事で使うとしても、立場が一般社員か社長かでは使うべきはんこは異なります。

以下には、「役所で使う」または「一般社員として仕事に使う」場合としてのお勧めを紹介しておりますが、そうでない場合は、右にある「実印を必要としない契約に使うまたは管理者・経営者として仕事で使う」をクリックしてください。

  • 役所などの簡単な用途に使う
    または
    一般社員として仕事で使う
  • 実印を必要としない契約に使う
    または
    管理者・経営者として仕事で使う

 役所や、一般の仕事用途で使う場合、重要なのは読みやすさです。奇をてらって銀行印のような仰々しい印影のものを使うべきではありません。報告書で仰々しいはんこを使い、横に捺印された上司の印影より目立ってしまっては目も当てられません

古印体・隷書体・行書体の印影

読みやすい文字でお勧めなのは、左の「古印体」「隷書体」「行書体」です
古印体は既成の認印で良く見られるデザインですが、文字の線に凹凸があり、名前の四隅が縁に接するために文字が大きくなりやすい特徴があります。この手の用途には印面をあまり大きくしない方が良いので、そんな中で名前を極力大きく見せたい場合はお勧めの文字デザインです

隷書(れいしょ)体は、縦線よりも横線が太く、文字の中に一箇所おおきな「はらい」があるのが特徴です。ただし、大きな払いは原則横または斜めの線にしか使われませんので、「川」などの文字には隷書らしさがみられなくなります。文字によって隷書らしいものとそうでないものの差が激しいので、ご注意下さい。

行書体は、現代の毛筆文字からは寝たり線をつなげたりして流れるようなデザインにしたものですこの文字の既成認印もあるのですが取扱店は比較的少なく、また読みやすいので独特の認印が欲しい方にはお勧めです。ただし、名前の四隅は縁に接しないため、名前はやや小さめに入るので、ご注意下さい。

楷書体の印影

この他にも、一般的な毛筆の「楷書体」という文字もありますが、シャチハタなどの一般的な朱肉無しで使えるはんこと同じ文字のため、ありがたみが感じにくいところがあります。
しかし、楷書の名前は意外と丸の中に入れることが難しく、良く見ると画数の少ない字が多い字よりも大きく見えたり、文字の並びが歪んで見えたりすることがあります。そういった細かいところを見抜く眼力をお持ちの方にはお勧めかもしれません。

古印体・隷書体・行書体の印影

一般的な認印は、読みやすい「古印体」「隷書体」「行書体」などが良く用いられます。
しかし、役所や一般用途(回覧板・宅配便など)で使用せず、仕事で使うとしても立場が管理者や経営者であれば、読みにくくて貫禄ある文字の「印相体」「篆書体」にされても良いでしょう。好みでお決めになったら良いと思います
一般的に、印相体、篆書体、古印体は名前が大きく入ります。隷書体や行書体にされる場合は名前が小さめになる事を承知で頼まれるか、あるいは一回り大きいサイズで注文される事をお勧めします。

印相体・篆書体「野田」 縦と横

なお、苗字もしくは下の名前で、印相体や篆書体のはんこを作られる場合、文字の並びを「」か「」か選ぶ事ができます。ただし、横は文字の方向が一般の横書きとは異なり、右から左に読む形になります

どうして横だと読みが逆になるの?

 無難なものが好みの方、文字の線が太い方が好みの方、お子様やお孫さんにプレゼントする際に「これおかしくない?」と言われると戸惑ってしまいそうな方ははを、
縦長の美しい字が好みの方や、オリジナリティを重視されたい方は。をお勧めいたします。


野田守拙 最後までお読みくださりありがとうございました。当店では彫刻歴50年以上の職人、野田守拙の印章店になります。私の実績や作品の特徴、商品サービスの内容の紹介はもちろん、「はんこ屋の技術力の見分け方」や、「私が早彫りできる理由」「手彫りに関する意外な事実」など、他店ではあまり見られない内容もございます。ご興味のある方は是非お読みください。

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